改善点
「くっ……」
「あなたがどれだけ回避が上手くても範囲攻撃なら関係ないわよねぇ!」
炎の翼が大きく燃え上がり、炎が噴き出す。僕に対して背中を見せているとは言え、流石にこれはちょっと近寄れない。単なるブレスとは違い、羽から扇状に炎が出ているのが2つ。キリエさんの背部から出ていて、キリエさんが回転とかするから狭くしてしまった決闘エリア全域が炎に包まれる。というか多分だけど、あれ出力上げればちょっとくらいなら飛べるのでは?
「うぐっ……」
燃えない様に炎が無い所に走ったりしているが、これは確かに厳しい。受け流しとかが出来ない範囲攻撃は確かに僕にはどうしようもない。しかもこの攻撃は武器での攻撃だし、魔法やスキルを消す【ディスラプトマイン】も効かないだろう。スキルでも魔法でもない範囲攻撃……これは確かに対処が難しい。僕の苦手とする距離の詰められない相手だ
「そこぉ!」
「あっぶな」
弾丸が飛んでくる。ずるいぞ?炎を出しながら銃まで撃ってくるなんて。でも正直、弾丸の方が触れる分、何とかなる。【ファイヤーボール】的な火球であれば、【リインフォース】を使えば弾けるんだろうけど、こういう全面炎に包まれる様な物だと厳しい。この状況で【アダプタン】を使ったとしても、あくまで地形とかのデータ的に決闘フィールドだから炎に耐性が貰える訳では無いだろうし、まずい。これは割と本気でヤバいかもしれない
「仕方ないか……」
このままでは負ける。僕も何かしら手の内を晒さなければダメだろう。だとしたら僕は……
「ダメージ覚悟で突っ込んで来たわね!」
炎の翼が向きを変え、腰のあたりからこちらに炎を噴き出す様に変わった。可能な限り、キリエさんの正面に立たない様にして、接近していく。そしてついに深淵触手が届く距離まで近寄れた。ただ、燃焼のダメージでこっちも結構削られている。何とか軽いやけど程度の痛みで何とかなっているが、間違いなく体の動きは鈍っているだろう。こういう逃げられない場面で決められた範囲でしか戦えないのであれば僕はそれなりに強い。でも、逆にこのフィールドを利用されて、こんな全域攻撃を喰らうと対処が出来なくなってしまう。新しい課題が見えてきたな
「はぁ!」
「それは効かないわ!」
ダメージ覚悟で突っ込み、攻撃の届く距離という事でパンチを放とうとした瞬間、炎の翼は亀の盾に変更され、僕の攻撃を防いでいた。ここは正直想定内というか、その為に何とか接近したのだ
「逝きなさい!」
盾の隙間からの銃撃。僕が提案したんだぜぇ?その攻撃が来るのも予想済みだ
「嫌です!」
「はぁ!?」
触手2本で弾丸を逸らし、両手で亀の盾を捕まえる。そして触手を一気に12本まで増やす。これだけあれば一応力負けはしないだろう。弾丸を弾き、2枚の亀の盾の隙間から黒い深淵触手が入り込んで無理やり開ける。おかげさまでキリエさんのちょっと恐怖した表情が見えた。まぁある意味これも何とかあの攻勢を抜けたご褒美みたいな物かな?とにかく、そのまま触手でキリエさんを貫き勝利した
「ふぅ、危なかった。いや、その武器ヤバいですね。めっちゃ負けそうでし……」
「なんで勝てないのよぉ!」
あぁ、なんか駄々っ子みたいになっちゃった……
「もうもうもう!絶対あと少しだったのに!どうしてあそこで負けるのよ私!」
武器の試験運用だって忘れてないかなぁ?
「まぁまぁ、僕だってキリエさん1人にあれだけ使わないと勝てませんでしたし、もしもこれが量産されたらと考えると恐怖で夜しか寝られませんよ」
「しっかり寝てるじゃない!やっぱり1人じゃ無理かしら……」
ほぼ僕を殺したい宣言なんだろうけど、多分キリエさん的にはフレンドはフレンドなんだけど、共に競い合う相手で、その相手より自分の方が上になりたい感じなんだろう。なんとなくその気持ちは分かる。何かランキングとかがあって自分と知り合いが近かったらその知り合いを超えたいって気持ちには僕もなる。で、その人が余裕そうだとものすごく悔しい……あ、今の僕がそれじゃん
「1人じゃ無理というかキリエさんはキリアさんと2人で1つじゃないんでしょうか?いつもの戦闘スタイルで言えば、前衛がキリアさんで後衛がキリエさんでしょう?それなのに、その適性と言うか、いつものスタイルを曲げたキリエさんと曲げてない僕がここまで急接近される方がヤバいと思ってます。その装備のお陰でキリエさん1人での対応力が滅茶苦茶伸びてて焦りましたよ」
こういう時はフォローだ。そもそもの話キリエさんは近寄られたらアウトなタイプのプレイヤーなのに普通にその近距離戦にも対応出来る様になっている。このことが普通に脅威なのだ。近接特化型と万能型が近距離でやりあえる時点である意味近接特化型は負けている。結果で言えば僕の勝利だけど、内容的にはキリエさんが終始有利である事には変わりない
「素晴らしい戦闘だった。で、そこのお前はなんだ?人間か?流石に人ならざる者と戦うのは辛かったであろう。もう少しだけ改良するぞ」
さっきの戦闘を見ていたらしいキーリンさんが更なる改良をするそうだ
「人ならざる者って誰に対して言っている?僕の目を見て答えろー?」
「………」
「ふふっ」
全く困ったものだ




