失敗
丸太を残しておいてよかった。ちょっと大きめの輪切りを縦に切ってスクエアプレートに、既に切ってしまった物はラウンドプレートにした。これなら作るのも簡単だし、スクエアとラウンド合わせて6枚ほどプレートを作った
「とりあえずこれだけ作れば良いかな?よし!積層深皿もやってみよう!」
そして試しに作ってみた積層型木製深皿。【魔糸生成】でねじれて、鋭く、硬い。ドリルというかピンバイスの様な糸(?)を作り、穴をあけたら糸鋸型の魔糸でくり抜く。というのを繰り返し、径を大きくして台形の形する。そして粘り草でくっ付ける。これで木材は動かないハズだ
「これで削れば深皿になるかな……いや、まずこれで漏れないか試すべきか」
削る前にこの状態で漏れないか確認しておこう。誰か居るかな……
「おっ!ワリアさーん!」
「おぉ、ハチ?どうした?」
「何か水分、じゃなくて飲み物とかあります?」
「家にあるが……急にどうした?」
「この皿を試してみたくて……」
僕の作った試作品。積層型深皿をワリアさんに見せる
「これが皿?」
「まぁ、そういう反応になりますよねぇ……」
僕だってこれを皿だと言い切るのは無理があると思う
「丸太から深皿を作り出すって結構難しくて何とか作れないかなぁと思って試行錯誤して段階的に大きくしながら粘り草でくっ付けてみました」
「はぁ、なるほど。そういう作り方をした結果がコレか」
「はい、成功したらその段差を削って綺麗にしようかなって」
「ほうほう、よし!それじゃあ試してみるか!」
「あ、待って下さいよー!」
ワリアさんもノリノリで僕の試作品を試す為に家に向かう。走って行くから僕も遅れないように走る
「さぁ、ハチ。その手の奴は外すんだ」
「え?イドをですか?」
「マドでもイドでも構わんが、試すんなら自分の手でやろうぜ?」
「は、はい……」
言われた通りにイドを外し、積層型深皿を持つ。失敗したら自分が痛い目にあう奴だこれ
「それじゃあ自分が作った物を信じろ!」
かなりアツアツなお湯をワリアさんが柄杓の様な物に汲んで僕の手の中にある深皿にお湯を入れる
「お?おぉ!やった!せいこ……うわっちゃ!?あちちちっ!」
深皿に入ったお湯が零れない。成功だ!……と思っていたら徐々にお湯が漏れ、最終的にドバっと中のお湯が積層の部分から出てきた。あっちぃ!
「ダメかぁ」
「流石にこれは熱いですよ!?」
「飯とかに使うなら暖かい物とか注げないとダメだろ?」
「うぐっ、反論出来ない……」
確かにそういう使い方の為に深皿を作ろうとしていたからこの失敗の仕方なら料理には使えないかもしれない。これ、水を入れていたらこのミスには気が付かなかったかもしれないな?
「あぁ……これ粘り草でくっ付けた部分が熱で溶けちゃったのか」
落としてしまった積層型深皿を見てみるとグズグズになってしまった接着面が露わになっている。触ってみても手にくっ付いたりはしない。熱に弱かったかぁ……
「いやぁ、ハチ。悪い悪い」
後ろからワリアさんがやってくる。うーん、これはどう改良すべきか……
「いや、粘り草が熱で溶けて失敗っていう経験は出来たんでこれはこれで……」
「ハチには悪い事をしたと思ってるから、詫びにコレを受け取ってくれ」
『木の椀 木の箸 木のスプーン 木のフォーク を入手しました』
「えっ?」
欲しかった物が大体あるんだけど?
「流石に素手に熱湯は良くないよな」
「それは否定しませんが、良いんですか?」
「ハチ、お前の料理って大体枝を使った串焼きとかだろ?料理を作る者として作れる料理はあるのに盛る皿が無いとか、かき回す物が無いとか喰う為の物が無いとかで料理出来ないってのは悔しいだろ?」
ワリアさんの料理人的感性がそう言っているのか。その気持ちはとても嬉しい
「確かに僕は串焼きくらいしか作ってないですけど、これなら今後は汁物とかも挑戦してみようかな?」
僕一人分ならフライパンでも汁物とか作れそうだと思う
「宴会の料理を作る時、普通に色々作ってた所を見てたからな。このくらいの物は持っとけよ」
「いつかもっと良い物を使ってもっと美味しい料理をワリアさんに食べさせますよ」
「ハハハッ!楽しみにしてるぞ?」
ワリアさんに色々貰ったし、いつか絶対にお礼をしないといけないね
自分で作れなかったのは少し悔しいけど調理しても器が無いって状態では無くなったので色々チャレンジするのも良いかもしれない
「ありがとう!ワリアさん」
「ハチがもっと美味い物作るって言うなら俺ももっと料理を上手く作れるようになっておかないとなぁ?」
「負けませんよ?……今じゃ無いですけど」
流石に今持っている物とか食材じゃ流石にワリアさんを満足させられそうな物を作れるとは思っていない。世界を回って色々道具とか食材を集めたら改めてワリアさんに料理を振舞いたい
「僕はとりあえずそろそろ眠ろうと思います。また今度!」
「あぁ、じゃあな!」
ワリアさんと別れて自分が使って良いと言われている家に向かい、ログアウトする
「くぅ!待ってろワリアさん!絶対唸らせてやる!」
長い道のりだろうけど絶対に串料理以外の美味しい料理をワリアさん……他の皆にも作りたいな?