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摘出

「ハチ?居るか?」

「あ、アトラさん。その、見て欲しい物なんですが……」

 装備されているハズだけどどこに装備されているかな?装備欄にはあったからアイテムの名称と効果は分かるけどどこに装備されているか分からない……どこだどこだ?


「なにしているんだ?」

「呪われたアイテムが装備されちゃったみたいなんだけどどこに装備されてるか分からなくて……」

「ハチは本当に……何か仕出かさないと生きていけないのか?」

「僕は別に何か悪い事してやろうと思ってやってるつもりは無いんだけど……」

 僕は別にやらかしたくてやらかしているんじゃない。勝手に向こうから何かやってくるだけだ


「路地で黒い小さな箱を拾ったら急に『貧呪の魔硬貨』とかいうアイテムが装備されちゃって……どこにあるかなって」

「そうか……」

 アトラさんが思案しているみたいだ。ひょっとして僕に見えないだけでアトラさんには見えてるとか?


「ハチ、ビックリするなよ?」

「はい」

「ハチの体の中にその硬貨があるぞ?」

 体の中?


「……どうりで見つからない訳だ」

 そりゃどこを探しても見つからないや。だって体の表面は探せるけど中は流石にね?


「マジで驚かないのか……」

「若干その可能性もあるかなぁ?って思ってたからね。でも、体の中に有るんならちょっと困るなぁ?」

 装備を外せないにしても体内にあるのは嫌だ。せめてローブの内側に張り付けたり、ポケットに入れておくとかにしておきたい


「アトラさんなら取り出す事が出来そう?」

「酷な事を言うな……儂にハチの腹を刺せと言っているんだぞ?」

 そう言われればちょっと悪いこと言っちゃったな……でも自分で自分の腹に手を刺し込んで呪いのコインを取り出すのはかなりの勇気要る。というか絶対やりにくいから失敗しそうだ


「自分でやるのは流石に……アトラさんには僕の体の何処に魔硬貨があるか分かるんですよね?ならアトラさんに任せたいです」

「……わかった。出来るだけすぐに終わらせるからすぐに回復出来る様に回復薬を用意しておけ」

「はい、お願いします」

 ローブを脱いで上半身裸になる。うわっ、左わき腹辺りが黒くなってる……多分この辺りにあるんだろうな


「一応木でも噛んでおこうかな……」

 流石に戦っている最中じゃ無いし、アドレナリンも出てないから絶対痛い。避けると意味が無いし、自分の意志で攻撃を喰らうって結構怖いな……爆発とかも喰らったんだけどあの時は完全にアドレナリンで痛みは大分軽減されてたと思う


 木を噛み、右手に野戦生薬を持つ。おぉ、来るぞ来るぞと思うとダメだ。体に余計な力が入ったら(外さないとは思うけど)外れてしまうかもしれないから自然体で立ってないと


「行くぞ」

「はい」

 アトラさんの合図が出た直後僕は目を瞑った。自分の腹を貫かれる所をスローで見ようとは思わなかったので目を瞑ったけどこれはいつ来るか分からな……


「かふっ……」

 気が付いたらお腹に穴が開いていた。あぁやばい、めっちゃ痛い!


「んぐっ……スゥ、ハッハッハッハッハ……」

 野戦生薬を飲み込み、システマの呼吸法で痛みを抜く。口の中は苦みが広がっているけど、傷口はすぐに塞がったので体としては問題無い


「大丈夫か!ハチ!?急に過呼吸になったが……」

「結構……痛かったから、痛みを、抜くためにね……」

 傷が塞がった腹を見てみると黒くなっていた部分は元の肌色に戻っていた


「取り出す事には成功したが……呪いは流石に解けんぞ?」

 アトラさんがそういうと僕の掌の上に真っ黒な硬貨が乗っていた。これが貧呪の魔硬貨……


「呪いってどうやったら解呪?出来るんですかね?」

「呪いはそうだな……確か昔ワリアから聞いた話なら教会に寄付をして呪いを解いてもらえると聞いたな?」

「それじゃあ、僕は呪いを解いてもらえないね?お金無いし、お金が手に入らなくなる呪いだし、さっきここに来る前に試したけど教会にそもそも入れなかったんだよね」

 やっぱりそうなるかぁ……教会に入れないのもあるけど呪いを解くにはお金が要る。でもそのお金を稼ぐことが出来ないと……これは詰んだか?


「いや、諦めるのは早い。高位の聖魔法使いや神官か僧侶なんかが呪いを解く魔法なんかを覚えているかもしれないぞ?」

「そっかー、教会じゃなくても解呪のチャンスはあるんだ」

 まだ詰んではいない。ならやり様はあるな……


「うーん、おりゃ!」

 物理的に思いっきり距離を開けたら呪いから解放されたりするかな?なんて浅はかな想像で村の外に向かって思いっきり魔硬貨を投げる。あれ?【投銭術】発動した?


 目で追えないくらい遠くに飛んで行った。だけど、いつの間にか僕の掌の上に戻ってきている……おっと?


「アトラさん?呪いって別に解かないと死んじゃうって訳じゃ無いですよね?」

「ん?死の呪い等では無いのなら死なずに呪いに苦しめられるハズだが……」

「ほうほう?ごめんなさいちょっと出てきます」

「お、おう?」

 アトラさんを置いて村から出る。誰でも良い。何か良い的は……


「キシャ―!」

「お久しぶりー!」

 最初の時もそうだったか、僕が見つけたのはスプリングボア。あの口に向かって呪いのコインを投げる。【投銭術】が発動し、威力が若干増してスプリングボアに直撃。そしてそのまま貫通してスプリングボアを倒した


「……僕、このまま呪われたままでも良いかもしれないな?」

 掌に戻って来ていた貧呪の魔硬貨。お金が手に入らなくても呪いの効果で手元に戻ってくるお手軽遠距離用武器になるんなら僕としてはある意味この呪いこそ大儲けの代物かもしれない



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― 新着の感想 ―
[良い点] なんにでもポジティブなのは読んでて気持ちが良いね。
[一言] 投銭術は投げる金額が多い程威力が上がりますが...この硬貨っていくら分なんでしょうね? 呪いで消えた分金額が増えたら面白そうだけど流石に強すぎるし経済回らなくなっちゃう
[気になる点] どうせなら入手予定の金額の分、呪いが増して魔力が強化され、威力が上がっていったら……あれ?解呪しない方が強いのでは??
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