やる事は1つ
「ぐすっ、私がもっと強かったら……」
「……まぁ、仕方ないよ。もしかしたら助けられたかもしれないけど、イベント戦っぽい感じでもあったから……ラムっちゃんが居なかったらそもそも戦うのすら無理かもしれない相手だったし」
「あいつは多分救済キャラだったんだよ。この島に集まってる人のレベルはマチマチだし、割と真面目に今回限りの助っ人だったのかもしれない」
「消えちまったんだったらいつまでも後悔してても仕方がない!今度もし、また出会った時にしっかり感謝してやれば良いさ。それよりも、ほらアレ」
男が指を指した方にはとても大きな宝箱が置いてあった。ボスを倒した報酬だと言わんばかりの巨大な宝箱だ
「あれがラムっちゃんからの贈り物だと思えば良いさ。俺達だって、あの時メインでタンクをやってもらえなかったら多分戦線が崩壊してたと思うし」
「ふぅ……よし!切り替えよう!あの宝箱のお宝をゲットしたらまた頑張ろう!」
「そうだね。頑張ってくれたラムっちゃんが残してくれたお宝だ!」
「皆で開けよっか!」
「「「「「あぁ!」」」」」
9人が地下で討伐したボスの宝箱、このイベントでの報酬アイテムを入手していた頃、ハチはというと
「おぉ!ここ小麦があるじゃないですかぁ!これは増やして小麦粉作らないと!」
地下から脱出し、また(素材の)宝島の方に来ていた。もうあの島はボスがやられた事で生態系とかが変わって食べられるタイプの魔物とかも出てくるかもしれないし、残り日数も1日くらいしかないなら、今のところ多分誰も手を付けていないこっちの島で遊ぶというか、素材とかを集めた方が良いだろうと来てみたら、まさかの野生の小麦が自生していた。シスター服から巫女服に変え、もはや標準装備となったスコップを手に持ち、神楽舞。小麦が成長して、種を落とし、その種が成長して小麦になったらまた種を落としと繰り返し、自分の周りが黄金の絨毯の様な景色になるまで小麦を増やした。これだけあれば色んなものに小麦粉を使えそうだ。イベント報酬?皆楽しんでくれたならそれで良いじゃないか。僕は僕の楽しみの為にゲームをしているんだ
「さて、この小麦を石臼で挽いたら小麦粉になる……いや、そのまま行くなら全粒粉になるのか?」
お米で言えば精米された物が小麦粉で玄米の状態なのが全粒粉。全粒粉は栄養価が高いけど、パンとか作った時に仕上がりがあまり良くないから小麦粉を少し混ぜると良いと聞いた事があるけど……でもどうなんだろう?このアルターだったらある程度面倒な工程とか飛ばしてくれるから、このまま石臼で挽いてもそのまま小麦粉になってくれたりするのかな?
「まぁまずは石を取ってからだな。あのあたりが良いサイズかも。よーし、後は深淵触手で切り出したり、溝を掘ったりして……」
1人、そして誰も居ないという事でもう自由に動ける。誰にも遠慮せずに深淵触手を使って手頃なサイズの石を切り出して、溝を適当に掘ってみる。多分効率的な溝の掘り方とかあるのかもしれないけど、記憶の中に残っている、テレビで一から拘ったうどんを作るとかそういう企画で見た石臼の形状とかを思い出しながら作っていく。完璧じゃないかもしれないけど、無人島クオリティならこのくらいでも良いだろう
『石臼 粉ひきに使える』
「うん、何とか石臼って認めてもらえた。これでさっき増やした小麦も収穫してやってみよう」
多分こういう時に深淵触手で刈り取ったりせずにナイフを使ってアイテム化?みたいな事をした方が加工が上手くいくかもしれない。脱穀する為の機械とかもないから楽出来る所は楽しよう
「お~、おっほほ!上手く出来てる!しかもちゃんと小麦粉になってる!」
人と協力するのも楽しいけど、こういう1人で色々準備して上手くいった時の嬉しさはたまらない。ゴリゴリと粉を引きながら、小麦を小麦粉に変えていく。オーブナイフを深淵触手に持たせて斬ってアイテム化。それを取得したら手元の石臼に入れて小麦粉にして、深淵触手で粉を集めておく。これ全部1人で出来ちゃうから今の僕はまるで粉ひきマシーンだ!
「……」
「ん?どうしたの?」
僕が小麦粉を作っていたら、後ろからつんつんと突かれたので振り向いたら、リーが何かを回す様な動きをしていた
「もしかして石臼を回してくれるの?」
「……」
コクコクと頷いている。いやぁ、リーも可愛いなぁ
「オッケー。それじゃあリーにお任せするよ。小麦粉はこっちで集めるからぐるぐる回しておいて」
「私も、何かしたい」
どうやら僕が色々始めてリーも手伝い出したからレイさんも何かしたくなったみたいだ
「レイさんは……命が無い物とかでも触れます?例えば何かパン生地みたいな物とか……」
それが出来るのであれば、これからとても大事な作業が待っているのだが……
「多分……ハチに触っていれば触れる」
僕が橋渡しになればレイさんでも現世の物を触れられるとするなら机と椅子を用意して、僕の足を踏ませたりしておけば両手で作業出来るな
「それだけ分かればオッケーです。なら後でレイさんにはいっぱい働いてもらう事になるかもしれないので、今は自由にしていてください。別に僕に憑依とかしても問題無いんで、僕の視点から色々見たいとかならどうぞ」
もう悪魔だの悪霊だの憑依しようとした物が多いからレイさんくらいならもう全然、むしろドンと来いだ
「分かった」
僕の体にスッとレイさんが入って来た。もはや慣れた
「無人島、小麦粉、最終日手前……もうここまで来たらやる事は1つだよね」
これだけ条件は揃ってるんだ。もうこうなったらチネるしかないよね!
 




