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折り紙

それから定期的に教会に行った。時々はルーズベルト様も一緒に。

私はお菓子の他にも多くの絵本を教会に持っていって、そのことにはルーズベルト様は苦笑していた。




そして今日も、ルーズベルト様と一緒に教会へ来ていた。


私はお絵描きをする子どもを見て、ふと思いつく。

一枚紙をもらってその紙を正方形に切り、鶴を折り始めた。


「何をしているんだ?」

ルーズベルト様がそう言って、私の手元を覗き込む。

子どもたちも一緒になって見ている。


最初はルーズベルト様に近寄らなかった子どもたちだったが、今では随分慣れたようだった。


「折り紙です」

「折り紙?」


私はそれから鶴を完成させて皆に見せた。


「おお!」

「きれーい!」

「かわいい!」


その鶴はあっという間に子どもたちの手に渡ったのだった。


「あれは何だ? 折り紙……?」

ルーズベルト様が不思議そうに聞く。

「紙を折って作るものです。あれは鶴です」

「ツルとはなんだ?」

「あ、ええっと…………」


鶴はこの世界に存在しないのか……。

私は適当なことを言う。


「ええっと、空想上の生き物です」

「なるほど」

ルーズベルト様は納得してくれたようだ。


それから私は聞く。

「正方形の紙はないのでしょうか?

折り紙は基本的に正方形の紙で作るものなのです」


「うむ、そういえば気にしたことはなかったが、正方形の紙は見かけないな。

そのくらいならば商人に作らせるとよい」

「商人に?」

そんなこともできるのか。

「あの、色付きとか柄付きとかも頼んでいいでしょうか?」

「なるほど、確かにアレに色や柄があったら、もっと美しいだろうな。

いいのではないか?」

「ありがとうございます」



それから2人で、子どもたちが私の作った折り鶴を見て何やら笑い声を上げているのを見ていた。


ルーズベルト様ふとしたように言う。

「君は本当に子どもが好きなのだな」


「はい、そうですね。あのね、子どもは無条件に愛されなければならない存在だと思うのです。私は子どもを見るだけで自然と笑顔になってしまうのです」


私がそう言って微笑むと、ルーズベルト様はいつもの気難しい顔を少しだけ緩めるのだった。



◇◇◇



数日後、私は商人を前に、机に向かって紙を折っていた。


鶴を作ると、ミオは子どものように喜んでいた。

「すごい! すごいです! 奥様っ!」

セバスチャンとメイド長も関心したように言う。

「これは……、紙があのような形になるなんて」

「ほお、これは美しいですな」


商人は鶴を手に取ると、興味深そうにあらゆる角度から見た。

「へえ、素晴らしいですねえ」


「もっとすごいのを作れるわよ?」

思ったよりも皆喜んでくれたので、私の知っている折り紙の中では一番すごいと思うものを作ってみることにした。


そして多少時間がかかったが、同じ形の花を複数折って組み合わせて、くす玉を作ってみせた。


「ほら、すごいでしょ?」

「「おお!」」

「わぁ! 本当にすごいです!」


うむ、皆驚いてくれて私は満足した。

前世で子どもの頃、このくす玉を作った時私は、途轍もなくすごいものを作ったぞ、という気持ちであった。

今世18歳にして再び、そんな得意げな気持ちになったのだった。


それからセバスチャンと商人が少し話した後私は言う。

「――それではお願いしますね?」

「はい、お任せください!」

商人は人の良さそうな顔でそう言った。


――――

――


ミオは真剣に私の手を真似ながら言う。

「色付き、柄付きの紙が届くの楽しみですねえ」

「そうねえ」

商人が去ると、私はミオに折り紙を教えてあげた。

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