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習作、TSドラゴン転生モノ。  作者: 赤井鈴子
2/6

ドラゴンさん、出会う。

テストその2

小走りで気配の方に向かう、齧りかけのりんごソーダの実を丸呑みにする、ヘビの真似事もできそうだ。サーモグラフィーに反応あり、直立する影が4つ、地面に伏せる影が3つ、少し宙に浮いてる影が1つ。宙に…?ああ、馬みたいなのも見える、馬車の荷台か。

不意に視界が開けた。サーモグラフィーに集中していたせいで、森が途切れた事に気付かなかったのだ。


車輪の一つが割られた馬車を、3人の男が取り囲んでいる。3人は皆狼の毛皮のようなものを被り、1人が弓矢、2人が長剣を構えていた。そして馬車を背にする髭面の男が1人、矢を3本身体に受け、右腕がダラリと下がって、左手で剣を構えている。倒れている人間は全て血溜まりの中だ、ピクリとも動かない。

そして4人は、全員がこちらを凝視していた。あ、服着てないわ。


「***********!!!!」


1人の男が叫んだ。他の男も、口々に何かを叫ぶ。

あ、やばい、言葉通じなさそう。試しになにか…


「ハーイ、ハロー」


手を振ってみる。


「*******!」


やっぱり駄目だったよ。さて、どうしたものか…。


「***********!!!!!」


弓矢の男が、馬車の男に弓を放つ。もはや避ける気力も無かったのか、男はそれを身体に受け、ぐらりと倒れた。そしてそのまま矢を装填、俺に向ける。


「*****!」


そう1人が叫ぶと、俺に向かって矢が放たれた。まさに問答無用、とりあえず避けようかと思ったけど、大して危険を感じなかったからそのまま受け止めてみた。案の定刺さりすらしないで、身体に弾かれ地面に落ちた。

なるほど、人の肌と変わらないように見えるけど、やっぱり硬いらしい、この天然トカゲアーマー。靴もなしに歩き回れる時点でなんとなく予測できてたけどね。


「******!?」


「*******!!」


「**!!!」


男達は散開すると、まず再びの矢を放つ、顔狙いだったので、さすがに避ける。避けている間に、長剣の1人が俺に斬りかかる、とりあえず手で剣を止め…あ、折れた。その隙をつくように背後からもう1人の長剣が背中に突きを…したが、剣が折れた。とりあえず目の前の1人を殴る、気絶でもしてくれれば…と思ったが、なんか殴った顔から嫌な音がした。後ろの男は尻尾でベチーンと…叩いたら、地面をバウンドしながら転がっていった。


「トカゲパワー、すごい…」


そう呟いた時、弓の男が腰に下げた布袋から光る何かを取り出し、叫んだ。


「****!」


次の瞬間、風が吹くような不思議な感覚と共に3人の男は忽然と消えていた。


「魔法…?ああ、そうだ、馬車の人をなんとかしないと」


馬車の方を向くと、矢が刺さり息も絶え絶えなさっきの人と、その人の前で震えながらナイフをこっちに向ける女の人が居た。

熱源探査、馬車の熱が消えてる。つまり、馬車の中にいたのはこの女の人だったのか。ウェーブのかかった栗毛に、清潔感のある旅着、身長は…160前後だろうか、年齢は16歳前後と見た。赤みがかった黒色の瞳を涙に濡らし、なにやら装飾のついたナイフをカタカタと震える手でしっかりと握り、こちらに向けている。

さて、あの倒れてる人間と、この女の人だけか、生きてるのは。…ん?なんか…いや、とりあえず現状だ。まず女の人、脅威にはならない。次に倒れてる人、多分もうすぐ死ぬ。うーん、多分治療してなんとかなるものじゃないな、これは。はてさて…そうだ、そういえば、古今東西どこのお話でも、龍の生き血を浴びると不老不死になるってのをよく聞く。もし俺が龍なら、血の一滴…一滴だけなら、治療もできるんじゃないか…?

とりあえず、ナイフを向ける女の人に話しかけてみよう。にこやかに、にこやかに…


「こんにちは、多分通じてないと思うけど、俺…じゃないか、私、そこの人を助けたいんだ。いいかな?」


ジェスチャーを交え話す、自分を指差し、あの人を指差し、笑顔で。


「***********!!***!***!!」


めっちゃナイフで切りつけられた。なんかよくわかんないけど自信なくなってきた。

おっと、そろそろあの人死ぬ、間に合わなくなる。ごめんなさい女の人、ちょっと強引にいきます。もう動かすのも慣れたもんで、尻尾で女の人をぐるりと囲む。とりあえず動けないように。ナイフで叩かれてるけど気にしない、痛くないし。

男の人の身体の前にしゃがみ込み、左手の爪で、右手の指先をちょこっと切る。すると、そうそう、青い血がぷっくりと、って待て待て待て待ていやそうだ待ってる余裕無かった、とりあえず青い血のついた指を傷口にちょこんと…

そこからの変化は本当に一瞬だった。抉れた肉は盛り上がり、矢は勝手に抜け、よく見たらちぎれかけていた右手もしっかりとくっ付いた。さっきまでの瀕死状態が嘘のように、男は眠っている。


「おおー…やっぱり俺、龍だった。……不死にしてないよね?大丈夫だよね?」


急に心配になってキョロキョロしていると、女の人と目線があった。とりあえず微笑んでおいてから尻尾から離すと、すぐに男の人のところに駆け寄っていった。心臓の鼓動の確認だろうか、耳を身体に当て、傷口を確認し、ぺたん、と座り込むと、そのまま泣き出してしまった。


とりあえずやれる事もないので近くに座って様子を見ていると、女の人が立ち上がり、近付いてきた。


「********、****、****×**。***********、**、*****?」


やばい、長文で話しかけられたけど、全く分かんないぞ。とりあえず日本語で…えーっと…


「ごめんなさい、言葉が通じないみたいです…ごめんなさい」


謝って頭を下げる。すぐに謝る、まさに日本人って感じだ。

女の人は少し逡巡するような動作をしてから、馬車からポンチョのような服を取り出し、俺に手渡してきた。そういえば全裸だった。でも羽が…あー、意識したら小さくなった。なんだそりゃ。

差し出されたポンチョを頭と腕を通してしっかりと着る、すると女の人が自身を指差し、何かを繰り返し喋る。


「ユーフィミア」「ユーフィミア」


ゆーふぃみあ?なんだ、何を…あ、もしかして、名前…か?


「ゆーふぃみあ?」


そう相手を指差して聞くと、「イェ」と言いながら頭をこくこくと振られた。やっぱり名前だったらしい。そして、俺を指差し、頭をかしげる女の人、わかった、もうわかる、俺の名前だな?無いぞ、ガハハ。…と言うわけにもいかないか。伝わるかわかんないけど、話してみるか。


「ドラゴン」


とりあえず種族名を名乗ってみた。あなたは誰ですか?人間です、みたいな感じだが、とりあえず.あれ、俺、名前なんだったっけ?えーっと、あれ?


「ダァーゴン、***、*********…」


小さく呟くと、彼女は何かを考えるように黙り込んでしまった。あ、そうだ、りんごソーダの実、さっき立ち回りしたところにばら撒いてきちゃったから回収しないとな…。えーっと、一つ二つ、あ、一個潰れてる…とりあえず5つ。お話中悪いけど考え込んでるようだし、お腹もすいたしとりあえず座ってこれ食べてよう。

シャクシャクと食べてると女の人がこっちを向きなにか驚いたような顔を見せる、目線は私の口元だ。


「**、*…**、*******…?」


また小さく呟くと、黙り込んでしまう。意思疎通できないのは辛いなぁ。とりあえず食ってよう、食うしかやる事がない。ところでこの実の痺れる感覚、しゅわしゅわ感は何に由来するものなんだろう?炭酸?なわけないよなぁ。

りんごソーダの実を食べ切った頃、男の人が急にガバッと起き上がった。そして女の人を確認し、すぐに私を見て、目にも留まらぬ速さで剣を拾い、俺に斬りかかってきた、どうしてだ、俺はつらいよ。

しかしやはりと言うか、剣は通らなかった。俺すごい。


「***!*****!」


「********!*****、******!!!」


女の人が叫び、男が返す。そのまま口論が始まる。


「****、*****************!!」


「**************!ダァーゴン***********!!」


お、少し聞き取れたぞ。ダァーゴン。ドラゴン、俺のことだ。そう言えば一人称が俺のドラゴンか、なんか恋しそうだな、ドラゴンスレイヤーに。そういえばブレスとか出せるのかな?うーん、なんとなくできそうな気はする、いや多分できる、今度試してみよう。

暫く口論を観察していると、男の人が次第に女の人に言い負かされてゆくのがわかる。やっぱり女は口論に強いのかもしれない。そう考えていると、男の人がこちらを向き、何かを聞いてくる。


「****、******…?」


そないなこと言われてもも、ウチ、ドラゴンやし…じゃなくて、言葉通じませんし…とりあえず日本語で返すが。

「始めまして、ドラゴンです。え…と、倒れていたので勝手に助けてしまいました、申し訳ないです。あと、私はあなた達に敵対する意思はありません、お身体の具合は大丈夫ですか…?なんか、不老不死とかになってませんか…?」

ペコリと頭を下げてから、一気に話した。とりあえず勝手に龍の生き血を垂らしたのはこっちなので、謝罪もしておく。


「*****・・・?***、**、**************」


わからん。今の俺にはダァーゴンとユーフィミアしかわからん。すると男は、武器をしまい、頭を下げ、手を差し出してきた。これは、握手…か?とりあえず返しておくか。手を軽く握って、うん、にこやかににこやかに…。

握手のあと、2人はなにやら話しはじめた、当然私は蚊帳の外だ。折角だし、周囲の確認でもしよう。森と森との間に石畳の敷かれた馬車の通る道がある、幅は馬車の3台分だろうか、石畳の周囲には雑草もあるが、石畳にそれはない。私達がいるのは、その道の少し広くなったところ、広場だろうか?よく見るとかまどのようなものも置かれている。休憩場所のようなところなのかも知れない。と、なにやら女の人がこっちに向かってきた。男の人は、警戒はしているようだが、馬車の確認をはじめた。

女の人は身振り手振りを交えながら、何かを喋る。自分を指差し、俺を指差し、馬車を指差し道の先を指差す。着いてこいってことなのかな?あ、でも俺ドラゴンだ。捕まって売られる可能性が微レ存?俺剥ぎ取られる?素材になる?

とりあえず確認の意味も込めて、両手を手錠がかけられる形にして差し出してみる。するとすぐに慌てた様子で首を振られ、手を握られ、そのまま男の人の側まで連れられた。


「***・・ダァーゴン、*******」


「***・・・・**、************、**・・・*、****、ユーフィミア」


「**イェ!」


会話の後、満面の笑みになる女の人。なんだろう、ペットとして拾われた感じがする。ならこの女の人はドラゴンテイマーになるのか、オメガつよそう。

車輪を付け替えた後、男の人は道に転がる死体を運び、何かを取り、まとめて端に寄せた。右手を胸に当て、目を瞑る。多分黙祷だな、これは。やっぱり、仲間だったんだろう。気がつけばユーフィミアも同じ様に男の人の隣に立ち、黙祷をする。とりあえず私も隣に立ち、真似る…のも失礼かと思ったので、片膝をつき、両手を組み、祈りを捧げるポーズをとる。俺が知っている、死者を弔う姿の一つだ。ひと通り祈ると、男の人もユーフィミアも、悲しそうな顔をしながらその場を去ろうとする。埋めたりとか、しないのか…。まあ当たり前か、そうか、早く移動しないとまた襲われるかもだしな。でも不憫だ…ここで腐って衆目を集めるのも、人の最期として俺は忍びない。…燃やしたら怒られるかな?ドラゴンブレスの練習がてら、燃やしたらダメかな?うーん、いいや、やろう、俺の気持ちの問題だ、ここに放置はできない。えっと、喉の奥のもう一つの舌を動かす感じに…こう…力を込めて、ふーっ。

軽く吹き掛けたつもりだったのだが、青い炎が一瞬で燃え上がった。慌てて息を止める。祈る姿勢のまま、再び目を閉じる。火はすぐに風に霧散し、あとには少しの灰と、ガラス質の何かが残った。え、そんな高温なの、ドラゴンブレス。

立ち上がり振り向くと、男の人が近付いてきて、私に頭を下げた。良かった、俺がやったことは正しかったらしい。とりあえず俺も頭を下げる。


5分ほど経っただろうか、どうやら馬車の修理が終わったらしい。車と一緒だ、積んであったスペアの車輪と付け替えたのだ。


「ダァーゴン、******?」


そう言ってユーフィミアは俺の手を取り、馬車に向かって歩き、俺はそのまま馬車に乗せられた。

馬の嗎が聞こえる、カポカポと、心地の良い音が響き始める。そういえば俺、寝てなかった…急に眠気が…

続きはもう書き上がってるので週末に。その後は週一投稿になります。

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