ボスゴブリンとのタイマン
「ゲヘゲヘッ、ガァ!」
僕が素手だからか、相手がかなり油断している気がする。あ、コイツさては、「チビなカモが来たぜぇ?」とか思ってるな?
「よし、パッシブ以外スキルは使わないで行こう。魔法も縛る」
油断している訳では無い。あの時のオーガ戦ではほぼ戦闘に使える魔法もスキルも覚えてなかったし、あの時を思い出して戦うのであれば、勝手に発動しちゃう物以外縛るのが丁度良い
「タイムアタックはここまでだ」
多分、スキルや魔法で強化したり、弱体化したりすれば、かなり短時間で相手を倒す事が出来るかもしれないけど、これもある意味中々無いリベンジ的な機会かもしれない。あの時は皆の力やアイテムの力を借りたけど、今は僕単体の戦闘能力だけでこのデカいゴブリンと勝負してみたい
「グアァ!」
「へぇ?中々良いスイングじゃん。野球でもしてみれば?」
大きなこん棒を横振りし、僕の上半身を狙ってきた一撃を上体を逸らして、そのままタイミングを合わせてバク転する事で空振りさせる。まずは挑発的な事をして相手の冷静さを奪っていこう
「ギャ?グギャギャ!」
「それはあんまり良くない手だねぇ?」
横振りが僕に当たらなかった事に気が付いたボスゴブリンは今度は餅つきと言うかモグラたたきみたいにこん棒を頭の上まで持ち上げて振り下ろす攻撃を繰り返す。でも、その頭の上まで持ち上げてから振り下ろすまであんまり早くないから見てから回避が間に合う。もっとテイクバックを小さくして、弱くても相手に一撃与えて動きを鈍らせてから強烈な一撃を入れるってやった方が確実だと思う
「よっ!」
「グギャ!?」
こん棒を持ち上げたタイミングでボスゴブリンの前に出ていた左足のふくらはぎを狙った蹴りを放つ。カーフキックと呼ばれるこの蹴りは反応さえ出来れば、脛でガードされてこっちがダメージを負う可能性もあるが、反応出来なければ結構痛い一撃を与える事が出来る。こん棒を振って僕に攻撃を当てる事に意識が集中しているボスゴブリンに僕のカーフキックを防御する事など出来ない
「人型なら、大体人と同じ弱点部位なんだろう?」
「ゴボォ……」
ふくらはぎを蹴られて、片膝を突いたボスゴブリンの鳩尾と喉にアッパー。背面に回りこみ、腎臓があるだろう脇腹辺りまで上がってストンピング。そこまですると一度ダウンして床に突っ伏すボスゴブリン。一度背中からジャンプして、股間に一撃加えてから離れる
「急所攻撃のフルコースだ。デザートに目潰しはいかがっ!」
「ギャアァァ!」
倒れて丁度良い位置にボスゴブリンの顔があったので、膝蹴りを入れてから後ろに飛び退く。顔面。特に目なんて攻撃されたらもはや脊髄反射の様に目を覆いたくなるだろう。それに、痛みで暴れるだろうから巻き込まれない様に下がったけど、まだ油断は出来ない
「ガガガガグギャ!」
「おぉ、怒った」
体色が赤くなったから多分怒ってると思う。動きが速くなるとかあるかな?
「へぇ、良いじゃん。さっきの油断しまくってる状態よりずっと良い」
さっきの膝蹴りで片目は見えなくなったみたいだけど、気力は十分。これからが本番だな
「グゥゥゥ!」
手に持っていたこん棒を捨て、ファイティングポーズを取るボスゴブリン。おっと、怒ってるのにまさかこっちの土俵に来てくれるのか。まぁ、いつこん棒を拾って奇襲してくるか分からないけど、乗ってくれてるなら、僕もスキルと魔法はまだ縛ったままで行こう
「良いねぇ!やっぱりこうでなきゃ!」
「ガァ!」
さっきまでの様なただ僕を狙った攻撃だけではなく、フェイントなんかも混ぜてきて、僕に一度避けさせようとしてからの、動いた時にパンチを当てる動きとかさっきのモグラたたきの時と全然違う。やれば出来るタイプだ
「だけど、こっちも当たる訳にはいかないんだよ!」
相手がフェイントを混ぜてくるならこっちもフェイントを混ぜる。もしくは、回避から【ダブルジャンプ】とかを使って、更に回避行動を重ねて回避する
「ほぉ?真似て来たか!」
さっき見せたカーフキックを見様見真似で僕に対して打ってくるボスゴブリン。だけど、残念ながら君のカーフキックは身長差もあるせいで、僕にとってはミドルキックだ
「でも、それは良くないねぇ!」
「ガッ!?」
キックが見えた時点で、スライディングして攻撃を躱し、その低い体勢から蹴りを出す、躰道の卍蹴りで相手の股間に攻撃する。カーフキックは見た目はただのキックだから真似してみようと思ったかもしれないけど、これは簡単には真似出来ないぞ?
「よいしょっと!」
また背中を見せたので、駆け上がって頭を踏み台にして飛び退く
「ガッ……」
あ、そういえば頭を踏んだから恐怖状態になったか。それじゃあ遠慮なく行かせてもらおう
「はぁ!」
恐怖で立ち尽くしたボスゴブリンの心臓めがけてジャンピングアッパー。手が透ける様にボスゴブリンの体内に手が入り、そのまま引き出す
「ギャァァァァ……」
僕の胴体くらいはありそうな赤いポリゴンが引き抜けた




