鍛冶の神の本
「鍛冶、鍛冶、鍛冶の神様の本……」
戦の神とか、知識の神とか、生を司る神とか、色んな神様が居るみたいだけど、今僕が探しているのは鍛冶の神様の本だ。申し訳ないが、他の神様の本は今はどうでも良い
「意外とありませんね……まぁ、あまりここで鍛冶の本を読みたいという人は居ないでしょうから、見つかり難くても仕方のない事なのかもしれませんが」
「うーん……魔法学園だからって鍛冶の神様の本の話が無い事は無いと思うんですけどね?」
もしかすると、神様由来というか、神様と契約する事で使える魔法とか有るかもしれないし、色んな所から学園に人が来ると思うから、特定の神の情報だけ本棚に置かないなんてかなり危険思想な神でなければ無いと思う
「ヴァルカンの愛した金属達……これか?」
何故だか分からないけど、本棚の中にあったこの本が僕が探し求めていた鍛冶の神の本な気がする。もう、金属達と書いてるし、これで違ったとしても何かしらの情報は掲載されているだろう
「先生。鍛冶の神ってヴァルカンって名前で合ってます?」
「おや、見つけたみたいですね。そうですね。鍛冶の神にヴァルカンという者は居ます」
「居ます?というと複数人居るんでしょうか?」
神様って大体1分野に1人(柱)じゃないのか?
「基本は1柱ですが、地域によって呼び名が変わったり、似たような物でも若干担当している物が違ったりする事で、例えばですけど、戦いの神が数柱居たりしますね」
なるほど、そういう事で神様が何人居ても大丈夫!的な事になってるのか。ギリシャ神話だったり、北欧神話だったり、このゲームだけの神様だったり、色んな神様が後から現れても、そういう理由なら無理なく追加とか出来るかもしれない
「なるほど、まぁ鍛冶の神様の本で、こういう名称なら求めていた情報が書いてあるかも!」
席について本を開く。どんな事が書いてあるんだろう
『 鉄 あぁ!素晴らしき鉄!これ程までに使いやすい金属は中々無い!鍛冶を始めるつもりならまずはこれから触れると良い』
「……」
『 金 丁寧に扱う事で更に輝く黄金!武器には不向きかもしれないが、魔力に対する適性は意外と高い。抱いて寝たい』
「……」
『 オリハルコン 名前も良い。武器への適正も良い。素晴らしい硬さでもはや抱いて寝たら絶ちょ……』
「この本、大丈夫か……?」
自然と本を閉じてしまったけど、間違ってないよね?この本大丈夫か本当に心配になる。この本こそ禁書指定されててもおかしくないんじゃないか?
「とりあえずもう少し見てみようか……」
なんだかあまり良くない様に見えるけど、情報はあると思うからもう一度読もう
『 鉛 コイツは金属だが、かなり柔らかい。何ならベッドとして使える。寝るのに丁度良い』
「鉛で寝るとかマジか?もの凄く体に悪そう……神様だとそんな事ないのかな?もし、金属の上で寝るとするなら……錫かな?」
錫の上で寝るのもかなり体が痛そうな気がするけど
『 ミスリル 軽くてそれなりに硬くなる。魔力がある奴にとってはこの金属が扱いやすいだろう』
なんか雑な説明になったな……鍛冶の神様的にはミスリルはあまり良くないのかな
『 フォグタイト 軽すぎて鉄雲なんて言われてる。ただ脆いからあんまり武器とかに向かない。死ぬ気で大量のフォグタイトを纏めれば中々の硬さになる』
ほほぉ、新しい金属の情報だ。そんな金属もあるのか。知らない金属の情報が入ってきたからやっぱりこの本の情報「だけ」は良いかも
「ん?なんか、この本……」
本を読み進めて色んな金属の名前だったり、寝たり、噛んだりするとどうだこうだと書かれている所を流し読みしていたら、何となく、本の表紙の内側部分に何か入ってる様な感覚が指先にあった
「これは何か入ってるのかな……」
うーん、気になるな……この中に何か入ってるのかもしれないし、入ってないかもしれない。ここを切って開けてしまったら多分後戻り出来ない。ルクレシアさんに怒られる前提で開けるか。それとも……
「あ、先生。糊とか有ります?」
「糊?もしかして本を破っちゃったのかい!?」
「いや、まだ破ってないって言うか、これから破くって言うか……」
もうぶっちゃけてしまおう。こういう時は共犯にしてしまうに限る
「いやいや、教師として、それを聞いてはいそうですか。とは言えないよ」
「ここを見てください。ついでに触ってみてください。何か入ってると思いません?」
何か紙が入ってそうな所を触らせて先生にも何か入っていると理解させる
「確かに何か入ってそうだけど……」
「ここ、開けてみたいんですよねぇ……でも開けた後そのままにするのは良くないと思うんで、出来れば修復する為の糊が欲しいなって。因みにもう先生は共犯ですよ?」
全然そんな事は無いだろうけど、共犯と言っておけばこの先生なら断れないだろう。いやぁ自分でも悪い事やってるなぁ?
「もう開けちゃいますね。糊は早めに持ってきてください」
「ちょ!持って来るから待ってね!他の本までバラバラにしちゃダメだよ!」
凄い勢いで走っていく眼鏡先生。とりあえず、深淵触手でスッと紙が入ってそうな所に切れ込みを入れてみると本当に何か書かれた紙が入っていた。さて、これには何が書かれているかな?




