メモを渡す
「やっぱり、金属を扱うには相応の力が必要になるんですねぇ……僕には鍛冶が向いてないのかもしれないな……」
「ふんっ!だろうな。お前のような非力そうな奴ではこの金属を扱う事は無理だろうな!」
ミスリルが特別な存在なだけで、普通の金属や特別硬い金属なんかは僕が打つ事を否定するだろう
「力が無ければ鍛冶など出来ぬわ!」
「そんな事は無いと思いますけど……普通の鍛冶は僕には無理だと分かりましたね」
「ふんっ!」
「ふむ……君、ひょっとして何か打った事があるのかい?」
エルフの方が僕に聞いてくる
「一応ありますが、それよりもまずはあの金属がどうなるかだけ見させてください」
「そうだ。貧弱者!見ておけ!ワシのグランタイトが美しい剣になるその様を!」
ガンガンと金属を叩いて、熱々の金属が剣の形になっていく。やっぱりこの人……腕は確かだ
「凄い……調理道具を作った時と全然違う……【アダプタン】」
叩いている金属も熱しているのにかなり硬そうだし、それに、ここの炉……現世の炉よりもかなり高温な気がする。ちょっと素で耐えるのもキツイから【アダプタン】で体をこの場に慣れさせないとキツイ。幽霊だからこういう温度に対して耐性があるのかもしれない。そう考えたら幽霊が剣を打つってある意味合理的なのかもしれない
「はぁぁぁ!」
気迫を感じるハンマー捌き。凄い……さっきまでしょぼいとか思ってたけど、今のこの人からはそんな気配は微塵も感じない。1職人として、材料と正面から真剣に対話している様にも感じる。これが職人……さっきの態度も自分が鍛冶師としての矜持があるからなんだろう。納得だ
「どうだ!これで完成だ!」
「これが、貴方の作った剣なのですね。これは確かに強靭な剣かも……」
これは中々壊れなさそうな気がする
「何だ?持ってみたら良いじゃないか」
「……じゃあ、持ちますよ?」
あの事を言っても良いけど、ここは見せる方が早いだろう
「やっぱりダメか。すみません。こういう体質みたいな感じでして」
「何だその体質は……剣が弾かれるってどんな体質だ?」
「「「「ほう?」」」」
とりあえず何とかなったかもしれない
「何か武器とは相性が悪いみたいで……」
「不思議な事もある物だ」
「面白い体質ナノネー」
「武器が使えないのは勿体ねぇなぁ……」
「若い奴には色々とあるんだな」
とりあえず、一旦剣の話は落ち着いたかな
「あ、一応僕が作った物を見せるって話でしたね。これです」
とりあえずミスリル調理セットを見せる。さっきのを見せられると自分が作った物を見せるのが少し恥ずかしいな
「ほほぉ、これはこれは……」
「素晴らしい一品だな」
「な、中々良いモン作れるじゃねぇか……」
「これが武器だったらもっと素晴らしかったな……」
「かなりの出来ナノネー!」
一応、これは認めてもらえてるのかな?
「そういえば、何か情報を入手してここまで来たと言っていたね」
「あぁ、そうです。えっと……このメモなんですが。ヴァルカンの愛した金属達という本に隠されていたメモなんですが……貴方達であれば見せても問題無いかなと」
言い方は悪いけど、既に死んでいるこの人達であれば、この情報を伝えても良い気がした
「ヴァルカン……鍛冶の神か」
「隠されていた……これは、確かに隠しておかないとマズいなぁ……」
「コレは……確かにまだ生きてる人達にこの情報はマズいノネー」
「これを使えばもの凄い武器が作れそうな気がするな……」
「ワシの見つけたグランタイトが更なる進化を……?」
色んな考えがあるんだろうけど、あの人、自分が見つけたらしい金属に対して並々ならぬ思いがあるみたいだな……
「それで、どうしたいんだ?」
何となくエルフの方がここのリーダーっぽい気がするな
「そうですね。自分用のスコップとか作りたいなって思ってて……」
「「「「「スコップ?」」」」」
「はい、武器は無理として、色々考えた結果として、様々な機能を持たせたスコップを作ってみようかなって思ってまして」
「スコップだぁ?こんな世界をひっくり返しちまいそうな情報を握って、作りてぇのがスコップ?ハッ、笑っちまうな」
「むー、バカにしてますね……」
まぁ、この人はバカにしてくると思ってたけど、これから作ろうとしている物をバカにされるとちょっとムカつくなぁ?
「どういう物を作ろうとしているか、設計図とかはあるのかな?」
やっぱこのエルフの方は僕の話を聞いてくれるみたいだな。言われっぱなしなのも癪だし、ここはちょっと考えを形にするべきかもしれない
「えっと、じゃあ今から書いても良いですかね? ずっと1人で作ろうと思ってたんで図に起こそうとは思ってなかったんで」
「今の若いモンがどんな物を作ろうとしているのかも知りたいからやってくれ」
「面白そうだから描いて見せてみるノネー」
「武器に応用出来るかもしれないから是非見せてくれ」
「けっ、好きにしろよ……」
一応4人の許可を貰ったって事で、設計図を描いて、見てもらおう。もしかしたら、アドバイスとかを貰えるかもしれない。出来るだけ綺麗な設計図を描いてみよう




