表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この不条理な異世界で  作者: 和仮名
プロローグ
1/16

プロローグ

 この世界の誰一人、見たことがないものがある。

 そう簡単に見つけられない様に、僕らは心に隠したんだ。

 学校での授業中、登下校の歩く途中、寝る前の時間。

 憂鬱な雨の日や、日差しがきつい晴れの日や、穏やかな陽気の日や。

 マトモ過ぎる毎日で、一度は考えたことがあるソレ。

 でも、絶対に叶わないソレ。


 時には、特異的な能力が身に付いたり

 時には、美少女に異常にモテたり

 時には、周りにチヤホヤされたり

 時には、世界を救う勇者、英雄、正義になったり

 時には、過去に戻ってやり直してみたり

 時には、自分に優しく、等身大の自分を受け入れてくれる。そんな美少女たちとハーレムを築いたり。

 時には、異世界にチートでハーレムで最高な世界だったり。

 そんな妄想、空想、仮想、幻想。


 だが、人はいつしか成長するにつれソレを忘れ行くものだ。

 ソレは、幼児的万能感とも言う。童心や、純心とも言うかもしれない。

 ならば、ソレとは何か。その答えは、人間ならば皆が持ち合わせているココロ。大抵の人は成人していれば、記憶の片隅にでも、忘れている事だろう。


 子供の頃は、本気で空が飛べると信じていたり。

 心を集中させれば、手のひらから魔法が出ると信じていたり。

 自分は特別で、たぐい稀なる人間なんだと、本気で信じて少しも疑わない。

 大人のよく言う、「子供の頃は良かった」の正体。いや、根源。

 一部の人間以外は、世の中や社会に揉まれて、自分が万能でないことに気づき、次第に環境に順応して行く。

 人間社会じゃあ、大切にされるのはそういう人間だけれど、今回に限っては違う。

 一部の人間。何もしてこなかった人間。何もされなかった人間。


 端的に言ってしまえば、何でも自分の思い通りになることを期待し、それが叶わないと、平静を保てなくなる。そんな人間。

 

 そう、そんな儚く朧なソレにすがる、哀れな少数派もいる。見て見ぬふりはできない。

 世の中から、社会から、学校から、友達から、知り合いから、異性から、同性から、人間から。

 適応できなかった、そんな人間もいることを忘れてはならない。

 彼ら、彼女らは、時として罪であるかのように人々から糾弾され、追放される。

 彼らは、彼女らは、別にそれを好んで選んだ人生では無かった筈だ。

 きっとそうならざるを得なかった、人生の外れクジを引かされた連中に、いったい何の罪があるというのだろうか。

 そう、世界は連中に何も与えず、連中を使い捨てた。

 だから、常人に備えつくであろう倫理観や知識から体の動かし方まで。

 学ぶことができなかった。いや、許されなかった。

 そんな……、世界に許されなかった彼らは、誰にも侵されない思考の中に、平穏と刺激を求める。

 

 弱者に罪はないのだから。

 僕らも彼らに、彼女らに、寛大に、寛容に、なるべきではないだろうか。

 なぜならば我々も、彼らの因子を、未だ色濃く残しているのだから。


 自分の事のように親しく思おう、いつか罪を犯すその日まで……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ