シスターユイ
「そうでしたか。良ければ子供達と遊んでいただけませんか?」
「それは勿論。子供達と交流をさせていただけると私もありがたいです。私の所の教義では子供は健やかに育つべきという教えがありまして」
こういう感じで良いかな?
「それは素晴らしい教えですね。えっと、シスター。お名前は?」
「ユイとお呼び下さい」
一応顔はヴェールで隠しているからタトゥーとか見えてないと思う。顔のタトゥーを隠す位のスキンリキッドをサッと一塗りしてからヴェールを外す。別に今は【ヴァルゴ】は使わなくても何とかなるだろう
「分かりました。シスターユイ。こちらへ」
孤児院の敷地内に通してもらって、子供達の前に行く
「この人だれー?」
「だれだれー?」
「先生達に似てるー」
「こちらの方はシスターユイ。旅のシスターさんです」
「皆さんこんにちは。今日は私と遊びましょう。鬼ごっこでも、ボール遊びでもなんでもいいですよ」
シスターならもう少しお淑やかにとかするべきなんだろうけど、そんな事は関係無い。いざとなったら教義という最強の盾があるし、ここは子供達と普通に遊ぼう
「あ、あのー……」
「あははは。はい、どうしました?」
「大丈夫ですか?そこまで激しく動かれるシスターを見た事が無くて……」
「あぁ、私は私の信じる教義を体現する為にはもっと体が動かせる様にと努力した結果です。なので心配はご無用です」
「なるほど、無理をされてる訳では無いのですね」
「はい。子供が健やかに。という事は大人もそれに付き合える位体力が無ければならない。そうする事で誰もが健やかに神に祈ることが出来ます」
子供が一番みたいな教義の後付けとしてはこれでそれなりに信じてもらえるか?もう少し押すか
「つまりその教義を体現する為には健全な肉体、健全な精神も必要になります。色々な事を許す寛容な心も」
子供達に左右に引っ張られても怒らないで答える。こういう事をして説得力を得られると良いが……
「やはり貴方の信ずる教義は素晴らしい物です。宜しければ他にどのような教えが有るのかお教えいただけますか?」
「申し訳ありません。私が学んだ教義は……言ってしまえばただの理想なのです。勿論その教えの通りに出来るのが一番ですが、金銭や立場など、障害はとても多いです。それに、私は旅のシスター。教義を広めるのではなく、自分自身がその教義を体現するべく、様々な立場の子供と遊ぶ事で子供から学び、その親等から今まで分からなかった物や様々な考えを学んでいくのです。なので、旅に出られない方にはここまでしか教える事が出来ません。そして、一期一会の出会いを大事にする為に旅の仲間を付ける事も許されていないのです」
「それは……中々大変ですね」
それっぽい言葉で何とか追及を避ける
「教義というのは最初は誰でも親しみやすい物から始まります。1つの物を信じるのも良いですが、様々な考え方の良い所だけを集めて自分だけの考えを得ると言うのも素晴らしい物かと……今の言葉は忘れてください。旅のシスターの独り言と言う事で」
「分かりました。シスターユイ」
実際、教義も何も無いから教えろと言われても困るだけなんだよねぇ……とりあえず笑ってくれてるみたいだし、何とかなったか?
「ユイねーちゃんこっち!」
「ユイさんこっちー!」
「鬼ごっこで遊ぼー!」
「すみません。子供達が待っているので」
「ははは、はい。お願いします」
よし!良い感じで誤魔化せたな!
「行きますよー!さぁ、逃げてください!」
シスター服で疾走して子供を捕まえるのは中々の光景になってる気がする
「「「きゃー!」」」
「少し、離れて見ていましたが、あの子達があんなに楽しそうなのは久しぶりに見ましたね」
「今日はせっかくですから豪勢に行きたい所ですが……」
「あまり食材を多く使えるほど余裕は無いですよ?」
「そうですね……ですが、あのシスターユイのお陰で間違いなく皆の顔が笑顔で溢れています。少しくらいはいつもより豪勢にしませんか?」
「もし、私の事を気にしているのであればお気になさらずに。子供達と遊んだら私は失礼させてもらいます」
「「へっ?」」
急に話に入ってきたらビックリするだろうな。まぁ【ジェミニ】で2人に別れてるからこそ出来る方法だ。子供達と遊びながら、もう片方で大人と会話する。これで何かしら話を聞く事が出来る
「すみません。ところで、この街で何か悪い噂について知りませんか?良い噂を聞くよりも悪い噂を聞いて、その場に近寄らないというのが今までの旅で学んだ街の歩き方でして……」
「なるほど、確かに良い噂でしたら勝手に聞こえてくるという事もあるでしょうね。そうですね……それでしたら北西方面の区画は余り近寄らない方が良いですよ」
「あそこは荒事が得意な人が多いですから……」
荒事が得意な人かぁ……情報としては求めていた物とは違うけど、ちゃんと情報は貰えた。北西の区画、行ってみるかな?
「ありがとうございます。それでは、子供達を楽しませてきます」
どっちも僕だし、鬼が2人でも関係無いよね!
 




