怒り状態
「危険予測。敵性存在から距離を取ってください」
流石に後ろ脚ばかり攻撃されたらヘイトがどうこうではなく、その場から移動して攻撃を受けない様にしようとするだろう。だから僕に対する攻撃を止めて、少し前足に力を入れ出したので警戒する
「っ!あぶねぇー!」
「良かった……」
僕への攻撃と後ろ脚への攻撃の対処を同時にしようとしたのか、その場で回転する攻撃を行ってきた。タンク2人が味方への被害が無い様にしっかりガードしていてくれたおかげで特に向こうに損害はない。僕も両手と触手を使い爪の攻撃を受け流しているので問題は無い。バスケじゃないけど、触手は添えるだけ……というか、手に添わせる事で他の人からは確認しにくくても、より多くの攻撃に対処できるようになっている
「グルルルルゥ……」
「全員、防御を固めてください」
その場で大回転攻撃をしてきたと思ったら、動きを一旦止めて背中を震わせている。ベヒモスの背中には棘の様な毛?が少し生えているので、それによる攻撃が来る可能性を考慮して全員に防御を促す
「ガアァッ!」
僕の予想が当たったようで、背中の棘が射出されてベヒモスの周囲に棘が落ちてくる。確かに範囲攻撃はヘイトを引っ張っていても他に攻撃を加える事は出来るだろう。それに、僕の近くに落ちて来た棘をよく見てみると、棘の表面に何か塗ってあるような光沢があった
「棘攻撃は毒状態になる可能性アリ。誰か攻撃を受けていますか?」
「こっちは平気だ!誰も攻撃は受けてない」
「しっかり守ったぜぇ?にしても、毒かよこれ!」
やっぱりなんと言うかこの2人意外とやるな。さっきの棘攻撃だって上から降り注いでくるタイプの攻撃なのにしっかりガードして全員を守ってるし、実は結構上手い人だったりするんだろうか?まぁ、新人だとしてもそれは喜ばしい事だから問題ないとは思うけど
「防御に関しては任せてくれ!」
「こう見えても偉い人に鍛えてもらったからな!ガッツリ攻撃してくれてかまわないぜ!」
誰に鍛えてもらったかは知らないけど、あっちの方が任せられそうだ。だったら僕の方はもう少し攻勢に出るか
「了解しました。攻撃を開始します」
触手を小さめの刺突モードにして、拳を出せば突き刺さるみたいな状態にしてベヒモスの顎やこめかみ、首など、手の届く範囲で急所っぽい所を攻撃していく。こうすれば後ろからの攻撃が面倒だとしても、僕に注意を向け続けるしか出来ないだろう。こっちから顔を逸らせばお前の心臓を抜いてやるぞと言葉にはしないけどずっとそういう圧を飛ばしてみている。もちろんこれは気持ちの問題だから実際にそんな気が相手に伝わっているかどうかは関係ない。そういう気迫で攻撃をすればヘイトが他の所に向かう事も無いだろう
「な、なんだあの動き……」
「あれで本当にロボットなのか?」
「凄い柔らかい膝……あんな風に攻撃を避けるなんて」
ベヒモスの攻撃を潜り込んだり、後ろに下がったり、左右に避けたりしながら一撃を加えられる隙には遠慮なく深淵で強化されたパンチをお見舞いする。今は腕にゲヘちゃんアーマーを装備してるし、掌底よりはパンチの方が良さそうだ
「敵、挙動変化。注意してください」
体力が減ったのか、ベヒモスの体から熱気を感じる。そして体色も紫寄りだった色合いが赤い体になっている。これは速度とかパワーが上がってるかもしれない。こっそり【レスト】掛けて一度落ち着かせた方が良いか……いや、この状態の方が戦いやすいかどうかをまず試した方が良いな。現状が怒り状態だと仮定して、この状態の方が速度が上がっても、攻撃が単調になるのなら怒らせたままの方が良いし、怒らせた事で複数の攻撃を織り交ぜたコンビネーションアタックとかをしてくるのであれば【レスト】で一度落ち着かせるというか、タイミングをズラしたりするのが良いかも
「ガァッ!ガウッ!ウガァッ!」
右前足振り下ろし、左前足振り下ろし、その場大回転の3連コンボ。これはちょっと味方が攻撃しにくいな。と言うかその場大回転を普通に攻撃絡めて来るようになったから近接の人がとてもじゃないが攻撃に参加出来ない。あのその場大回転で尻尾が直撃すると割とまずい。尻尾にも背中の棘と似たような棘が生えているので、あの尻尾の一撃を喰らったら毒状態になるだろう
「尻尾の攻撃にも注意して下さい。毒状態になる可能性があります」
大方の予想だけど、このベヒモス。遠距離攻撃に対する耐性的な物は持っていそうだ。さっきから見ているけど、近接は良い感じでダメージになっているけど、矢とか少し弾かれているっぽい。完全無効ではないみたいだし、遠距離ダメージ30%カットとかそんな感じだろうか
「一度沈静させます【レスト】」
「ガァ……」
ボスにも効いてくれる【レスト】はやはり単なるデバフより凶悪だな。回復+バフ効果があるけど一定時間動けないという代償があるだけで、デバフに耐性を持っていても貫通する性能はやはり凄まじい
「攻撃をお願いします」
「「はいはーい!」」
一度寝かせたからか、体色が紫色に戻っていく。そこにギャルさん達が剣を振り下ろす。これ中々恐ろしいな……




