困った護衛対象
「えぇ……」
こっちは隠れて護衛してるから言えないけど、なんでそんな合法的に攻撃を受けに行くんですかねぇ?
「ちょっと……行ってきます」
「あの、ハチさん。私も行った方が良いですか?」
「えっと、そうですね……ルクレシアさんは客席に残っていてくれますか?万が一闘技場の中に閉じ込められた場合に備えて客席に信頼出来る仲間が居てくれるのは心強いですから」
「はい!任せてください!」
一応客席に攻撃が行かないようにバリアが張られるけど、そのバリアを悪用されて出られないとなった時に客席から何とかしてもらえる様に客席で控えていてもらえると助かる。仲間と一緒は勿論だが、仲間が離れていても居るという事が強いんだ
「さぁ行きましょう!」
「待って下さいユリエール様」
正直護衛の方ももう少し気を張った方が良い。名前しか知らない相手や、後ろからの襲撃の際、ピンク髪の対象が2人だとどちらが対象か見ただけでは分からないというアドバンテージがあるのに、今ので少なくとも僕にはどちらがユリエールさんでどちらが護衛か分かってしまった
「もう少し警戒して欲しいなぁ……」
可能であれば偽名で呼び合うくらいして欲しい所だ。少なくとも1度は命を狙われてるし……まぁそれは気が付いてないんだろうけど。とりあえず2人の後ろを少し距離を空けてついて行って闘技場に入ろう
「私なら10人は行けるな」
「俺は15人行ける」
「いや、やはり20人は軽く倒せる」
「30人相手でも負けるつもりは無い」
学生の騎士と魔法使いが倒せる人数オークションをしてるけど……それ絶対自分のキャパオーバーだからやめておけ
「さぁ皆様お待たせしました!それでは、5人ずつ、騎士か魔法使い。好きな方をお選びください!」
自分が相手出来る人数オークションを遮り、5人ずつと決めたアナウンス。今回の趣旨としては「攻撃を避ける」だからそのオークションほぼ意味無いよなぁ
「「じゃあこっちで!」」
そして、なんで護衛が対象と別れてるんですかねぇ?ユリエールさんは魔法使いで、護衛の人は騎士の方に行った。とりあえず僕は魔法使いの方に行くか
「はぁ!」
「「「「「うわぁ!」」」」」
「【グランドウェーブ】」
「「「「「ぐはぁ!」」」」」
騎士の方は振るった剣から衝撃波のような物を放ち、魔法使いは地面を波の様にうねらせて人を弾き飛ばしていた。これは武器に細工して一応は死なない様にしてあるのかな?
「そうだな。アレを使ってあげたい所だけど……」
今のを見ると安全の為にユリエールさんに【キャンサー】を使いたい所だけど、今回の「攻撃を回避する」という事であれば、【インヴァル】程的確な魔法は無い。それをユリエールさんに使えば確実に攻撃を回避させる事が……待てよ?ここで攻撃を回避させたらユリエールさんが目立ってしまうだろうからここは失敗した方が良いのか?さっきのを見るに、攻撃を喰らっても死ぬ事は無いと思うけど、安全を考慮するなら防御バフをユリエールさんに積めばいい感じに他の人に溶け込むんじゃないか?
「リーヌ頑張って!」
「はい!」
騎士と魔法使いの並びの差でリーヌと呼ばれた護衛さんが先に挑戦する事になったが……一応ハーモニカであっちの方も補助出来るけど……護衛対象と別れるのは良くないからここは戒めの意味も込めて補助は止めておこう
「はぁ!」
「くぅっ!」
周りの人達はすぐに衝撃波で飛ばされたけど、護衛の人は腰から取り出した剣で衝撃波を防いでいた。あれはセーフ判定なのかな?騎士の人も攻撃を止めてないから本当に避けるまでって事なのかな?
「ぐはぁ!」
遂に防ぎきれずに衝撃波を喰らい、吹き飛ばされるリーヌさん。まぁ回避しろって言ってるのに剣で防いでる時点でね?
「衝撃波が早くて動けませんでした……」
なるほどね。反応出来ずにガードしたは良いけど、それ以降は衝撃波で固められたのか。そりゃ動けない訳だ
「大丈夫でしょうか……」
ユリエールさんが独り言っぽく喋ってるけど、どうするかなぁ……一応秘密の護衛だから接触は避けるべきだけど、それとも、これは僕に話しかけてるんだろうか?
「多少の怪我はあるかもしれませんが、彼女も喋っていますし、死ぬ事は無いでしょう。それよりもまずはこちらの心配をするべきでは?」
「あ、それもそうですね」
こっちも列が消化されて僕達の番になった。効果の発動を考えるなら今使っておくか
「あれ?何か笛の音みたいなの聞こえませんか?」
「あぁ、何か聞こえた気がします。これが客に対してのセーフティなんでしょう」
「なるほど……」
適当な事を言って誤魔化す。これで僕もさっきの攻撃に合わせて飛べば丁度良いかな。ベルトのパワーを使えば余裕で回避出来ると思うけど、攻撃を喰らわないと僕も目立ってしまう。見てる限り威力もそこまで高くはないから僕のMINDの値なら致命傷にならずに済むだろう
「貴方……」
「模擬試合お疲れさまでした」
明らかに魔法使いの目付きがさっきまでと変わった
「私、貴方の事嫌いなのよ……」
ポン君による強化された聴力によって聞き取れたけど、この2人喧嘩してるの?絶対力加減ミスるやつじゃん……




