悪い2人
「あ、すみません。キリエさん1つ良いですか?」
「何かしら?」
「領主に会うのは良いですけど、ギルド長?と会うのは遠慮したいんですが、良いですかね?」
「どうかしら。私への報酬が減る気がするから出来ればそれは却下したい所だけど……」
「じゃ、領主にも会わないので、報酬0ですね」
「仕方ないわね。一応、話だけは通しておくわ。余りにも危険だから指示に従わないとフィフティシアが地図から消えるってね」
「えぇ?」
なにそれ。完全に化け物じゃん……
「流石に人は消せても街を地図からは消せませんよ……」
「人が消せる時点で充分危険よ」
まぁ、それを言われたらそうだ
「僕が今更ギルドと関わるとか絶対に面倒事が起こりそうなので、ギルドの人と関わり合いになりたくないんですよ。だからキリエさんが何とかしてくれるなら僕もキリエさんに感謝しますよ」
「その感謝は大きいわよ?」
「その内キリエさんに返ってきますよ」
「楽しみにしてるわ。行き先はこっちよ」
これ、行き先はフィフティシアの王城かな?
「じゃあ、ハチはここで一旦待ってなさい。先に行って話をしてくるから。どっか行くんじゃないわよ?」
キリエさんが立派な建物の前に先に城に行って僕の要望を伝えてくれるみたいだ。お任せしよう
「分かりました。それじゃあこの辺で待ってます」
建物に進んで行くキリエさん。とりあえず人にバレない様に【擬態】でもしておくかな。何かキリエさん入り口で一旦止められてるけど……あ、通してもらえた。コネの力かな?
「話付けて来たわよ。さっさと出て来なさい」
「はーい」
10分くらい経ってキリエさんが戻ってきた。話を付けて来たと言う事は僕の要望が通ったのかな?
「一応、領主とだけ会うのはオッケーを貰えたわ。ただ、時間が掛かるとギルド長が来るかもしれないらしいから」
「じゃ、急ぎましょうか」
「で、なんでその恰好なの?」
「一応、どういう相手かどういう人か分からないんで、面倒事を押し付けられそうなら神様の話でも持ち出そうかなって」
「なるほどね」
上手く行くか分からないけど、僕が男だと情報が既に流れているならそれだけで異様な恰好をしている事で相手も遠慮してくれるかな
「大分警戒してるわねぇ?」
「まぁ僕の方から会おうとする人じゃ無いですから警戒しちゃいますね。何か流れで出会った人と、そうじゃない人だと警戒度が違うって言えば良いんですかね」
冒険していて自然に出会った人と単純に僕の噂を聞いて僕を呼び寄せようとする人。何となく、後者は僕を利用したいだけに感じるからあまり会いたくないんだよなぁ……一度会った人が呼び寄せるのは別に気にならないけど
「とりあえず会ってみましょうか……」
あんまり気が進まないけど、行ってみますか
「やぁ、君が娘を助けてくれた本人かな」
「……」
さて、どうしようかな……ここはあえて喋らない方が良いかなぁ
「あ、あの……」
「私は連れてくるって約束しただけよ。貴方と会話するかどうかを決めるのは私でも貴方でも無いわ」
おぉ、キリエさんが僕の味方をしてくれてる。ここでキリエさんの後ろに隠れるとかしたら喋らなくても良いのではないかな?
「……」
何も言わずにキリエさんの後ろに下がる。ついでにウィスパーも飛ばしておくか
(キリエさん、協力してくれるなら何かしらお礼しますよ)
(乗った!)
「気分で助けただけで、別にお礼も必要無ければ、何かを頼まれても断るつもりで来たらしいわ。まぁ、私が声を掛けたから来ただけらしいけど」
「そ、そうですか……」
(とりあえず、誰か助けて欲しいとかでなければ帰ります)
領主の人には悪いけど、今どうしても助けて欲しい人とか居なければ帰らせてもらおう
「まずは、なんの為に呼んだのか教えてくれるかしら?」
「いや、ただお礼をしたかっただけなんだ」
(じゃ、キリエさん貰ってください)
そういうお礼はキリエさんが貰っておけば良いんじゃないかな
「そういうお礼とかは賄賂になるから受け取らないって。でも、自分の周りの人が豊かになるのは別に構わないから代わりに私に受け取れって言ってるけど、どうする?」
ウィスパーで話した事を随分と良いように改変してるなぁ……
「分かった。そう言う事ならわざわざ連れて来てくれた君に報酬を払うよ。本当に娘を助けてくれて感謝している」
(いぇーい!ボーナスゲット!)
(悪い稼ぎ方してますねぇ?)
領主が頭を下げてるのに中々悪い事言ってるなぁ?まぁ、僕も人の事は言えないけども
(それじゃあ、感謝を伝えるだけなら伝わったんで、報酬のやり取りはそっちでお願いします)
「一応、私はこの子と友達だから、どういう子なのかはある程度知ってるけど、こういうお金に関してはかなり頑固だし、地位も名誉も要らないタイプだから後でお金とか送ろうとしても全却下されるって事だけ。ただ、食事位は受けるんじゃないかしら?」
「おぉ!そういう事でしたら是非!」
(えー……今は別に豪華ご飯より、さっきの山籠もりしているおじさんの話の方が聞きたいんですけど……)
山籠もりしているなんてまだ僕が知らないサバイバルの術とかを知っているかもしれないからそっちの方が気になるな……やっぱり僕には街が向いてないな
 




