母親に
「ですが……」
「クマ、あっ、ベア!」
手を前に出し、制止をする。あぁそういえばこの人が足を怪我してたんだよね?アミーちゃんを探す為に怪我した足で探し回ってたのか……痛いだろうな
「ベア!ベアベア!」
ポシェットから野戦生薬(未改造)を取り出す。今から薬草を薬に変えるよりこれを使った方が早い
「これは?」
「ベア(薬です)」
「薬だそうだぜ?」
ダイコーンさんに翻訳してもらう。面倒だけどそういう設定でここまで来ちゃったからね?
「ベアベア、ベアベアベア(少し苦いけど回復薬だから食べてみてください。余り物だからお代は要らないです)」
「余ってた物だから金は要らねぇって言ってるぜぇ?あと苦ぇってよぉ?」
言い方よ……
「え?」
そりゃそうだ。そんな言われ方したら困惑するに決まってる
「ベア」
「んごっ!?割と苦いな……だが、しっかり回復はするな?」
「ベーア!」
ダイコーンさんの口に野戦生薬をねじ込み、食べても大丈夫だという事を目の前で見せる。奥さんに向かってサムズアップだ
「本当に貰っても良いのかしら?」
「ベア」
頷いて笑っておく。ここで時間が掛かっちゃうのは仕方が無い事だね。だって自分でも怪しいと思うもん
「おかあさん。このくまさんは良い子だから大丈夫だよ!」
「そ、そうなの?」
アミーちゃんの説得(?)により野戦生薬をのむアミーちゃんのお母さん
「うっ、苦い……」
苦いのは我慢してほしい。んー、これ甘い物とか何か混ぜれば味の改良する事が出来るかなぁ?その内色々実験してみるのもありかもしれない
「あれ?嘘!治ってる!」
足の傷が治ったらしく、ロングスカートから自分の足を出して自分の目で見て、手で触って傷が無くなっている事を確認している。正直見てて良いのか悪いのかとても困る状況だ。とりあえず目を逸らして隣のモヒカン頭を見て心を沈めようとしたらまさかのダイコーンさんも目を逸らしていた。見た目としては凝視してもなんの違和感も無いのに中身はかなり紳士だなぁ?
「女がみだりに肌を見せるもんじゃないぜぇ……?」
「あっ、ごめんなさい……見苦しい物を……」
「そんなこたぁ……ねぇけどよぉ?」
アミーちゃんのお母さんも中々の美形だから緊張するのも分かる。だけど世紀末モヒカンのそういう姿は何となく見たくなかった……
「ありがとー!お母さん元気になったー!」
「ベアッ!」
アミーちゃんのお礼の言葉に胸を張って大げさに答える。それによってダイコーンさんもホッとしたように息を吐き、僕の後ろに回る
「そんじゃ、無事に送り届けたし俺達は行くぜ」
「ご迷惑を掛けてすみませんでした。これ、良かったら……」
アミーちゃんのお母さんが小さな包みをダイコーンさんに渡す
「これは……匂い袋か?」
「はい、虫除けの効果があります。こんな物くらいしか……すみません」
「いや、俺にとっては最高に嬉しい物だぜ?」
「ベア?」
虫除けがそんなに嬉しい効果なのかな?
「今俺が進んでいるサーディライの街の先に出てくる敵は虫だからこれが重要になりそうだぜ」
なるほど、虫が相手になるなら虫除け効果がある物は欲しいかもしれない
「そうですか!良かった……これを作っているんですが、全く売れなくて……」
「この付近じゃ虫は出てこねぇし、そもそもこんなアイテムが売られているのも見た事が無かったな……なぁ?これは今どのくらいある?」
「え?今なら30個程家にありますけど……」
「1ついくらだ?」
「200Gです。あまり多く作れるものでもないので……」
「よし!全部買うぜ!」
「えぇ!?良いんですか?」
「あぁ、そのくらいなら余裕だ。嬢ちゃんになんか美味い飯でも食わせてやってくれ」
男前だぁ……
「直ぐに持ってきます!」
足が治ったからか、走って何処かに向かうアミーちゃんのお母さん。あの……アミーちゃんが置き去りなんですが。まぁ、もう少しくらいアミーちゃんと遊んで待って居よう
「遅くなりました!家に有った30個です!」
手提げ袋に詰め込んだ30個の匂い袋を持ってきたアミーちゃんのお母さん。名前分からないし、面倒だからこれからはマミーさんと脳内で呼ぼう
「助かるぜ。あとこれはもっと高くても売れるはずだ。だからお代はこれくらいが適正だぜぇ?」
そう言って大銀貨3枚(3万G)をダイコーンさんがマミーさんに握らせる。恐ろしいくらい高くなってるんですが……
「こ、こんな頂けないです!!」
「良いんだ。これが適正な価格だから」
お?ロールプレイじゃない話し方だ。って事はかなり本気なんだな?
「分かりました。ありがとうございます!ありがとうございます!」
感謝して大銀貨3枚を受け取るマミーさん。うんうん、これでアミーちゃんも危ない薬草集めに行かなくて済むだろう
「ベアベア?(なんでそんなに高く買うんです?)」
「それじゃあ俺達は帰るぜ(虫が出るって言ったろ?その虫の中に居るんだよ……黒光りするアイツが)」
「ありがとうございました!」
「バイバーイ!」
あぁ……苦手な人なら1000Gでも1万Gでも虫除けは欲しいって言うのも分かる。3つ目の街から先に進むのに2つ目の街に対策用アイテムがあるなんて思いつかないだろうからダイコーンさんが持って行って向こうで売ったりすれば更に高値でも売ったり出来そうだな?