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クロスオーバー・オールディネ  作者: 花粉症
少女と少年の出会い
7/26

第七話:朝のひと時

 昨夜は布団についた時間も遅く、さらに精神的な疲れもあったためか、泥のように眠った岬。

 だが、普段の生活習慣がそうさせたのか、普段通り七時に岬は目を覚ました。


「あ、そっか昨日は泊まったんだった」


 目を覚まして知らない天井を目にして一瞬困惑したが、すぐに昨夜のことを思い出した岬は納得すると同時にため息をついた。

 岬としてはできれば昨夜のことは夢であって欲しかったのだが、やはりというかそうもいかないようだ。

 それにいつまでも現実逃避をしているわけにもいかない。


「よし、西灘君に私の答えを言わないと」


 頬を叩いてしっかりと目覚めさせて岬は受け取っていた着替えに着替えて昨日案内されたバックヤード奥にある共同のレストルームへ歩を進めた。


 レストルームに入った所で目にしたのは岬の予想した人物の姿ではなく、昨夜は見なかった女性と150cmくらいであろうか、かなり小さな少女が揃って朝食を作っている姿だった。

 レストルームここにいるということは少なくとも庚輔達の関係者で、もしかしたら昨日庚輔が言っていた人達の内の誰かなのだろうと予想できた。


「おはようございます」

「…………」

「あら、おはよう。岬ちゃんも早起きなのね」


 この場所の先人達へ挨拶すると、二人共手を少し止めるて、少女は無言で頭を下げる返事を返し、女性の方はほのぼのという言葉が似合うような表情をして早起きな岬に感心するかのような言葉をかける。

 特に女性の方にはどこか母性というものを連想させる何かを岬には感じられた。


「あの、初めまして」

「初めまして。私はめぐる、三彦さんの妻よ」


 母性というか母親そのものだった巡。

 そのことに内心で苦笑を浮かべながらも、自己紹介をした巡に丁寧にお辞儀をして答えた。


 丁寧な対応をする岬を半目で一瞥した少女はそのまま何も言うことなく朝食を作る作業に戻り、巡は少女に作業を任せて岬をテーブルに案内した。


「ささ、朝ごはんはもうすぐできますからこちらに座って待っててね」

「あの、ご馳走になっても……」

「いいのいいの。いつも大人数作ってるからね。一人分増えたところで問題ないわ」


 遠慮がちな岬に対して巡は頬に手を当ててにこやかに微笑みながら岬を席につかせる。

 どうにも掴みどころのない巡の対応に岬はオロオロしながらも諦めたように席に着く。

 なんというかここまで歓待してくれると逆に申し訳なくなってしまうのだ。


 そこへ助け舟を出すかのように少女が声をかけてきた。


「巡さん」

「ああ、そうね。そろそろ巡実めぐみが起きるわね。お願いしても?」

「ガッテン」

「ごめんなさいね。そろそろ娘が起きる頃だから」

「あ、いえ、お構いなく」


 表情を一切変えず、平坦な声音の少女にその場を任せた巡は岬にひと声かけるとパタパタとスリッパの音を鳴らしながら自宅へ続く扉へ消えていった。

 その後ろ姿を見送った岬は少しホッとする。

 直接的な好意を向ける事を苦手とする岬は直接的な好意を向けられることも苦手としていた。


 岬が胸をなで下ろしている所へちょうど朝食が出来上がったのか少女が朝食の乗ったトレーを持ってくる。


「はい」

「あ、ありがとうございます。えっと……」

「若菜、布施若菜ふせ わかな

「ありがとうございます。若菜さん」

「いい」


 ほとんど一言で話す若菜だったが、逆にそれは岬にとっていいもので、ある程度落ち着くことができた。

 落ち着けたからこそ巡に申し訳ないことをしたなと思って少しうつむき加減になる。


 だが、その仕草をすると同時に若菜が袖を掴んできた。


「…………(フルフル)」


 袖を掴んだまま無表情で首を振る若菜は「気にしなくていい。巡さんもその辺はわかっている」という意味を込めたつもりだった。

 しかしながら、無言で首を振られただけでは当然岬には伝わらない。

 若菜と付き合いが長ければわかるだろうが、あいにく岬と若菜は互いに初対面だ。

 せいぜい「申し訳なくなる必要はない」としか伝わらなかった。


「分かりました。いただきます」


 とはいえ、肝心の気にする必要もない部分は伝わっているため、岬もこれ以上気にすることなく出された朝食を前にして手を合わせるのだった。




「ご馳走様でした」

「おあよ~……」


 しばらくして岬が朝食を食べ終え、手を合わせるタイミングで扉が開き、住人の一人であろう新たな少女がフラフラとレストルームに入ってきた。

 初対面でまだ挨拶を交わしていないのに、眠そうな声と寸分違わない姿に思わず岬も苦笑を浮かべてしまった。

 服は一応パジャマではなく普段着なのだが、ボタンが一つ掛け違えており、さらに茶色の短めな髪の毛は寝癖が立っている。


 どこか危なっかしい状態だったが、フラフラした足取りにも関わらず躓くようなことは一切なくスムーズ?に定位置らしい席に着く。

 そこへ若菜がすかさずコーヒーを出し、少女がすぐに手を伸ばす淀みない一連の様子から、これは反射でできるまで繰り返された日常の一コマなのだろう。


「あいがおうごあいあふ……。ふぅ~、やっぱり若菜先輩の淹れるコーヒーが一番」

「…………?」

「そうね~。慶もまだ修業中だから仕方ないもの。でもいずれはなってもらうつもり」

「…………(コクッ)」

「それまでお手数おかけします。先輩」

(えぇぇぇぇ!? 会話成立してる!?)


 首を傾げたり縦に振ったりの仕草だけの若菜と、コーヒーを飲んでからスイッチが入ったのか呂律がしっかりしだした少女のほのぼのとした会話に岬は思わず内心でツッコミを入れてしまった。

 それほどまでにお互いを理解しているのだろうが、それでも一つの仕草で内容を理解するというのは感心するべきか呆れるべきか迷うものだろう。


 驚いたまま二人を注視する岬にこのタイミングで初めて気づいたのか、少女は首を傾げ、そしてしばらくして岬とは別の意味で驚く。


「え、なんでうちのクラスメイトここにいるの!?」


 その言葉に岬は脳内でこういうテンションで該当するクラスメイトを検索する。

 若菜は若菜で一瞬不思議そうに首をかしげるが、すぐさま納得と言わんばかりに手を打った。


「庚輔」

「え、もしかしてまた?」

「…………(コクッ)」

「あんの庚輔(お人好し)! また勝手に……」


 少女のことを思い出そうとする岬をほっぽり出して事情説明?をする若菜と、その内容に未だ寝ているであろう庚輔(お人好し)に向けて文句をいう少女。

 だが、ここで文句を言ってても仕方ない。

 とりあえず怒ることは後回しにした少女は岬に向き直る。


「えっと、岬ちゃんでいい?」

「え? あ、はい、岬でいいです」

「わたしは姫島円ひめじま まどか。あなたと同じクラスメイトで多分会ってると思うけど巡姉めぐねえの妹。よろしくねっ!」


 手を差し伸べながらにこやかに自己紹介する円。

 愛成が笑顔が眩しい明るさなら、円は喜怒哀楽が激しい感情豊かな明るさと言えばいいだろう。

 そんなことを円に感じながら岬は差し伸べられた手を取った。


「よろしくお願いします」

「硬くならなくていいって! 同い年なんだし。あとあの馬鹿(庚輔)がごめんね? あいつのことだから多分事情説明とかその他諸々端折ってここに連れてきたんだろうし」

「結構親しいんで……親しいのね」

「そりゃね。一応幼馴染だし。少なくとも一緒に育ってきたあいつの事情は全部知ってるから」


 そこで慈しむような表情を円は浮かべる。

 彼にも何か事情があるのだろうかと岬は思ってしまうが、それは円によって止められた。


「ごめん余計な言葉だった。えっと、あいつのことだし多分魔法使いになるかどうか持ちかけられたんじゃない?」


 強引に話を戻した円の見透かしたような言葉に思わず驚く。

 彼女の言葉通り、岬は魔法使いになるかどうかという選択を昨日に出されて、今日答える予定だった。

 だが、よく考えれば円は幼馴染で、今までの庚輔の行動を見てきた。

 彼の行動は容易く予想できるだろうし、状況を絞れば特定も可能だろう。


「ええ、今日彼に答えを出すつもり」

「そう。ま、その表情を見る限り答えは決まっているようね」


 岬の清々しそうな表情を見て心配するだけ無駄だったかと円は肩をすくめる。

 既に岬の中で答えは決まっており、覚悟も決まっている。

 今更円に確認されるようなことでもない。


 ちょうど話が一区切りついたタイミングで円の朝食と岬のコーヒーが運ばれてきた。


「とりあえず頑張りなさいな。適正によってはわたしも教えれるし」

「ありがとう。その時はよろしくね」


 お互いの事情についてはここまでというように一区切り入れた二人は、その後は年頃の女子らしい会話に花を咲かせるのだった。

キャラいっぱい出てきたぜ!

それにしても女性キャラが増える増えるw

ちなみにハーレムを書く気はないのでご容赦を。

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