踏みつける者
「ほっほほー!」
ぴょーんぴょーんと跳ねる様に深淵触手のバネみたいな足でダンジョンを走っていく。これ凄いなぁ?普通にちっちゃい奴なら余裕で飛び越えられる。跳び越えるついでに手に纏わせた深淵触手はブレードみたいな感じですれ違いざまに切りつけてヘイトをこっちに向ける。僕の手足が伸びてる様な状態。バフ無しで移動速度とリーチを伸ばした状態……足がバッタで、腕がカマキリみたいな感じかな?
「おいでおいで!皆カモーン!」
死なない程度の攻撃で後ろから結構な量の銀色の敵が追いかけてきている。良いねぇ。これは練習になりそうだ!
「おっと、コイツがボスかな?」
最後にちょっとした広場みたいな所に出て、銀色のスライムに銀色の王冠を被った敵。如何にもボスっぽい感じがする
「来た来た!よし、これでやっと訓練出来るな」
どうしようか。可能な限り自分に制限を掛けたいから攻撃に使用する触手は1本。移動に1本、防御に1本で……1本は集中力を高める為に目隠しに使うか
「よし、やってみるか」
右足の深淵で移動。左足の深淵で防御、左手の深淵で攻撃、右手の深淵は目隠しに回す。一応バランスを取りながら対多数戦をやってみる事にする
「集中!」
目が見えなくても【察気術】で敵の位置、攻撃モーションを全て掴むくらいの気持ちで戦いに挑む。片足での移動だから移動の隙を狙われないように気を付けなければならない。そして、片足での防御というより受け流しをしなければならないから、バランスを崩さない為にも攻撃を受ける回数自体を減らさなければならない。それと単純に片手で攻撃するにしてもただ切り払うとか殴るだけだと雑な扱いになってしまうだろうから刺突でこう……秘孔を突くみたいなノリで弱点だけ攻撃するみたいな事が出来れば良いかな
「ボニョーン」
あの銀冠スライムもデカいからか音も鈍いな。周りの小型と1体のデカい奴……
「これなら弱い奴でも訓練になりそうだ!」
基本的な生物共通の弱点として心臓か脳だろう。小さい生物の心臓や脳をその体相応に小さくて狙うのは難しい。大型と小型が入り混じったこの状況で弱点だけ狙っていくのは訓練になるだろう
「一か所に留まらない、対象を絞らない、無理はしない……」
片足で跳ねながら移動する方法は一度止まってしまうともう一度動くまで時間が掛かるから立ち止まるのは良くない。だからどれか1体に的を絞ってしまうと、ソイツに合わせなければならないから動きにくくなるのでこっちの動きと相手の動きが合ったタイミングで攻撃するイメージで動く
「これは……よっと!」
「グワゥ!?」
移動は片足のみにしているので、立ち回りとしてジャンプで敵を踏みつける。オオカミタイプとかであれば充分踏みつけるのに適している。踏み方次第で相手を転ばせる事も可能だろう
「しょ!ほっ!はっ!」
連続で敵を踏みつけて、突き刺し、遠距離攻撃は逆の足で弾いて離脱を繰り返していく。これは連続で地面に付かずに敵を倒すというルールも追加しよう。たまに壁キックも交えてタイミングをずらしたりすれば相手も困惑でこっちの付け入る隙が出来る
「良いぞ、これは難しいな!」
難しいからこそ、やりがいというか、挑戦したくなる。相手が弱いからと雑に片付ける事は出来ても、自分の為にはならない。でも、こうして自分自身に枷を与える事で自分の成長の機会に出来る。成長のチャンスが色んな所にあっても、それを見つけられるかはその人次第。僕はこれを成長の機会にするぞ
「11!12!13!」
敵を踏みつけて地面に着地しない様に連続で倒している。相手のレベルが低いから僕の一撃で倒せているのだとしても、これは中々神経を使う。敵を倒せば倒す程足場が無くなるし、相手も警戒して来るからどうしても踏むのが難しくなってくる。だからその分やる気も出てくる
「14!」
部屋の角を使って2回壁を蹴ってから銀の兎を踏みつけてジャンプした瞬間に触手を兎の眉間に刺す
「15!」
飛び上がった僕を狙った銀スケルトンの弓矢の攻撃を足で撃ち落とし、頭蓋骨に着地。そしてジャンプしてその頭蓋骨と首の付け根に刺突
「16!」
突進をする銀猪に一度壁を経由して横からキックを喰らわせる形でジャンプして、相手が腹を見せた所で心臓に一突き
「17!」
普通サイズの銀スライムを踏みつけて、天井に向かって大ジャンプをする時に補助する様な気持ちで突き刺す
「ラスト!」
最後の銀冠スライムに向かって天井を蹴って左手のドリル触手を突き刺す
「ブニョーー!」
最後の断末魔の様な声を上げて銀冠スライムはポリゴンと化した
「よし、これで何とか今回の訓練は成功っと」
地面に足を着かずに18体倒せた。中々良いコンボだったのでは?
『称号 踏みつける者 を入手』
『踏みつける者 多数の敵を踏みつけて、連続で倒した時に入手 誰を踏み台にしたぁ!? 踏みつけと、その次の攻撃威力上昇』
何だか良いのか悪いのか分からない称号来たな……




