トラップ
「おぉ……色々試したい欲が出てきた!」
「まぁ、ハチならそうだろうな……」
やれやれと言わんばかりにため息をつくアトラさん
「何だか街で僕が指名手配よろしく探している人達が居るらしいんで、新しい装備でも作ってイメージを変えてみようかと」
「ほう?」
白いオーブローブが結構目印になっているみたいだからローブを出来るだけ目立たなくする新しい装備でも作ってみよう
「あ、ハスバさん……」
そういえばハスバさんはどうなったんだろう?囮作戦を実行してたお陰で僕には村まで特に追跡らしい追跡は無かったけど……ハスバさんは思いっきり追われてたんだよね?連絡しようかな?
「……いや、やっぱり止めておこう。あの人なら追いかけられるの楽しんでそうだし」
今は自分の事に集中しよう
「それじゃあアトラさん。ちょっと森に行ってきます!」
「おう、行ってこい」
【魔糸生成】も、もっと試したいし、一応作ってみたい物のイメージは出来てるからそのイメージに合う敵を倒して装備を作ってみよう
「探すと出てこないなぁ?」
猪とか蛇は出てくるんだけど目当てのアイツらが出てこない。あ、一回アミュレット外してみるか
「「「ガウッ!ガウッ!」」」
「おぉ!来た来た!」
アミュレットを外した事で【ジャミング】が無くなったお陰か声が聞こえてきた。お目当ての敵、狼たちがこっちに来ている
「【魔糸生成】」
細く、鋭く、千切れない。この3つの要素を糸に付与して手から糸を生成する。狼たちがやってくるまで時間はそれほど無いから手早く準備しないと……
「「「ガウガウッ!」」」
「う、うわぁ!」
狼たちの前で腰を抜かした格好で地面に座る。実際はいつでも動けるし、狼たちはすぐに倒せるが今回はそれじゃあ実験にならない
「ガウッ!……」
先頭の狼が僕に飛び掛かって来たが、右前足と首がずり落ち、地面に落ちる
「「ガウッ!?」」
「あらら、1体だけか」
ブービートラップとして設置した糸は狼が走ってくる勢いで首を飛ばした。うん、張った本人だから場所は分かるけど通常の糸より更に細くしたから全然見えない。これかなり危ないぞ?
「おっと、逃げないでよ?【魔糸生成】」
「「ウガッ!?」」
今度は粘着質と千切れない要素を入れた糸を残った2匹に向かって射出する。べったりとくっ付いた糸を外そうと藻掻く狼たちは余計に糸に巻かれて動けなくなっていく。んー、エグい
「よいしょ、よいしょ」
ずるずると引きずって僕の近くまで引き寄せる。暴れたせいで足に糸が絡んでもう動けないオオカミ達との距離はどんどん近くなっていく
「すぐに楽にしてあげるからね?」
動けない狼の首を折る。君達の毛皮が欲しいんでね?
「ふぅ、とりあえず一旦持ち帰ろう。後はこのトラップは外しておかないと……」
3体分の狼の死体を泡沫バッグに仕舞う。その後、木と木の間に張ったブービートラップの糸を回収する。枝を前に出して糸を探し、見つける。これを張りっぱなしにしたら忘れた時に自分の首を刎ねる事になるなんてマヌケな事になりかねない。場所が分かる内に回収しておこう
「あぁそういえば糸の出し方は分かったけど、糸を消す事は出来るのかな?」
村に戻ったら一応アトラさんに聞いてみよう。糸を出す事で出来る事はあるけど糸を消す事で出来る事もある。具体的には岩を糸で吊り下げて、糸を消して落とす……なんて使い方が出来ると思う。そもそも糸で絡めとった狼達から糸を外したり、消したり出来ないと素材にならないんじゃないかと若干心配になる
「多分3体分もあれば充分でしょ」
アミュレットを装備して、村に向かう。僕の体のサイズなら狼3体分の毛皮(非アイテム化)があれば多分間に合うと思う。足りなかったら追加で探しに行こう
「ドナークさんに作ってもらったシロクマコスチュームも凄かったし、ドナークさんにやり方とか教えてもらえないかな?」
僕が自分用に作った装備と言えばギリーマントっていうほとんど草木しか使っていない物だし、動物の皮とか使った装備を一回は作ってみたい物だ
「ただいまー」
「お、帰って来たか?どうだった?」
「アトラさん?糸の消し方とかってあります?ちょっと糸を使った結果ベタベタになってしまったので……」
「糸の消し方か、それなら出した糸に触れて消すとか消滅をイメージして魔力を込めれば糸を消せるぞ?大体何もイメージしなかった時の糸を出すときと同じくらいの消費量だ」
「触りながら消す関連のイメージですね?」
泡沫バッグからべたついた糸に巻かれた2体を取り出し、糸の消滅をイメージする。すると糸が灰の様に崩れて消えていった。おぉ、これなら充分使えるな
「なるほど、ありがとうございます。これで使い勝手が更に良くなりました」
「儂は糸を出してほとんど終わりだったが、ハチにとっては消す事が重要なのか?」
「僕はトラップに使ったり、こんな風に糸で絡めた相手の素材を取る為に糸が消せる方が助かるんですよねー」
強者にとっては使って終わりなのかもしれないけど僕にとっては倒した後も重要なので求める事が違うのも仕方が無いだろう
「それじゃあ僕はドナークさんに用があるので行きますね?」
「あぁ、毛皮か?」
「はい、教えてもらえるかなぁと思って」
「ハチには教えてくれると思うぞ?」
「バタバタしてて忙しないですけどドナークさんの所に行ってきます!」
「あぁ、行ってこい」
アトラさんに見送られ、僕はドナークさんの家に向かった