ドラゴンさん、説明される。
今日1日かけて書いてたex話が保存されずに吹っ飛んだので腹いせに投稿します(半ギレ)
早いものでその翌日に彼女は訪ねてきて、お父様の執務室で全員揃っての挨拶を行う運びとなった、
「始めまして、王立魔道院第二分館副館長、ベルルベルイ・ベルルーベ・ベイルベルルクです。長いので、ベルクとお呼び下さい」
身長は私と同じくらい。色素の薄い髪と肌、少し気だるげなブルーの瞳、服装は、魔道士と聞いていたのでてっきりオーソドックスな魔女っ子さんが来るのかと思っていたが、予想に反してキッチリとした、軍人を思わせるような装飾の少ない緑のパンツスタイルに、これまた軍人のように、サーベルを下げる要領で杖のような物が腰に下げられている。
王立魔道院、とか言っていたし、お国のちゃんとした組織の制服なのだろうか。布が上等そうな所から推察するに、恐らく制服なんだろうなぁ。
「始めまして、翡翠・ル・レーデンと申します。この度は私の為にはるばる遠路をご苦労様です、よろしくお願いしますね」
「久方ぶりだな、ベルク。息災の様で何よりだよ」
ちなみにお姉様は逃げた。今はギュードンとメイド長が縄を持って追いかけているところだ。
「いえいえ、この度の案件、私としても気になる事が山ほどありましたので…早速ですがグラッシャス様、やはりパスが出来ているようです、先日の書状の件、ほぼ当たっているとみて間違い無いかと思います」
挨拶もそこそこに真剣な面持ちで話し始めるベルク、パス?書状?うーん、やっぱり、私のことだよな。王立魔道院とか言ってたし、やっぱりドラゴンの件に関して特別な調査とかが入ったのだろうか。
「そうか。…なら、我が不肖の娘に早くこの場に来て貰わなければだな。まだ捕まらんのか…はぁ」
お父様が項垂れる、ホントお姉様は一体何やってるんだ…あ、そうだ。
「お父様、私が捕まえに行きましょうか?」
「…そうだな、翡翠の言葉なら素直に従ってくれるかもしれん。ベルク殿を待たせ続けるのも偲びない、頼んでも良いか?」
「わかりました、それでは失礼して、行ってまいります!」
よし来た!羽を伸ばして(慣用句ではない)、開いてる窓から一気に飛び立った。お姉様のだいたいの位置は何となくわかるのだ、屋敷の西側、物見の塔の辺りで隠れてる感じがする。よし、空から掻っ攫うぞー。
「…そう言う意味では無かったのだが、そうか、説得などせず物理的に連れて来るつもりなのか…。翡翠も、ユーフィミアに似てしまうのだろうか…」
「あれがドラゴン…あれが、神話の…」
なんか、お父様のため息が聞こえた気がした。
数分後。
「さて、ユーフィミア様がなぜ私から逃げるのかは後でしっかり問い質すとしまして、まず始めに、私からお二人に大事なお話があります」
執務席にお父様、その前にある低いテーブルを囲むように置かれた椅子に、ベルクさんと私とお姉様が向かい合うように座る。お姉様はちょっと涙の跡がある、高い所が怖かったらしい。申し訳ない。
「まず始めに、この度私が呼ばれた理由は、翡翠様に魔術を教授する為だけではございません。ご存知の通り、私の専門分野は多種多様な魔法生物とそれに連なる魔道分野です、この度、グラッシャス様から拝命を受け、ドラゴンに関して、私の出来る限り全ての権限と人脈を以て調査を敢行しました。その結果をお伝えする事から始めます」
テーブルの上に書類を広げながら、淡々とベルクさんが言葉を紡ぐ。…おっ、お姉様も少し復活してきたみたいだ、書類の一枚を手に取って、まじまじと見ている。
「うむ、わかった。続けてくれ」
お父様が会話を促す。私は当の本人なので少し居心地が悪い気もする。
「結論から申しますと、ドラゴンの目撃情報は有ります。おおよそ30年に一度の頻度で、世界のいたるところで目撃されています。…ただし、この情報はどの国でも秘匿情報として扱われていました。臣民の混乱を防ぐ為か、それともまた別の理由があるのか、これ以上は解りませんでした。また、子供のドラゴンが目撃された事は今日までありませんでした」
「ふむ、なるほど。確かに、伝説が確かならば、その力は単騎で国を落とすほどにもなる、と謳われているからな。王も考え無しではない、秘匿にしていたのは混乱を防ぐ為だろう。…もっとも、他国はわからんがな」
「と言うことは、翡翠の兄弟とかが居るかもしれないって事?」
ここに来て初めてお姉様が口を開く。今更だが、お姉様は椅子の上で体育座りをキメている。
「その可能性は否定できません。さて、翡翠様、質問です。ご自身が最初に居た場所の記憶はありますか?もし可能でしたら、詳細に教えて頂けるとありがたいです」
おお、話が振られた。そりゃそうだよね、私に関する問題だしね。分かる範囲は答えよう。
「はい。最初の記憶は洞窟の中で、何か卵のような物から出た記憶もあります。最初は上手く立ち上がれませんでしたが、その場からすぐに離れなければいけない気がして…壁を頼りに立ち上がり、洞窟の外へ出ました。そこからは、森の中です」
「…ありがとうございます。さて、今の言葉で2つほど判明した事があります」
はて、なんだろう。
「翡翠様、貴女は、人化の術を使いましたね?」
…へ?
「…へ?」
思考と言葉がダブってしまった。人化の術?魔法?なにそれ?
「ご自覚無いようなので…説明も兼ねて、続けます。まず人化の術とは、読んで文字の通り、魔物が人間に化ける時に使う術です。より高等な魔物であるほど、その容姿は人間に近いものとなります。そして翡翠様、そこから導かれる結論として、ドラゴンは亜人族では無く、魔物の高等存在であり、今の翡翠様のお姿は人化の術で形成された、ドラゴン本質とは別の形の姿です」
あー…?えーっと?つまり、産まれた…違うか、孵化した時は普通にドラゴンだったのか?私。確か後ろ足で立てなくて…なるほど、言われてみれば確かに、何歩か四足歩行した記憶はある。でも術なんて使った記憶もないし、使う方法ともわからないぞ?
「翡翠様はどうやら人化の術に心当たりは無いようですが、貴女はその洞窟の中で、自分の本質をどのような姿だと考え、行動したのか覚えていますか?これは推測ですが、二本足で歩けるのが当たり前だ、と考えて行動したのではありませんか?」
「…はい、その通りです」
そりゃそうだ、孵化する直前まで人間だったもん。自分は人間だと信じて疑ってなかったもん。
「原初の魔術は、詠唱や複雑な陣などが無くてもその本懐を成し遂げるものでした。現代における魔術は、学問として研究された結果、最適化が行われた姿に他なりません。つまり、本来の魔術とは思うままに思うがまま事象を捻じ曲げる事が可能で、魔術に適応している一部の生命体は、我々人類の様な複雑な手段を取る事なく魔術を行使しています。それが私が追い求める魔道の境地の一端で有り、私が追い求める魔道とは学問の先に非ず、原初に立ち返った本質的な魔道としての姿を現代に蘇らせることを目的としていて、私はそれこそが真に魔を導…」
「こほん。つまり、翡翠様は原初の魔術を使用して、近代魔術としての過程を踏まず人化の術を使用した訳です」
めっちゃ早口だった。話を聞く感じ、研究者っぽい感じもするし…理系オタクなのかな。
さて、ここまで来たら私には聞かなければならない事が2つある。とりあえずどっちも聞いてしまおう。
「質問です。その話を統合するに、まず、私は魔物という事ですよね?次に、人化の術を解除したら本来の姿に戻るって事ですよね?」
すぐに返事が返ってくる。ベルクさんの声は平坦で、どこか無機物的なものを感じてしまう。さっきの早口はすっごい感情乗ってたけど。…ああ、そうだ、Siriみたいなんだ、この無機物感。
「答えます。1つ、魔物の上位存在です。2つ、巨大なドラゴンの本来の姿に戻るかと思われます。2つ目に関しては、例え本来の姿に戻ったとしても、再度人化の術をかける事で元に…元に?戻ることが出来ます。人化の術で人化した姿はそれぞれの個体で固定のものになる傾向がある為です」
「ありがとうございます、よく理解できました」
ここまで話したところで、ここまで考え込むような仕草をしていたお父様が口を開いた。
「なるほど、ここまでよく調べてくれた、感謝する。…さて、ここで提案なのだが。翡翠、一度、その元の姿とやらを私に見せてはくれないだろうか?何、もしそれが苦痛であれば無理にとは言わん。家族として、父として、娘の事を知っておきたいのだ」
思いがけない提案だ。なにせ、自分から提案しようかとも思っていたのだ。今後の身の振り方を考える為にも、私は自分の事を知っておくべきだと思う。…どうも私の寿命は長そうだ、受け入れてくれる家族が居るうちに、こういう事はやっておくべきだろう。
「わかりました。…ちょっと不安ですが、やってみます」
「…つらいなら断ってもいいんだよ?」
隣からお姉様が声をかけてくれる。私はそれを笑顔で首を振る事で返す。
「…必要な事だと、思いますから」
週半ばまでは忙しいので次話は週末になります。活動記録は週半ばあたりに、1日かけたex話が吹っ飛んだうらみつらみを書き殴っておきます。つらい。




