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習作、TSドラゴン転生モノ。  作者: 赤井鈴子
4/6

ex-1前半

ex-1の前半になります。

ex1


どうして、どうしてこんな事に。

安全なはずの旅路だった、犯罪ギルドが領内に進入した形跡は無かった、ましてやここは領地のど真ん中、ウチの私兵団も警邏している、最も安全な場所だったはずなのに…なのに…。


「ユー!絶対に馬車から出るんじゃねえぞ!毒矢だ!」


「隊長!セツの野郎、もう息が!」


「諦めろ!今は生き延びて、ユーを連れて帰る事だけを考えろ!!」


外から聞こえるのは剣戟の音、聞こえるのは仲間の苦悶の声、聞こえるのは仲間の斃れる音。


私はユーフィミア・ル・レーデン。ル・レーデン領の領主の娘であり、今は領を継ぐために、家業である商いの修業をしている。

3日前、私は護衛の4人と共に隣町へ向かった。隣町では現在隣国からの行商人が市を開いていて、そこで人生初の外商体験をする為だ。

行きは何事もなく、商いも満足できる結果に終わり、あとは早く屋敷に帰って父さんに報告するだけ、のはずだった。

襲撃は突然だった。あと半日もすればお屋敷に付く、私は馬車の中から御者のセツと、護衛隊隊長のギュードンとこの短い旅の思い出話に花を咲かせていた、そんな時。急に馬車の目の前に弓矢を構えた男が、虚空から滲み出るかのように現れたのだ。

あっと思う間も無く弓矢が放たれ、御者を務めていたセツの肩に突き刺さる。最初に反応したのはギュードン、私に「しゃがんでろ!」と言うのが早いか、弓矢の男に斬りかかった。しかし弓矢の男は霞のように消え、また別の方向から弓矢の飛ぶ音が聞こえる。痛みに堪えながらも剣を持ち、馬車の前で敵に備えるセツ、他の護衛に声を掛け、襲撃者に向かうギュードン。

変化は突然だった。セツの後ろ姿が、突然ぐらりと倒れた。慌てて幌の隙間から覗くと、もう1人の護衛が血を吐きながら倒れ、痙攣しているのが見える。


「ユー!絶対に馬車から出るんじゃねえぞ!毒矢だ!」



外の音が小さくなった。震える身体を抑え幌の隙間から外を覗くと、今まさに斃れてゆくギュードンの姿と、襲撃者に囲まれる見知らぬ1人の人間が見えた。

チャンスは今しかない、私がやらないと。あれが誰だか知らないけれど、襲撃者の気があっちに向いている今、私がギュードンを助けて、逃げないと…!

護身用のナイフを握る、鞄からポーション剤を取り出す。静かに幌から出て、ギュードンの側に行く。ギュードンの口を開いてポーション剤を流し込む、傷口にもかける。


「なんで…?なんで効かないの…?」


ギュードンの息がどんどん小さくなる、心臓の鼓動も歪だ。

私を子供の頃から守ってくれた、いつも父さんと楽しそうに外の話をしていた、俺がこの家と、この領地と、この家族を守り抜くから安心しろ、と、いつも話してくれた。

そのギュードンから、どんどん命が失われていくのがわかる。鞄から次のポーション剤を取る、かける、もっとかける、効かない、嫌だ、死なないで、私のせいだ、私が、私が…


怒声が響いた。滲む視界で声の方向を見ると、首が捻じ曲がった襲撃者が転がっているのが見える、何が起きているのか、もしかして助けなのか…と思うも、寸刻、間違いに気付く。

あの襲撃者を襲っているのは、何だ。

一見すると私より年下の女の子、だけどあまりにも異常。服は着ておらず、目は黄金色に光り、羽と尻尾、角が見て取れる。そんな異常な存在が、私達を圧倒した襲撃者を圧倒している。

矢は効かず、剣も効かず、今もまた、その尻尾の一振りで襲撃者の1人を叩き殺した。身体が歪に折れ曲がっている、生きてはいないだろう。目の前に広がる光景は、まさに蹂躙だ。

気付くと、弓矢の男は襲撃者2人の死体と共に消えていた。

襲撃者はほぼ皆殺しにされた、そして、その異常な彼女はこっちを向き、ゆっくりと歩を進めて来た。

私も殺されるのか、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、いつの間にか目の前に、怖い、尻尾で身体の自由を奪われた、南方では大蛇のモンスターが出て、旅人を絞め殺してから丸呑みにする、と話していた父さんの姿が思い浮かぶ、嫌だ、死にたくない、ナイフ、そうだ、ナイフで、ナイフで、ダメだ、死にたくない死にたくない…。

暴れていたら、すぐに尻尾から解放された。何が起きたのか、何をしているのか、彼女はギュードンの側にしゃがみ、様子を伺っているように見える。事態を把握できないまま、ふらつく足取りでギュードンの側に行くと、信じられない事が起きていた。

ギュードンの傷がみるみるうちに治っていく、取れかけていた腕が、矢で貫かれていたお腹が、絶え絶えだった呼吸が、全て治っていく。

私は、奇跡でも見ているのだろうか。気付けばギュードンの隣に座り込み、ただ泣いていた。


ひとしきり泣いたら、少し落ち着いてきた。そうだ、あの子、どう考えても私達を助けてくれたあの子、あの子は一体…?

とりあえず、話しかけてみよう。意思疎通が出来る相手なのか、意思疎通出来たとして、言葉が通じるだろうか?


「はじめまして、あの、助けてくれてありがとうございます。あなたは東に住まうと言う、獣人さん、でしょうか…?」


東に住まう獣人、父から聞いた話だ。東には獣人の国がある。そこには独自の文化があり、様々な見た目の亜人種が住んでいる、らしい。


「******、***********…******」


聞いたことの無い言葉が返ってきた。こう見えて私は父さんの跡を継ぐ為、共通言語の他にも人口が多い国の3ヶ国語をマスターしている、しかしそのどれにも似つかない、聞いたことの無い言語だ。

ただなんとなく、謝られた事は理解できる、申し訳なさそうな顔で頭を下げられたからだ。

言語が通じないだけで、意思疎通はできそう…?もし服を渡して着れるなら、文明レベルも近い、かな?よし、とりあえず予備の服を渡してみよう。

馬車から予備の服を取り出す、砂漠横断用のポンチョだ。念の為に持ってきたんだけど、これならあの子の足元まで覆えていいかもしれない。

さて、手渡して見たけど…手慣れた様子でちゃんと服を着た。これなら、簡単な言葉だったら理解してくれるかもしれない?とりあえず、自己紹介から始めてみよう。


「ユーフィミア」


自分の事を指差し、名前を伝えてみる。いまいち反応が薄かったのでもう一度繰り返す。

顎に手を当てて、考え込むようなポーズを取る目の前の子。あれ、もしかしなくてもこの子、すごく可愛いかもしれない。そしてすぐに理解した様子で私を指差して、


「ゆーふぃみあ?」


と返してきてくれた。やっぱり、言葉が通じないだけで会話もできるし、知能レベルもかなり高いみたいだ。


「そうだよ!」


通じた事が嬉しくなって笑顔で返す。よし、次はこの子の名前だ。ジェスチャーで通じるかな?指を差して、首を傾げて、どうだろう?通じたかな?

少し逡巡するそぶりを見せてから、彼女が口を開いた。


「ドラゴン」


ドラゴン…ドラゴン、その名前は聞いた事がある。おとぎ話に出てくる、勇者に退治された山のように巨大な魔物のの一種だ。その姿は山より高く、その声は地響きより低く、その瞳は世界の全てに悪意を向け、その身体に流れる血は溶岩のように熱く煮えたぎる。


「ドラゴン…いや、でも全然違うような…そもそもおとぎ話だし…」


目の前の彼女はそもそも人型だ、羽や尻尾や角はあるけど、どう見ても人種だ。それに大きくもないし、声も可愛いし、目は綺麗だし…。でも、あの襲撃者を簡単に倒したのも事実だし…。

ふと彼女の方を見ると、手に何かを持って食べていた。


「え、あの…それ、猛毒の…」


彼女が食べていたのはアシッドアップル、強酸に似た果汁に満たされ、果肉には人体を腐敗させる毒素がある、非常に危険で殺傷性の高い悪魔のフルーツだ。

それを、なんか普通に食べてる。しかも美味しそうに。ますますわからなくなってきた。この子は一体…?

ex話に関しては、「読まなくても話についていける」を目標に書きます。

また、本編と違ってex話はゆるいプロットのみの状態から、肉付けする形で文章を書き上げ、書き溜めの無い状態での投稿となります。(本編はプロット完結済み、書き溜め有り)

習作として、本編は書き溜め有りの形、exはいわゆる、即興書きの形を取り、それぞれ文章の練習としたいからです。

読者の方には修正などでご迷惑をかけるかとは思いますが、「ああ、練習なら仕方ないな、習作なら仕方ないな」と、ふんわりとした目で応援していただければ幸いです。

書いたことによって感じたこととかは、たまに活動記録の方にもそっと書こうと思います。興味のある方は作者名で検索すればたぶん出てきます。


次回の更新は来週です。また、ex1後編も近いうちに。

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