貯まった貸し
「何が良いかな……割り勘にするにしてもそれなりに良い物の方を買った方が値段的にも皆の心の負担を軽減出来るだろうから……宝石とかが良いのかな?」
「ハチ?何か悪い考えしてない?」
おっと、モノ様のエントリーだ。疑わしい目でこっちを見てくる
「ごめんごめん。友達の手伝いをやると、皆僕にお礼をしたくてもお金じゃ解決出来ないから困る……みたいな事になってるから、ここで一度手伝った人達にお金を払ってもらって何かを買ってみようかなって。僕はお金を払わないけど、モノ的にはこれはダメ……かな?」
「……ダメ、じゃない」
良かった。お許しが出たぞー!
「何を、買うの?」
「そこで今迷ってて、宝石とかが良いかなって」
「そう……なら、私が選ぶ」
「あ、はい……」
え、これって、女の子に宝石を買おうとして、その代金を友達に払ってもらうとか言うとんでもない絵面になりません?
「だめ?」
「いや、ダメじゃないけど……じゃあ、何処で買おうかな……」
具体的に何を買うかまでは決めてなかったし、モノが欲しいって言うのならどこで買うかモノに選んでもらおうかな。
「最初に会った所……」
「最初……それって貧呪の魔硬貨の時の話?だとしたらセカンドラの街か。オッケー。久々に行ってみよう」
セカンドラの街に行って、何か良さそうな物が無いか見てみよう
「表の店……じゃなくて、裏道にあるお店が良いな」
表の店だったら、良い物は先に売れてしまってるだろうから、残り物を買う事になるだろうけど、裏道の店なら知る人ぞ知る名品みたいな物が有るかもしれない。パチモンを扱う店も多いだろうけど……
「じゃあモノが気になったお店に行くと良いよ。ついて行くから」
こういう時はモノの直観に任せてみよう
「あの店、気になる」
「わぉ、怪しいねぇ!これは入ってみないと!」
ボロボロで店の看板も傾いていたり、ガラスも罅が入っていたり、埃で店の奥が見えないけど、扉にオープンの札が掛かっているから営業中なのは分かる
「お邪魔しまーす……」
「……いらっしゃい」
oh……カウンターに如何にもな紫ローブの御婆さんが座ってる。これは楽しくなってきたぞ!
「……」
「……フッ」
モノが店の中に並んでいる手作り藁人形的な物とか、ブローチとかを見て、何度か立ち止まるとその度に店主の御婆さんが不敵に笑う。確かにモノが立ち止まる所の商品は何となく禍々しいオーラ的なのがほんの少し出ているから、もしかすると呪いのアイテムに近い商品なのかもしれない。が、モノは一度立ち止まるだけで、すぐに歩き出す。そして1つのショーケースの前で完全に足を止めた
「あの、このショーケースの中にある宝石を見たいんですけど、良いですかね?」
「……その中のどれだい?」
埃で外側が汚れたショーケースの中には何個か宝石がある。どれを選ぶかで売るとか売らないの問答が発生するのか?
「これ」
モノが指差したのは薄っすら青い宝石。何となくサファイアとは違う様な気がするが……
「そうだね。200万あれば譲ってあげよう」
「200万ですか。なるほど……ちょっと失礼します」
一旦店を出る。ハスバさん、ダイコーンさん、トーマ君、ロザリーさん、アイリスさんドクターも行けるかな?……交渉次第で何とかなりそうなのはこの辺か。ホフマンさんは食材関連でいつもお世話になってるから無い。キリキリ姉妹も……あの人達はその辺の駆け引きとか上手そうだし、下手に巻き込もうとしたらなんか利用されそうだから止めておくか。元勇者軍の人も交流がほぼ無いから最初にお金貸せとかやりたくない。
『皆さんにお手伝いして欲しい事……というかお願いが出来ました。必要な物が有るのですが、購入しなくてはならないので、出来れば協力してくれると助かります』
6人に協力してもらえたら1人辺り30万ちょいで済むけど……30万は結構デカいのでは?前にハスバさんの100万をぶん投げた事はあるけども……
『幾らくらいの物なんだい?』
おっとハスバさんだ
『一応ハスバさんには詳細を明かしますが、200万の宝石を入手するのに今まで皆に貯めたツケを使わせてもらおうかなと。なんか皆クエストを手伝ったら報酬云々言ってくるんで、じゃあ一回分かりやすく払ってもらうのが良いかなって』
『確かに、それなら納得だ。誰に声を掛けてるんだい?』
『ハスバさん以外に、ダイコーンさん、トーマ君、ドクター、ロザリーさん、アイリスさんですね』
『なるほど、1人辺り33万程度か。何処に行けば良いか教えてくれ』
『セカンドラです。あ、結構裏側に居るんで、店の場所を書いたマップも一緒に載せておきます』
情報をハスバさんに伝えておく。他にも「何処に居る?」情報が来たので全員に店の場所を送る
「「「「「「ハチ(君)さん!」」」」」」
「おー、皆来てくれたんですね」
「ヒャッハー!ハチに恩返しが出来るチャンスだぁ、見逃さねぇぜぇ?」
「ハチさんがお困りなら自分が頑張ります!」
「持ちつ持たれつですね!」
「困っているなら助けるさ」
「幾らですか?幾ら必要なんですか?」
「これまた凄い裏も裏の店って感じだねぇ?」
いやぁ、裏道に凄い集団が来たもんだ……




