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結婚

後日さっそく公爵様の両親に会うことになった。



2人は私を見るなり驚きに満ちた様相で、徐々に嬉々とした表情に変わった。


「まあ! なんて綺麗な子なの!」

「本当に紫の瞳なのか!!」


そして公爵様のお母様は言う。

「ああ、ようやく良い相手が見つかった。

絶対に、この馬鹿息子の逃れられない相手がね?

まさか王族の色をもつ女性を、拒否することはできないでしょう。

王族に対する無礼に値しますからねえ、フフフッ」


なんなく受け入れられた。

特に公爵様のお母様……、お義母様と呼んで欲しいと言われたので、お義母様は、とても好意的であった。

お義父様も喜んでくれた。

私は安心した。

メイドとの子どもであり、つい最近まで平民であった私は、いびられることもあるかもしれないと思っていたのだ。


「それでは早く結婚しなくてはね。

お前が何かしら結婚しないための言い訳を見つけて駄々を捏ね始める前にね?」


お義母様の言葉に公爵様もとい、ルーズベルト様は苦い顔をする。


「しかしこの瞳を持つのだから、結婚の前に陛下に見てもらった方が良いでしょうね。王族の色である紫を偽称ではないかと疑いをもたれるのは良くないわ。

できる限り早く、陛下との約束を取り付けるわ」


お義母様は后妃殿下と昔ながらの友人らしく、何とか融通を利かせると言った。

またルーズベルト様も宰相という立場上、陛下には報告しておい方が良いとのことだった。



◇◇◇



それから3日後には、私は王宮の客室で、陛下と王妃殿下の前に座っていた。


ちょ、お義母様、早い、早すぎるよ!

というかまさか、私の人生で王様と王妃様と会うことがあるだなんて…………。


ここにはお義父様、お義母様、ルーズベルト様、伯爵様もといお父様が一緒に来ていた。


「謁見の間でもないのだから、かしこまらなくても良い。緊張しなくて良いぞ」

陛下はそう言う。


「それにしても、本当に紫の瞳なのねえ」

王妃殿下がそう言う。


「アウロフィッツ伯爵、貴殿の娘で間違いないのだな?」

陛下がお父様にそう聞いた。


「はい、間違いありません」


再びお父様と私が親子であることが証明できる魔道具をつかう。

オレンジに染まると、陛下も王妃殿下も満足そうに頷いた。


一応、陛下と私も魔道具で血のつながりを確かめることになった。


陛下は言う。

「しかし遠い血の繋がりであるし、もしかしたら黄緑にもならない可能性があるな」


そしてお互いに魔道具に血を一滴垂らすと、しっかりと黄緑色になったのであった。


「「おお!」」

ルーズベルト様以外から、小さな歓声が上がった。


「うむ! これでリリアナ、お前は王族の血を引いていると証明できた」

陛下は満足そうに大きく頷くと、断言した。


陛下はしみじみといったように言う。

「ルーズベルト、やっと結婚できるのだな、良かったなあ」


王妃殿下も満面の笑みで言う。

「ええ、私たちはずっと心配していたのですからね。

それにこんな綺麗な子と結婚なんて良かったのだわ」


ルーズベルト様は何とも言えない顔をしている。

しかしそんな顔も陛下と王妃殿下には可笑しいようだった。



◇◇◇



次の日には、お義母にウェディングドレスの試着をさせられ、そして1週間後には、急すぎる極々内輪だけの結婚式が終わった。


だからお義母様ああ、早すぎるってええ!!


――――

――




――――ああ、もう、訳が分からないわ。



目が回るとはこういうことなのね。

記憶が曖昧だわ。

何か失敗してはいないわよね。



夜、忙しすぎて、夫であるにも関わらずあまり話したこともない公爵様、ルーズベルト様の部屋に通された。


ルーズベルト様は私が中に入るとため息をつく。

私はどうすればいいのか分からなくて、ルーズベルト様の言葉を待った。


「君はベッドで寝ていいよ。

私は、そちらのソファで寝るから」


その言葉に私はとんでもないと慌てた。


「そんな! ルーズベルト様にソファで寝てもらうなんて出来るわけがありません!」

「別にいいよ」

「いいえ! よくありません。それならば私がソファで寝ます!」

「いや、私がソファで寝る」

「わた――――」

私が、と言いかけて口を閉じた。

ああ、これは一生続くやつだわ。


私は言う。

「一緒に寝ましょう!」

それを聞いてルーズベルト様は怪訝な顔をする。


「私としては、ルーズベルト様がソファで、私がベッドで寝るなどということは絶対にあり得ません。もし、ルーズベルト様が私と同じベッドで寝たくないのであれば、絶対に私がソファで寝ますわ!」


ルーズベルト様は戸惑ったように言う。

「君は嫌ではないのか?」

「嫌ではありません。ルーズベルト様は嫌ですか?」

「私は嫌とかそういうものはない」

「では、それでよろしいですね?」


嫌というか、むしろ、この人には変なことをされないから大丈夫だという、妙な安心感さえある。男としてはあまりあってはならない安心感なのだと思うが。


それを聞いたルーズベルト様は同意した。

「そうしよう」

「はい」


それから隣り合って一緒に寝た。

やっと結婚式が終わって、一段落ついた。

とりあえず安心して、久々に熟睡したのだった。

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