飴とキャラメル
「よし、これだけあれば良いかな」
残ってた小麦粉を全部使う位の勢いでクッキー生地を作って、師匠に渡すとすぐに寝かせ作業が終わる。生地を一旦返してもらい、麺棒で伸ばして、厚さを均一してモルガ師匠に返すと、魔法によって生地から色んな形のクッキーがポコポコ出てくる。見た目が面白いなぁ
「さて、べっこう飴の感じで良かったよな」
砂糖水を煮詰めて、イチゴとかブドウの周りに纏わせて冷やす事で出来るフルーツ飴。リアルだったらあんまり日持ちしないけど、ゲームだし、インベントリに入れておけば多分大丈夫だと思う。日持ちしなかったら……まぁ目の前の人が何とかしてくれるか
「よーし、それじゃあじっくりと……」
「ね、ね、ハチ君?それグツグツ言ってるけどかき混ぜなくて良いの?焦げちゃうんじゃないの?」
「これは、まぁ混ぜても良いんですけど、綺麗な飴にする為には混ぜない方が良いんですよ。クッキーよりちょっと繊細な火加減が必要になってくるからこれは僕がキッチンでやります。ゲヘちゃんはクッキーの方をよろしく」
火加減の調整は口で伝えるよりも自分の手元で操作出来る方が良い。ゲヘちゃんにはクッキーに集中してもらおう
「ワカリマシタ」
ゲヘちゃんとモルガ師匠にクッキーを作ってもらっている間にフルーツ飴を作っていく。ミスリル串で適当にフルーツでバーベキューみたいな感じで刺して飴を浴びせる形でフルーツ飴を作っていく。これで何とかなるだろう
「余裕があったらキャラメルとかも作ってみようかな?」
でも、砂糖の消費が多いんだよなぁ……そうだ!
「おーい、ウカタマ」
「呼んだかー!」
おかしいな。パンドーラで呼んだはずなのにすぐそこのドアが開いたんだけど?
「ウカタマ。えーっと、砂糖って何から作れます?」
砂糖と言えばサトウキビかてん菜だろうけど……ゲームの中だとどうなるんだろう?
「一般的なのはサトウキビかビートだねぇ」
多分現実と同じ扱いかな?でも、一般的?
「その話しぶりから察するに他にもあるんですか?」
「あるよー。それとは別に珍しいスクラロの実っていう。砂糖よりずっと甘い物が取れちゃう木もあるけど……」
「スクラロの実……それってどれくらい甘いんです?」
スクラロースか何かかな?人工甘味料みたいな名前っぽい
「普通の砂糖に比べたら100分の1もあれば充分過ぎるくらい甘いよ」
砂糖より甘い……やっぱり人工甘味料では?でも、実って言ってるし、自然の物か……
「それって木ですかね?」
「おっとっと、ハチ君。流石にスクラロの木を増やすのはダメだよ。スクラロの実って色んな国で栽培は違法扱いなんだよ?」
「それは流石にマズいですね。まぁ出回ったら砂糖の価値が完全に崩壊するか……」
自然にある物を採取するのはセーフなのかな?栽培はNGか
「スクラロの実は木1つに実が1個しかならないし、採ったら木は枯れちゃうから採った物をギルドに持って行くとか、城に持って行くなら凄い金額で買い取って貰えるだろうけどね。まぁハチ君には関係無いか」
「流石に違法な物を栽培はマズいですね。砂糖の大量生産か、色々作るとなると、代わりになる物も欲しくなりますね」
「まぁハチ君が砂糖がどうしても欲しいのなら、私にもそれを分けてくれれば……」
「はいどうぞ」
ウカタマが言い終わる前にフルーツ飴を渡す
「んめ~。よーし、ウチでも砂糖作るかぁ」
ウカタマにフルーツ飴をあげたら、自分の所で作るという判断に至ったみたいだ。こっちに回して貰えるかなぁ?
「ウカタマ。砂糖を僕の方にも回してくれるなら、キャラメル作ってあげるよ」
「うし、まかせんしゃい!」
キャラメルも作らないとなぁ
「やはりこちらに来ていましたか」
「げぇ!飯綱!」
あれま、飯綱さんがウカタマを追いかけてきたみたいだ。そうだ
「飯綱さんいらっしゃい。これ、良かったら食べて」
「これは……飴ですか。ん!パリパリしたと思ったらその中から果物の甘味が……ハチさんの作る料理は本当に美味しいですね!」
「……!」
無言で僕にこっそり親指を立てて「ナイス!」と言わんばかりのウカタマ。これなら砂糖は大丈夫そうだな
「お菓子の模索的な事をしててね。作りたい物は決めてるんだけど、人手が足りないから飯綱さんも手伝ってくれると助かるよ。冷蔵庫から牛乳とバターを出してくれるかな」
「分かりました」
つまみ食い禁止令の為、モルガ師匠とウカタマには冷蔵庫を開ける権利が無いけど、飯綱さんにはあるからキャラメルを作る為に牛乳とバターを冷蔵庫から出してもらう。フルーツ飴もまだ作ってる最中だし
「じゃあ、飯綱さん。この串に刺したフルーツにこの飴を掛けてもらって良いですか?掛け終わったら串抜いちゃって良いんで。キャラメルを作るのは僕がやるんで、これお願いします」
「掛けて抜くんですね。分かりました」
まぁ飯綱さんなら任せても問題無いだろう。これで、キャラメル作りに集中出来る。飴が無くなったら深淵触手で作れば良いし、キャラメルの方も火に掛けながら混ぜ続けるだけだ




