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面倒事

それからパーティーには、私もついて行くようになった。

ルーズベルト様はいつも苦手なパーティーを1人で出席していた。

しかしきっと私がいた方が、自分で言うのもなんだけれど、心強いと思う。


ルーズベルト様は宰相という立場なのだから仕方がないけれど、とても忙しく、休日でさえ屋敷で仕事をしていて休日になっていないほどだ。

そんなルーズベルト様の心労が少しでも減れば良いと思う。

私もちょっとしたことでも何か助けになりたいと思ったのだった。




今日はパーティーである。

私はお手洗いに行くと言ってルーズベルト様から離れた。


トイレから出ると、何やらご夫人方に囲まれた。

皆20代後半から30代くらいだ。


今日は5回目のパーティーへの出席である。

元平民ということでいじめの格好の的である私であるが、今までこういうことはなかった。


何故今までこういうことがなかったか。


ルーズベルト様に嫁ぐというのを同情的に見ている人たちが多く、宰相で公爵であるルーズベルト様の地位が高いことからだろう。


また、同世代の女性からは夫人という立場に手を出すのは憚られたのだろうと思う。


そして同じ夫人の立場の人たちからは、こんな若い私にあれこれいうのは、大人げないしダサい、って感じなのだろう……。


けれどそんなことも考えない、分かっているけれどどうしても言いたいことがある、そういう人もきっといて、いつかこういうこともあるだろうとは思っていた。


「貴方、元平民なのだそうねえ?」

「そうですけれど」

私は答えた。


「貴方のような者はこの場に相応しくありませんわ」

「恥ずかしくないのでしょうか」

「勘違いされているのではありませんの?」


そう言ってご夫人方は高らかに笑う。


て、典型的な方々だな…………。


「私は今は公爵夫人ですから、相応しくないということはないはずです」


「あら、本当に勘違いされているのね」

「元平民だなんて、なんて野蛮なの?」

「学校にも通ったことがないのでしょう?」


きっと、この人たちからすると、私はただのストレス解消、暇つぶし程度のことなのだ。全く厄介なものだ。


「旦那様がいる身でありながら、フフッ、男に色目をつかって」

「ええ、そうですわよ? 素敵な旦那様がいらっしゃるのに、フフッ」


その言葉に思わずムッとする。

明らかにルーズベルト様のことを馬鹿にしている。


私は1つ溜め息をついて落ち着かせた。


ここにいるご夫人方は、伯爵夫人、子爵夫人、男爵夫人だ。

それも、そのご夫人方の夫はあまり功績を残すこともしておらず有力者ということでもない。

なるほど有力者の夫人とそうでない夫人の違いがよく分かる。


有力者の夫人がいたら私もさすがに気を遣うが、適当にあしらって良いだろうと私は判断した。


熱くなって滅茶苦茶に言い合ってしまっては、私の評判が、ルーズベルト様の評判が下がってしまうからそのようなことはしないが。


私は言う。

「貴方方が言うように、私には素敵な旦那様がおりますので!

色目などつかうはずもありませんわ。

とにかく、私が元平民であったことは消しようもない過去です。

そしてこの場に相応しくないと思われようとも実際に私はここに入ることを許されていますから、これからも出席しますわ」


私には素敵な旦那様がおりますので! というのを強調した。

そして最後、申し訳ありません、と棒読みで付け足す。


「な!? なんて偉そうな!」


「偉そう……? 

ああ、そうしているつもりはありませんが、時々言われます。

ですが、故意にそうしているつもりはありません。

これが私でありますので、分かっていただければと思いますわ」


しかし私は納得した。

元平民ということの他に、まあ自分で言うのもなんだけれど美人、そして偉そうだということもあったのね。


「あと、先ほど恥ずかしくないのかと聞かれましたけれど、むしろ貴方方の方が恥ずかしくないのですか? 周りの視線が痛くありませんか?」


ここは人の少ない場所ではあるが、ここを通りすがる人々は怪訝そうにこちらをチラチラ見ていた。


「な、何なんですの?」

私に制裁を下す自分たちの方に非難の目を向けられるとは思わなかったようだ。


分かっていただけたようなので私は言う。

「そろそろ解放してくださらない?」


「本当、生意気だわ!」

「じ、時間の無駄だったようね!」


ご夫人方はブツクサ言いながらも去って行ったのだった。

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