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お試しの一杯

「お邪魔します……わぁ、結構広いですね」

 家の中は結構広々としている。それに家の中にストーブ的な物があって煙突もある。これなら冬でも何とかなるのかもしれない


「そこに座ってくれ。今お茶を用意する」

 この山の中でどんなお茶が出てくるかな……


「さぁどうぞ」

「いただきます」

 中々濃い色合いだ。どんな味だろう


「おぉ……深い味わいですね。色んな野草をブレンドしてるんですか?」

「あぁ、そうだよ。最近の好みの味なんだ。それに野草のブレンドだから栄養も結構あるんだよ」

 色々な野草を合わせているなら確かに栄養満点かもしれない。結構苦みは強いけど、滋養強壮的な苦みだから嫌いじゃないな


「なるほど、この苦みは自然の恵みの味なんですね」

「ほほぉ、良い表現だ」

「少し前に松の葉で作った松茶も他の野草と合わせればもっとスッキリした味わいになったりするかも……」

 野草というか、ミントみたいな物と混ぜると更にスッキリした味わいになったりするかな……


「松の葉の茶か。アレも中々良い物だな」

「結構美味しいですよね。最近飲む機会があって飲んでみたら意外と良いなって思いました」

「君、名前は?」

「僕はハチと言います」

「そうか。俺はサイバだ。どうだろう。せっかくなら飯も食べて行かないか?」

 サイバさんにご飯もお誘いしてもらえた。これは断るなんて勿体ないな。山を歩いたから一応空腹度は減ってるから食べられる


「良いんですか?だったら、何か取って来るの手伝いますが……」

「いや、今丁度出来上がった所だから問題無い。どうだ?これは喰えるか?」

 サイバさんがストーブに掛けていた鍋の蓋を開けると、ネズミみたいなのが鍋に入っていた


「これはネズミですかね?」

「あぁ、ラットの一種だが、どうだ?流石にこれは……」

「頂きまーす!」

 しっかり内臓を抜いているみたいだし、いきなり僕がやって来たのに既にスープになっている所を見たら、自分で食べるつもりで調理していたんだろう。という事は調理法が確立されていると思って良いだろう。何回か料理する程作っているなら美味しいって言ってるのと同じだ


「んー!チキンスープみたいで美味しいです!」

 あっさりした味わいだから味付け次第で色んな表情が出そうだな。見た目を誤魔化せば普通に鶏って言っても分からないかも


「そうか……ラットのスープを躊躇無く喰うとは、中々度胸があるな?」

「この前イモムシを焼いて食べたんで、正直ネズミ位なら別に良いかなって。食わず嫌いで美味しい食材をスルーしちゃうのも勿体無いので、調理した、された物は食べるって決めてるんですよ」

 今なら偽食の宝呪のお陰で失敗した料理でも自分で処理する事が出来るし……というか、母さんのミラクル苦ッキング料理のお陰か、この世界の食べ物なら基本的に「イケそう」と思えてしまうなぁ……


「イモムシか。あれは結構栄養があって良いが見た目で敬遠されるからな……だが、それも喰えるのであればラットのスープ程度では驚かないのも納得だ」

「サソリも試したんですけど、ほとんど味無かったんで、ちょっと拍子抜けでしたね」

「さ、サソリも喰ったのか……この辺には居ないからサソリは食べた事が無いな……」

 うむ、ちょっとだけ勝ったな!


「ふむ……だったら蛇はどうだ?」

「蛇は美味かったですねぇ……また食べたい」

 ゲーム始めて最初の頃に食べた蛇のお肉は美味しかったなぁ……


「蛇も喰ってたかぁ……どうやらサバイバル能力はかなり高いみたいだな」

「うーん……まぁ、街に行かなくても生きるくらいは出来ますかね?」

「充分だな」

 充分らしい。何基準なんだろう?


「で、なぜこんな所まで来たんだったか」

「山で暮らす方がどんな生活をしているかを見てみたくてですね。生きる上で、何か参考になる事が有るかなと思って」

「ハハハ、それだけの度胸や、観察眼があればもう学ぶ事も無いんじゃないか?ここに来るにも何かしら俺の痕跡を発見してここを見つけたという所だろう?」

「この山に人が住んでるって噂を聞いたので……なら何かしらの痕跡があるんじゃないかなぁって探したら見つけただけでして……」

「普通は見つけられないんだがなぁ」

 ポン君で感覚ブーストしてないと多分見つけられなかっただろう。ポン君の感覚ブーストも慣れたお陰で探索出来る範囲も広くなったから痕跡も発見出来たし……あれ?この人を見つけるって実はかなり無理ゲーだったのでは?


「えっと、一旦その話はおいておくとして、サイバさんはどうしてこの山に住んでるんですかね?」

「何故かって?単純にこの山が好きなのと、冒険者として野宿とかしてたが、宿に泊まるよりもむしろそっちの方が性に合ってたから冒険者を辞めて、山に暮らしているんだ」

 はぇ~、そういう事もあるんだ。単純に野宿の環境が好きで山に住むとか中々思い切りが良い人だな


「それに、この山の山頂には社が有るんだが、その管理をする奴も他に居ないしな……」

「社ですか……という事は何か祀られているのかな?だったら一応山に入ったし、挨拶とかした方が良いのかな……」

 何かしらの神様が居るなら一応挨拶とかした方が良いかもしれない。それに、話しぶりから察するに、サイバさんがここに住んでいるのは山に森林限界があるから生活出来る範囲で、それなりに高い位置であるこの辺りで居住出来る場所を作って、社の維持とかをする為にここに住んでいるのかも


「それなら一緒に来るか?これから掃除をしに行くつもりだったからな」

「ご一緒します!さっきのお茶とかスープのお礼をさせてください」

「分かった。それじゃあ行こう」

 さて、山頂はどうなってるかな?



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― 新着の感想 ―
[一言] たとえそれが目の前に普通なら狂ってるとしか思えない殺人鬼+邪神のにおいみたいなのさせてたとしても?
[一言] ハダカデバネズミみたいになったネズミがプカァって浮いてるのかー、うまそう。 と言うか、普通の人がたどり着けない場所に巣食う元冒険者とか、どう考えても屈強なベテランなんだよなー?
[一言] まつられてるのが普通の神だったら敵対ルート一直線だろうなァ やばい称号に、深淵まで持ってるから
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