追い込む
「そうそう、この島での動物ってこの島に来た時に一回見つけたけど、それ以降見てないんですよね。何か知ってたりします?」
「多分、それ偽物混じってる」
「偽物?じゃああの鹿とか、猪は動物じゃなく、何かが化けているって事?」
マジか。もしリーみたいなスライム的な存在が動物の真似をしていた場合は地面にしみ込んだりされたら発見はまず無理だろう。もしソイツが肉食だった場合は、居もしない獲物の姿を見せてソイツを狩ろうとした奴がいつか衰弱するのを待ってから逆に狩るみたいな事をするかもしれない
「多分そうだけど、4本足の生物の、真似するだけで、危険性はない」
危険性はないと……なら単純に姿を真似するだけのなのか。それはそれで割と迷惑だな……
「んー、じゃあ鹿とか猪は居ない物として見た方が良いのか。お肉には中々ありつけなさそうだな」
あれが嘘だったとしたらものすごく悲しいな。肉を入手出来る機会が巡ってくるかな
「お肉……鳥とか?」
「いや、僕1人が食べる為ならそれで良いんだけど、他の人が食べられる量の肉が無いとね……」
僕1人が抜け掛けするくらいの量なら多分集められるかもしれない。でも、9人が食べられる量の肉となると、集めるのが大変なんだよなぁ
「本物の猪でもいれば、皆が居る所に追い込んで倒せばご飯に出来ると思うけど……」
ポン君のお陰で広範囲を調査出来ると言っても、やっぱり島全域をカバーは出来ないし、僕が歩いて調査している反対側を常に回ってるみたいな状態だと絶対に会えない。多分真似するって事は本物が居るとも思うんだけど……
「追い込む?それなら手伝う」
「お、それは助かる。えっと、多分今大体の人はこの辺に居ると思う。大丈夫かな?」
この島の地図を出し、レイさんに見せる。現状はあの洞窟がメインの住居になってるだろうからそこに向かわせる様に猪を見つけたら追い込もう。弓持ちが加勢してくれるなら大分楽になるハズだ
「じゃあ、僕はこっち周りで行くから、レイさんはそっち周りで島を進んで猪か鹿でも居たら追いやって人にバレそうだったら無理せず隠れて良いから。リーもレイさんについていく?」
「……!?」
リーに話を振ったら一瞬驚いた様なしぐさの後、手を組んで唸っている様なモーションを取っている。なんだか迷ってんねぇ?
「……!」
「分かった。いざという時は、頼りにさせてもらう」
悩んだ末に僕の肩から飛び降りて、レイさんの横に並ぶ。弓を使うレイさんのカバーをリーがしてくれるならまぁ、大丈夫かな
「じゃ、この辺で落ち合おう」
島の山を挟む様に左右から猪とかを探していき、拠点となる入口前まで獲物を追い込む。そしてその後少し離れた地点で合流ととりあえずの流れを説明した
「分かった」
「……!」
2人とも頷いて理解してくれたみたいだ。ここで肉を確保出来れば、9人の体力的な問題と言うか、食料でイラつくみたいな事は回避出来ると思う。食料に余裕があるか無いかで人間の心の余裕も違ってくる。ここで喧嘩なんかなったら目も当てられないし、皆でご飯食べて仲良くやってくれよな
「やっと見つけた。ホント全然居ないな」
途中で体の一部がなんか変な偽物っぽいのも見つけたけど、やっと本物の猪を見つけた。さぁ、追い込むぜぇ?超追い込むぜぇ?
「ほらほら!」
深淵鞭で猪を追いかけながら別方向に行きそうになったら鞭で軌道修正しつつ、皆が居る洞窟の入口前まで向かわせる。向こうは鞭の代わりに矢でやってるのかなぁ
「ふんふん、あともう少しだ」
「それマジ?」
「それでさぁ……わぁ!猪!」
進んで行ったら何かの調査終わりだったのか、ギャルさん達2人が家に向かっていた。こうなったら2人にこの先引き継いでもらった方が良いかも
「あっ!あれ倒せばお肉が食べられるんじゃ!」
「そうじゃん!皆で倒さなきゃ!」
ギャルさん達は追い込みつつ、他の人も待っているだろう洞窟に歩みを進める
「慎重に!私こっちから行くからそっちよろ!」
「任された!」
猪が送られていく
「その鹿待てぇ!」
「あいつは食料になるぞ!」
「皆で喰うぞ!」
と思っていたらとなりから鹿を追いかけた集団も来た。どうやら向こうの2人の追い込みも成功したみたいだな
「まぁ、ここから先はちゃんと狩れるかどうかは君たち次第だし、僕は合流しないとね」
ちゃんと追いかけていったし、もう僕がやる必要もないだろう。合流地点で2人の到着を待とう
「と、思ってたけど……」
「ん、結構早い」
いや、僕より先に来てる時点でレイさんの方が早いじゃないか
「こっち、思ったより早く人間が出て、鹿追いかけていった」
「僕の方はついさっきだったね。なんにせよその感じだとバレてないっぽいね」
「大丈夫、バレてない」
まぁ、バレていたとしても、そこまで問題ではないのかもしれないけど、バレてないなら良い
「この島の事もそうだけど、周りも色々あるから調査はもっとしないとね。これからも頼むよレイさん。リー」
とりあえず一仕事終えたから手を差し出して握手する。本当にまだまだこれからだ




