門番さん昔話
「ほ、本当ですか!?」
「うん、今日じゃ無いけどね。それじゃあちょっと行ってくるよ」
「はい!行ってらっしゃーい」
「コンコン(じゃあねー!)」「ガウガウ(じゃあねー!)」
さて、また雷属性が来るまで懐中属計の属性ガチャ回さないと
「中々来ないなぁ……」
炎とか水とか色々あるけど、雷が中々来ない。色んな属性があるのは分かるけど、必要な属性が中々来てくれないのちょっと辛いな。闇属性とかレアなの出て来ても今じゃないんだよねぇ……
「来た来た。属性保存っと」
サーディライに戻って、城に向かうまでの時間で懐中属計で雷属性を引く。懐中属計を見ていても一応【察気術】で人を避ける事は出来るし、時間を有効に使える
「よし、やってみるか」
執事服の【プリズムチャージ】で装飾品のプリズムに雷属性が溜まってるし、これで水の中に入れば体の表面をピリピリ走ってる雷が指輪に反応してくれるかな?
「さて、反応あるかな?」
水中でも体の周りをピリピリ雷が走ってるから単純にエフェクトなだけの可能性もあるけど、金属に対してこのピリピリ雷が引き寄せられる事は全然あり得る
「まぁすぐに出てくる訳は無いか。とりあえずもう少しだけ様子見してみよう」
流石にすぐに反応がある訳がない。目視で発見出来なくても、指輪に近付かないと反応が有るかも分からないし、とりあえずこのまま水中で底を這うように泳いで行こう
「にしても指輪ねぇ……門番さんって実は結婚とかしてたのかな?」
別れたから踏ん切りをつける為に捨てたとか、そういう感じなのかな?それも発見出来たら教えてくれたりするのかな
「む?」
今、雷が一か所に集まってたような?
「ここか?」
ちょっと藻が多いゾーンだけど、雷が1か所に集中した。これは……
「ほほぉ……こういう特性もあるんだなぁ」
集中した所の藻を掻き分けて見たらそこにはリングが1つ落ちていた。これが例の指輪かな?
「もしかすると他の属性を纏っていたら別の特性みたいなのが有るかもしれないな」
火属性なら暖かいとか、水属性なら泳ぎやすいとか、何かしらの能力というか、特性があっても不思議じゃ無いな
「多分白というか銀っぽいからこれが多分門番さんの言ってた指輪だよね」
プラチナと言えばプラチナっぽいし、他に見つからないから多分これだろう
「門番さーん」
「挨拶よりも先に濠に飛び込むのはどうかと思います」
しまった。そういえば声を掛ける前に濠に飛び込んでた
「すいません。それよりも、これ見つけたんですけど……門番さんのですか?」
「……!はい。これです」
良かった。どうやらあってたみたいだ
「もし、良かったらで良いんですけど、その指輪が濠にある理由とか聞かせてもらう事って可能ですかね?」
話を聞かせてもらえると嬉しいけど、どうかなぁ?
「つまらない話です」
「あ、話すのが辛いなら別に聞きません。反対側のペンダントを探しに……」
「つまらない話です……」
なんか、その場から立ち去ろうとしたらガシッと腕を掴まれてもう一度言われた。そしてなんか回想にでも入る感じでちょっと上を向いて会話を続ける門番さん。自分でつまらない話とか言いながら絶対聞いて欲しいやつじゃん……
「昔、とある超絶可愛い町娘が町一番のイケメンに告白されました」
「はぇ~」
その話の導入でもう大体何があったか分かったけど、ここで「もう良いです」とは言えないし、まさかとは思うけど、その「とある超絶可愛い町娘」とは門番さんの事か?あまり抑揚の無い感じで超絶可愛いとか言うの面白いな
「そのイケメンと超絶可愛い町娘がくっ付いた事でその町の男女が3日は泣いたそうです」
「はぇ~」
無駄補足情報入ってきたァ!これは門番さん盛り上がってきたかぁ?
「そして、そのイケメンと町娘が結婚となり、結婚指輪の交換。そして誓いのキス……という場面で教会に女性が1人入ってきました」
「はい」
これはちょっと気になってきた
「わた……その超絶可愛い町娘とは違い、その女性は美人系。そして何より胸が大きかったのです」
「うわぁ……」
今完全に私って言いかけたな?そして胸の大きさについての言及が……
「更にその女性はそのイケメンと幼馴染……」
「うわぁ……」
そのタイミングで幼馴染の襲来……多分男女が逆な気がするけど、これは……
「その男は胸の大きい幼馴染を選んで別の町に行きました」
「……」
完全に予想だけど、その男。教会に来た幼馴染の胸をチラチラ見てたんだろうな。これだけ門番さんが胸に関して強調するのはそういう事だろう。決して、門番さんのチェストが細身とかそういう事では……
「その後。失意の超絶可愛い町娘は恥ずかしさで町には居られず、旅に出て、1人の綺麗な女吸血鬼と出会いました」
「ほうほう?」
まぁ、僕もそんなに注目されて、フラれたみたいな状態になったら寝込むか、自分の事を知らない町に行く選択をするのは分かるかも。それのお陰でリリウムさんと知り合ったのか
「その方に拾われて、仕事として城の門番になった時に、自分の指に残っていた男から貰った結婚指輪をケジメとして捨てました」
「出会いと別れのドラマチックな話でしたねぇ……でも、それを拾いに行かせたのは何故なんでしょう?」
今の話を聞いていたら、僕に指輪を拾いに行かせた理由は何だろう?
「最近、欲しい物があるのですが、高いので、昔捨てた指輪を売れば良い金額になるかなと思いまして」
「……」
すっごい理由だった……




