読み放題!
朝、早く起きた。
早く、といっても本来のいつもの起床時間である。
今日は寝坊せずに済んだと思わずホッとした。
隣にはルーズベルト様が眠っていた。
寝相は良いようである。
私はソッと部屋を出た。
誰も起きていないようで静かだ。
まだ寝間着のままである。
確か自室に服があったはずだと、自室に向かった。
クローゼットから、昨日ミオが用意してくれたものと似たような服を選んだ。
自室を見渡す。
本棚と机がある一角がある。
本棚には、この国の歴史や、貴族名鑑、小説などが並んでいた。
この屋敷の本は好きに読んでいいと言われた。
それに基本的に好きに過ごしていいとも言われている。
もしかして、これからずっと本を読んでいてもいい……?
――――さ、最高じゃない!!?
夢中で本を読んで、ドアのノックの音が聞こえてハッと我に返った。
私は返事をする。
入ってきたのはミオだった。
「奥様、こちらにいらしたのですね」
「あっ、そういえば時間は!?」
今まで時間を忘れて本を読んでいたのである。
「6時35分です」
「そ、そう。ルーズベルト様は?」
「今、起きたところです。
ルーズベルト様はいつも6時30分に起きます。
しかし、奥様がいらっしゃらなかったので、早くに起きて自室に向かったのではないかと思って来たのですが、いらっしゃって良かったです」
私はひと安心した。
夢中になって本を読んでいる間に、ルーズベルト様が仕事に行ってしまったとなったら、最悪だったわ。
「奥様、何時に起きたのですか? それに、もう着替えもなさっているようですが」
「5時頃かしら。そういえば服装はこれでおかしくはないかしら。
昨日のミオが選んでくれた服と似たものを選んだのだけれど」
そう言うと、ミオはどこか有無を言わせない威圧感を持って言う。
「そんな早くから起きていらしたのですね。
さすがに私も旦那様が眠っていらっしゃる部屋に入ることは控えさせていただきますが……。
早く起きて自室に来ていらしたのなら、この部屋のベルを鳴らしてください。
すぐに私が参りますから。
そしてお着替えのお手伝いや、髪を整えさせていただきます。
旦那様との朝食までは結構時間があるようですから、お飲み物を用意いたします。
他にも何か言ってくだされば、できる限り何でも致します」
「わ、分かったわ」
私は少し押され気味にコクコク頷いたのだった。
「それでは、髪を整えましょう」
「え、ええ」
私は鏡台の前に座らされたのだった。
身支度ができると、朝食に向かった。
少し経ってから、ルーズベルト様が来て食べ始めた。
ルーズベルト様は特に怒っている様子はないけれど、ミオの様子からもしかして無礼だったのかと思って言う。
「あの、今日は早くに起きて、自室で読書をしていたのですが」
「そう」
やはり、特に怒ってはいない。
「ルーズベルト様は毎日6時30分に起きると聞きました。
私はいつも5時には起きているのです。
朝食までの間、自室で過ごしていても良いでしょうか?」
「別に構わない」
ルーズベルト様は仏頂面でそう言った。
私は改めて思う。この仏頂面が、あの昔会った気弱なクマ男だと、知れば知るほど不思議なものだわ。
昔のルーズベルト様を知っているからか、その仏頂面、その言い草が私には可笑しいのだった。
「フッ、ありがとうございます」
私が笑うと、ルーズベルト様はキョトンとしたような顔をする。
「フフッ」
そんな顔も可笑しくて私は笑う。
「な、なんだ!?」
「いいえ、なんでも」
私は顔を戻して、すましてそう言うのだった。
その後、ルーズベルト様は仕事に行った。
ルーズベルト様は、私が笑った時は多少動揺したようであったが、基本的に私には無関心を貫くようであった。勝手にしていてくれ、というような素っ気ない態度である。
まあ、こっちだって構わないけれど! フンッ
少しだけ私は拗ねた。
自室に入って、早速本棚に手を伸ばす。
朝途中まで読んでいた歴史の本を読み始めると、ミオが言う。
「紅茶をお入れしましょうか?」
「そうね、ありがとう」
私は本棚の横にある勉強机の椅子から、窓際のゆったりとした椅子に腰掛けて、優雅に紅茶を飲みながら読書を楽しんだ。
少し経って昼食の時間になると、食事を取ったあと、再び自室にこもって読書をする。
ルーズベルト様が帰る時間は遅く、夕食は先にとっているように言われた。