指輪を探すなら
「見当たらないなぁ……どうしよう。またアンドロマリウスさんを頼って……いや、そもそもアンドロマリウスさんが水中でも物を探せるかどうかは分からないな」
悪魔とはいえ、水の中でも平気とは限らない。流石に僕も友達に水の中に顔面を押し付ける様な真似はしたくない
「人に頼る前にまずは自分でやろうか。アンドロマリウスさんには、本当にどうしようもなくなった時に頼んでみよう」
あの人なら出来るからすぐにお願いする。ではなく、自分で最大限努力してからそれでもダメだったらお願いしよう。これからも探し物をするクエストとかは出てくるだろうけど、その度にアンドロマリウスさんに頼んでいたら僕の物を探す能力というか、気力も無くなってしまうだろう。出来る人を頼るのは良いかもしれないけど、自分がその努力をしなくて良いとはならない。お金を稼げるから美味しい物がお店で食べられるとしても、料理のやり方を自分が知らなければ、自分では作る事が出来ないというのはもう見てる。だから今回の探し物もアンドロマリウスさんをすぐに頼るのではなく、自分の力でまずは探そう
「待てよ。一旦上がるか」
流石に方向を教えてもらったとしても、これは流石に難しい。門番さんに一度話を聞いて、その時の状況とか覚えていないか聞いてみよう
「すみません。一つ聞いても良いですか?」
「何でしょう?」
「指輪を投げ込んだ時って全力でした?それともポイって感じで投げました?」
「全力では無かったと思います。なので、もしかすると橋の近くかもしれません」
「なるほど、了解です。じゃあもう一度行ってきます」
そういえば、呪いのアイテムは僕から離れても勝手に戻って来るよな……で、凶具で【激情噴出】済みなら会話も出来るから戻って来るタイミングも調整可能か?
「ストリ、今から水中での軌道を知りたいから一度、君を水の中に落とす。僕も一緒について行くから、底に着くまで僕に戻るのを待機する事って可能かな?」
「えー、まぁ出来るけど……」
「やってくれたらまた磨くよ」
「しょうがないわねぇ?ちゃんと綺麗に磨くのよ?」
交渉次第でこういう事も可能になるか。これで水中での指輪がどんな感じで落ちていくか分かるから少し探索範囲を狭める事が出来そうだ
「よし、それじゃあ行くよ」
水中で色欲の艶環を外す。すると結構素直にそのまま下に落下していく。追いかけて下に潜って行き、底に着いた時、若干の藻のような物に埋まった。なるほど、これは闇雲に探しても見つからないかも。藻が指輪を隠していたらかなり探しにくい。しっかりと目で追っていたから色欲の艶環が何処に落ちたか分かったけど、これで既に落とした指輪を探すとなると中々に骨が折れそうだ
「オッケー」
「こういうのはあんまりして欲しくないわ」
「ごめん。でも、どうしてもストリにしか出来ない事だったから……」
「まぁ、私にしか出来ないって事なら仕方ないわね!」
よしよし、多分機嫌は悪くはなってないと思う。とりあえずこれで指輪を探すのが難しいのは分かったから、後は橋のすぐ近くから探していけばその内見つかるだろう。でも、藻の中に隠れてるとすると厄介だな……ちょっともう少しだけ話を聞いてみるか
「度々すみません。指輪ってどんな材質だったかとか、何か覚えている事が有るなら教えてください」
「確か、プラチナのリングです」
プラチナか。指輪と言えばプラチナかゴールドみたいな所な気がするけど、まぁ木製とか、隕石から作ったとかで無いのであれば、探せるかもしれない。そうだ。昔、父さんと母さんが空港のゲートで引っかかっていた。あれは確か、結婚指輪が反応してたハズ……それに小学校の時に夏休みの課題で誰かが発表してた金属探知機。何だっけな……コイルを作って電気を流すと磁気が発生するけど、金属があるとその波長に乱れが出るからブザーが鳴るとか何とか書いてた気がする。難しい事までやらせるのかどうか分からないけど、多分、抵抗器とか変換器とかは考えないとして、銅線のコイル、音を出せる何か、電源の3つがあれば簡易的な金属探知機になるんじゃないかな?
「ごめんなさい。一度戻っても良いですか?」
「急ぎでは無いので構いませんが……」
「分かりました。一度失礼します」
一旦空島に戻るついでにトーマ君に連絡だ
『トーマ君。ちょっと頼みたい事が有るんだけど、今良いかな?』
よし、これでオッケーと。空島に戻ろう
『返信遅くなりました。何でしょう?』
15分程経ってから返事が来た。忙しかったかな……
『忙しかったら後でで良いんだけど、銅線って作ってるかなと思ってね』
あくまで個人的なお願いだからトーマ君の邪魔をしたらいけない
『銅線ですか?一応作ってますけど……何かに使うんですか?』
マジか!これはチャンス来たかも!
『ちょっと電子工作的な事が出来るか知りたくてね。今空島に居る?』
『商談が終わったので今から向かいます。にしても電子工作ですか!凄いですね!』
『上手く行くか分からないけど、トーマ君にも協力してもらえれば、嬉しいなと思って声掛けたんだ』
『すぐに行きます!』
よーし、このファンタジー世界でなんちゃって電子工作が上手く行くか試してみようか!




