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もふもふ/再会

エミリア様がコロに会いに行く時、私も一緒に行っていいかと聞いてみた。

とても大きくて正直少し恐ろしいけれど、しかし犬型のもふもふというのはやはり可愛らしいとも感じるのだった。


「ちょっと、ちょっと触ってみたらいけないでしょうか?」

私は遠慮気味に言う。

実は、ずっと触りたいと思っていたのだ。


「大丈夫ですよ、とても良い子ですから」

「ありがとうございます」

「いいえ、しかしコロを怖がらないだなんて、やはりリリアナ様は肝が据わっていますね?」

エミリア様はクスリと笑った。

「少し怖いですわ。とても大きいですから。

しかし、あのボリュームのある柔らかそうな毛並みを触れてみたいのです。

な、なんだか無性に……!!」

私は何故か気が付くと、手をさわさわと落ち着きなく動かしていた。

エミリア様はそんな私を見て苦笑する。


コロの元に行くと、エミリア様が私の手を引いてくれて、コロの背に触れた。

「あ、温かいですわ」

私は夢中になって撫で続けた。


思ってみれば私は動物を飼ったことがない。

前世も今世も、金銭的も生活的にも余裕がなかったからだ。

これほど極上の触り心地だとは思わなかったわ……。


「か、かわいい…………かわいいかわいい」

私が思わずかわいいを連呼すると、エミリア様が堪えきれない、というように笑った。

「フフフッ、フフッ」

そんなエミリ様に私は少し恥ずかしくなりながらも、つられて笑った。

コロはエミリア様の笑い声に反応して、機嫌良さそうに喉を鳴らした。


コロはとても賢い。

きっと言葉も少しは理解しているのだろうと思う。

コロは最初私を観察したように見ていた。

観察力、感情を読み取る力などは、もしかしたら人間よりも優れているかもしれない。

それほどコロは賢いからこそエミリア様の心の支えになりえたのだろう。



◇◇◇



エミリア様が屋敷に来てから10日、エミリア様はすっかり元気になったと思う。

そんな時、セルラング公爵家息女のユナ様から手紙が届いた。

ユナ様は陰険メガネ、エリックの妹である。


ユナ様は第2王子の婚約者だ。

ライセント公爵家とセルラング公爵家は仲が良くない。

しかしユナ様は、よく王妃殿下とエミリア様とお茶会をしており、エミリア様のことを慕っているそうだ。


エミリア様がとても心配なので、会わせて欲しい、お邪魔しても良いか、ということだった。

また、ユナの兄であるエリックと、騎士団長の子息カイル様も一緒に来たいと書いてあった。



その日、ルーズベルト様が帰って来るとそのことを伝えた。


「エミリア殿が良いと言うのだったら良いのではないか?」

「はい、では明日聞いてみます」


それからルーズベルト様はなんだか神妙な顔で言う。

「ええっと、エリック殿は……、確かリリアナが平民として暮らしていた時の友人だったな……。

まあ、どうにしろこれからも会う機会はあるだろうし、今回よく話すと良い。

リリアナも話したいだろう…………?」


いいえ、と言って欲しそうである……。

しかし本音として、確かに久々に話したい気持ちはあった。


「そうですねえ」

頷くと、ルーズベルト様はいつもよりさらに眉間に皺を寄せる。


私は安心させるように言う。

「特に何もありませんよ? 彼とは恋愛のれの字もありませんでしたから」

「そう思っているのは君だけかもしれない」

ルーズベルト様は珍しく責めるように言う。

しかしながら全くもって怖くはない。

「ええ? それはありません」

「リリアナは案外鈍い…………」


ルーズベルト様はフイッと視線を横にずらした。



◇◇◇



そして私は次の日、エミリア様に伝えた。


「ぜひ、会いたいですわ」

エミリア様は嬉しそうにそう言った。


それから私は聞く。

「ええっと、エミリア様はエリック様とカイル様とも何か関わりがあるのですか?」


「カイル様は弟、のような存在ですわ。騎士団長のご子息に向かって失礼な言い方かもしれませんが……」

カイル様は確かエミリア様の3歳年下、15歳だ。


「エリック様とは、ええと、同級生でした」


エミリア様の言い方から、エリックとはそこまで親しくなさそうだ。

エリックはユナ様とカイル様の付き添いで来るのかもしれない。

ユナ様の兄であるし、男のカイル様も来ることで不自然ではない。



◇◇◇



ユナ様が来るのは、ちょうどルーズベルト様の休日であった。


ユナ様たちがやって来るのを、私とエミリア様は出迎えた。

ユナ様はエミリア様を見るとすぐに駆け寄ってきた。


「エミリア様ああ!」

「ユナ……!」


ユナ様はとても心配していたのだと、涙ながらにエミリア様に抱きついた。

そんなユナ様を、エリックは苦笑して、カイル様は微笑ましそうに、ユナ様が落ち着くまで見守っていた。



それから皆でお茶にした。

「エミリア様、なんだか……、元気がないどころか、いつもよりもお元気そうですね?」

ユナ様が不思議そうにそう言う。


「ええ、リリアナ様にはとても良くしていただきましたから」

「そうなのですか、本当に本当に良かったですわ」

「ユナ、心配かけてしまってごめんなさいね」

エミリア様がユナ様に優しい視線を向けるのを見て、エミリア様もユナ様のことを可愛がっていることが分かった。


「エリック様とカイル様も、ご心配おかけしました。

わざわざお越しいただいてありがとうございます。

リリアナ様にも、今回のことも含め、色々と融通を利かせていただきありがとうございます」


私は軽く答える。

「別に構いませんよ?」


「エミリア様、ご無事で何より……。良かった……、本当に良かったです」

カイル様は心底ホッとしたようにそう言う。

なんだか、カイル様がエミリア様へ向ける視線から、好意が感じられる。

好きなのだろうか……?


「まあ、なんだか拍子抜けだったけどな」

エリックが最後そう言った。

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