昇天?
「お、おい!」
「待て!まずはアイツを先に倒すぞ!」
素晴らしい判断力だ。ここで僕に集まられても何も出来ないし、明らかに弱っているベヒモスを倒す為に全力を尽くしてほしい
「明らかに弱ってるぞ!ここまでやってくれたんだから後は俺達が決めるしかない!」
「あの場所、穴が空いてる!あの場所なら攻撃が通りやすいかもしれない!」
僕の攻撃によって動きが緩慢になったベヒモスの心臓部分に空いた穴を狙った魔法矢の攻撃とか、斬りつけでダメージを加速させている。これはもうすぐ倒せるな。じゃあ、もう少しだけお手伝いしよう
「えっ!?なんか力が……」
「パワーアップしてる!?」
「さイゴの、お、テツだ、い、です」
「っ……やるよ!」
「うん!2人で決めよう!」
ほんの少しだけ体を起こして、攻撃のタイミングを窺っていたギャルさん達に【オプティアップ STR】を掛ける。後はこの場から逃走する為に、【ジェミニ】と【バリアント細胞】を起動する。それと僕は指示していなかったけど、レイさんが支援してくれたのか、上からベヒモスの足に半透明の矢が刺さってその場から動けなくなっていた。これのお陰で2人がすぐに攻撃に移行出来た。このギャルさん達2人が息を合わせてラストアタックをする場面とか、戦隊ヒーローとか、魔法少女なんかが決め技を使う場面みたいな状況だろうからほぼ全員が2人に注目しているし、当の2人もベヒモスに集中しているだろう。この隙に【ジェミニ】で身代わりを用意して、【バリアント細胞】を使って体を小さくする。戦闘前に少し離れていてもらったリーが僕を発見すると即座に近寄ってきて、僕を回収。その場から撤退する最中に後ろからベヒモスの断末魔みたいな物が聞こえて来た
「ちょっと!ラムっちゃん!」
「起きて!」
その場に残してあった僕の【ジェミニ】の体を揺さぶるギャルさん達2人。こんな事になるだろうと思って実体のある【ジェミニ】にしておいて正解だったな。【イリュジオ】の幻覚だったら触れなくてまた問題が起きていただろうけど、これなら問題ない
「……」
「待っててよ!今回復する……」
「……」
喋らずに、まだ残している左腕で回復薬を使おうとしている黒ギャルさんを止める。そして最後に全員に一礼してから【ジェミニ】を解除する。戦闘ロボットが最後に戦闘で役に立った良い終わり方だったと思う
「「うわぁぁぁぁ」」
うーん、自分でやった事だけど、あそこまで悲しんでくれるのはちょっと嬉しいな。やった甲斐があった。ただこれをPVとかそんな感じで流されてしまうと、まぁ、あの2人には顔向け出来ませんなぁ?
「凄い。本当に倒した」
「レイさん。最後の支援はナイスでした。あのタイミングで動けなくするのは完璧です」
ラスト2人が攻撃する直前に僕のステータスに対する支援と幽霊矢の肉体ではなく精神に攻撃するみたいな攻撃で拘束するのは最高のタイミングだった。アレのお陰でラストアタックも綺麗に決まっていたと思う
「私、心残りが無くなっ……」
「おっと、それはちょっと待って欲しいかな」
なんかレイさんが満足してそのまま昇天しそうな雰囲気を感じたので、手を掴んで引き留める
「レイさん。もし良かったら向こうに行くのはもう少し待ってくれない?実は僕、死神さんと知り合いで迷った魂とか冥界に送り届ける事が出来るんだけど、冥界への入口も実は家の近くにあるんだよね。だから行こうと思えばすぐに行ける状態なんだけど、もう少しだけ現世に残って世界見たくない?」
「……それが出来るなら、それでもいいけど……」
「僕にも確証が無いから100%出来るとは言えないけど、僕達が帰る時までレイさんももう少し待って欲しい。試すまで1日や2日くらい時間あっても良いでしょ?」
幽霊を冥界に送るのが仕事だとしても、もう少し待って欲しい。そういう仕事を手伝うのなら多少の特権じゃないけど、いつ送るかを選んだりしても良いだろう
「上手くレイさんが僕の所に来る事が出来たらそこからレイさんがどうするか選べるし、もし失敗して、レイさんがこの場に残ったとしてももう、昇天出来る状態だったらいつでも自分の意思で昇天出来ると思うから」
「……分かった。もう少し残る」
レイさん的にはベヒモスを倒したからもう終わりなのかもしれないけど、僕にとっては、まだこの島でのサバイバルは後1日残ってるから今昇天されちゃうと話相手が減っちゃってちょっと悲しい
「ありがとうレイさん。僕ももう少し頑張ってみるよ」
まぁ、頑張ってみるとは言ったものの、今の所まだ皆の警戒が高いだろうから地下には戻れないし、地上も少し厳しいかもしれない。他の人の動向を探らないとどうにも動きにくい
「にしても、凄い演技。必要?」
「まぁ、あんな事をしなくても良かったと思うけど、ただ強い人が手伝うだけだと面白味に欠けるかなって」
対戦ゲームなら、一番面白いのは明らかな力量の差がある状態よりも、同じくらいの実力がある相手との勝負。協力ゲームなら味方が強すぎて自分が何もしなくても終わってしまう様な状況よりも皆で戦って1人でも欠けると負けてしまうかもしれないという状況の方が絶対楽しい。どちらにしても自分の価値が高い状況を作る事でやりがいにも繋がる
「皆で楽しく。それが僕のモットーだから」
「なるほどね」
良かった。納得してくれたみたいだ




