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久々のダウン

「えっーと、だから……」

 まずは縮む部屋の中央に深淵を出す。腕に纏わせた深淵を円の形にした後で切り離し、その場に固定してみる。大事なのはイメージだ。


「よし」

「おいおい、なんだそりゃ」

 一旦セーレさんは無視だ。ここは集中


「穴が1つじゃなくて、2つで1つの役割を果たしている……」

 セーレさんは行きたい所の場所を確認したらその場に行けるって言っているけど、僕にはそれを再現出来ない。僕が再現出来そうと言えば、深淵を使う事。そして深淵の覗き穴は世界の色んな所を見る事が出来て、そこに移動も可能である事。つまりは深淵で作った穴を2つ接続する事が出来れば、そこに移動が出来る……ワープ的な事が可能になるって事じゃないだろうか?


「これで……どうかな」

 部屋の中央と部屋の隅。2地点に深淵の円を作った。でもこれだけじゃ足りない。この2つを繋がないとただの円を作っただけだ。深淵の操作で重要なのはイメージだ。

「あの穴はなんだ?」

 入口と出口だ


「何処と何処の?」

 この部屋の隅と部屋中央の


「お、おい……」

「どうやって移動する?」

 あの円をくぐって……


「急にどうしたんだよ!ヤバいって!」

()()()()()?」

 深淵の中を通る?


 その時、二つの円が繋がった


「「え?」」

 試しに円の中に触手を伸ばしてみるともう一つの円から触手が出てきた。間違いない。繋がっている


「ほ、本当に成功させたのか……」

「イメージを形にするって難しいね……」

 気が付いたら汗をかいていた。今回のは脳が疲れる奴だ


「成功したのは良いが、悲しいお知らせがあるんだけどよ……」

「分かってる。このままだと脱出は出来ないね」

 今のままだと僕の手の届く範囲に2か所に円を作ってそこを繋ぐというだけ。部屋の外には出られない。僕が今回やってみたのは僕の深淵を通るトンネルを作るという事。どうやっても移動をする為には距離の概念が出てくる。旅人の泉にしても、ニクリウスさんの作ったゲートにしても、ウカタマが作った門にしても、距離の概念を破壊する為には必ず入口と出口。そしてそこを通る「近道」が必要になって来る。その入り口と出口をくっ付ける接着剤とトンネルの役目を深淵が担っている……ならば


「【アビスフォーム】」

「うぉっ!?」

 おっと、変身した時の余波でセーレさんをちょっと飛ばしちゃったが、気にしない。大事なのは深淵を少しでも多く扱う事。アビス様と同調出来れば更に多くの深淵が扱えるはずだ


「【淵伝】」

 小さくなっていく部屋で壁に張り付きながら離れた位置に深淵を出して円を作って円同士を繋げるイメージを強くする


「マジで人間技じゃねぇぞ……なんで人間があの説明だけで自力で出来んだよ……」

 移動距離の分だけは確保してくれるのか、狭くなる部屋も前後は縮まなくなったけど、横幅が畳くらいのサイズになってきた。2人並んで立てる状況じゃなくなるのも時間の問題か


「もっと、もっと遠くまで……」

 狭くなる部屋の中だけではダメだ。目では見えないその壁の先へ……


「【察気術】」

 部屋の外を【察気術】で認識する。目で見えなくてもニャラ様の反応を感じる。さっきは僕達がこの部屋に飛ばされたと思ったけど、この小さくなる部屋が僕らの周りに生み出されて閉じ込められたみたいだ。届くか……いや、視えるなら行ける!


「【淵伝】!」

【察気術】で部屋の外に深淵が出たのを確認した。さっきまでは空間として阻まれていない状況だったからそのまま穴を通っても問題無いだろうと思っていたけど、今回は違う。部屋の中から外へ。確実にその壁を越えなくてはならない


「頼む!繋がってくれ!」

「繋がれ……!」

 幾ら頼んでも深淵の円がもう一つの円と繋がる事は無かった




「んー、流石にこれはハチでも無理だったんじゃない?」

「手の届く場所であれば繋げただけでも人としては規格外だ。だが、隔離された所からは流石に無理だった様だな……」

「ダメかぁ。でも流石にこれ以上の逸材をまた探すとなるとそれこそまた時間が掛かりそうだねぇ?」

 残念に思いながら部屋を更に小さくしていく。もう物置程度のサイズになってしまった部屋を一思いにクシャっとしてしまおうか悩みながらも徐々に小さくする事は止めないニャラートホテプ


「アイツならあるいはと思ったんだがな……ん?」

 流石にこれはどうにも出来ないかと思ったその時、部屋の中と深淵(自身)に大きな力を感じる


「この力の高まり……まさか!?」

「え?おいおい!ハチくぅん!君って奴はぁ!」

 真っ暗な深淵に小さな罅が入る。そして、その罅が内側から叩き割られ、中から赤い手が出てきて空間を破いた


「はぁはぁ……理屈で、考えちゃいけないんですね。繋ぐって考えるから、隔絶された所には飛べない……行きたい所まで空間が邪魔ならその空間って概念をぶっ壊すイメージをしてみたら、行けました……!」

 破かれた隙間からハチとセーレが歩いて出てきた


「ふっ、ふははははは!」

「ははっ!はひゃひゃひゃ!これでまだ限界に到達してないだって?君は何処まで楽しませてくれるんだい!」

「ハチ、お前本当にとんでもねぇな……」

「すいません……これ、ちょっとまだ使いこなせてないですね……1回やったら立ってられないです。【解除】」

【アビスフォーム】を解除して状態異常じゃないかチェックしてみたけど何も改善されない。高熱を出した時みたいにぼーっとする。最後にちょっとだけセーレさんにお願いしよう


「セーレさん。ルクレシアさんの所まで送ってくれるかな……多分今日はもう無理」

 2人に感謝の言葉も言えない。久しぶりに続けられないくらい脳が疲れた……



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― 新着の感想 ―
[一言] なんでワープのスキル覚えようとしてたのに空間破壊方法習得してるの???
[一言] その深淵をぶち壊す!? まーたキャパオーバーぎりぎりの事をやっちゃってまあw 今度はニャル様じゃなくてアビス様の腹から出てきちゃったw ハチ君は二人がお腹を痛めてでてきた子?
[一言] 手の届く範囲にワームホールを作れるだけでも防御能力としては破格なんだよなぁ……
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