第二十五話:男子の交友
二ヶ月と二週間ぶりの投稿です。
仕事に慣れてようやく更新と思ったら出張になって延び延びになってました。すみません。
慣れてきたので、ここからゆっくりですが更新を再開しようと思います。
その頃、庚輔はメンバーの選定に少し苦労していた。
普通であればとりあえず近くにいたやつを班に入れてもいいだろうという考えで動けるのだが、今回はそこに女子とも行動を共にして、ある程度節度を守れるといった条件がプラスされている。
つまるところ同行しても女子が不快に思わず、さらにある程度のコミュニケーション能力を有していれば良いわけなのだが、前者はともかく後者は中学から上がったばかりの精神もまだまだ未熟な高校生に求めるものではない。
だからこそ庚輔もある程度妥協点を見つけて班のメンバーを見つけているのだが。
「あと一人か……」
最低人数である五人のうち、庚輔を含めて四人しか今現在集まっていなかった。
言い訳がましいかもしれないが、庚輔の条件に当てはまる人間はもとより少数派で、大抵既に他の班のメンバーになっている。
そのため、庚輔の眼鏡に適う人物はあと一人いれば奇跡というような状態になっていた。
無論庚輔も横から掻っ攫うような真似をするわけにもいかない。
だが、ここで更なる条件の妥協は魔法使いとしての庚輔的にも一般人としての庚輔的にも許すことはできないラインでもあった。
もっとも、庚輔のコミュニケーション能力が平均よりも低いという理由もないこともないが、その辺の話は庚輔も自覚して目をそらしている。
それ以上に魔法使いとしての戦いから得てしまった庚輔の纏う空気が周囲の人間を近づけにくくさせている要因になっており、特に初対面では庚輔とにこやかに話せる自身があるやつなど高校一年の人間、それもなってひと月も経ってない中にそうそういるもんではない。
一人や二人話せるようになって仲が良くなり、そこから周囲の人間に広がってようやく「あ、こいつはこういうやつなんだ」という認識をもってもらわなければいつまでも勘違いをされたまま。
庚輔はそういう風に思われる人間であった。
そういった諸々の要因で今の状況になっているのは間違いないだろう。
「庚輔、ちょっといいか?」
「ん?」
悩む庚輔に話しかけてきたのは庚輔に誘われた形で同じ班になった大石直也だった。
それなりに話したことがあり、少々特殊な性格の人間の多い庚輔の班の取りまとめ役として抜擢されたのが班に誘われた理由の一部でもある。
が、そういった御託よりも強い理由として、彼が今のクラスの中で一番庚輔と仲良くしていることが挙げられる。
「一応確認なんだが、一緒に行動する女子ってあの子達でいいのか?」
そんな直也が今現在後ろで騒いでいる二人とそれを苦笑しながら見守っている三人へ目配せしながら庚輔に尋ねてくる。
彼の質問に思わず庚輔は「そうだが?」という意味を込めた視線を返してしまう。
庚輔は彼なりに同行するであろう班の人間のことを説明したつもりだったのだが、何か不足でもあったのかと思ってしまったのだ。
だが、直也が確認したのはそういうマイナス方面の意味というわけではなかった。
「いや、あの二人がいるならちょうどいい人間がいるんだが……」
「誰だ?」
これ幸いにと庚輔は真面目な表情で直也に詰め寄る。
残り一人というところで躓いていたのだ。これを逃せばチャンスはなかなかないだろうことは庚輔も承知だった。
だからこそ庚輔は真剣な表情へとなるのだが、いかんせん彼の表情はどちらかといえば強面に分類されるタイプのものである。
さすがにそれなりに仲良くしている直也でも庚輔の強面な顔つきにはまだ慣れきっていない。
いかにもこれから戦場――あくまで学生のイメージ上で――に行くような雰囲気を見せる庚輔に対してたじろがないというのは無理な話だった。
当然それは庚輔も気づいており、すぐに苦笑を浮かべて申し訳なさそうな表情となる。
「悪い」
「大丈夫だ。これが庚輔らしさだと俺は思ってるからな」
「そうか、そう言ってくれるとありがたい。だが、お前だけじゃないんだ。なるべく改善するさ」
「それでいいと思うぞ。結局は慣れだしな。こいつらもわかってるさ。それに、わからない奴に対してそこまで気を使う必要もないし、言いたい奴には言わせておけばいい」
謝罪する庚輔だが、直也はカラカラと笑いながら萎縮してる他二名の班員の肩を叩く。
叩かれた二人も庚輔が見た目で損している部類の人間だということは頭ではわかっているからこそ直也の同意を求める言葉には頷いている。
もっとも、わかってはいても反射的なものは直也の言うとおり慣れる以外にどうしようもなく、その表情は引きつってはいないものの苦笑を浮かべてはいるのだが。
閑話休題
逸れかけた話を庚輔はタイミングがいいとばかりに戻しにかかる。
「ところでさっき言っていたちょうどいい人間というのは?」
「ああ、それだがな。ほら、あそこで眠そうにしてるあいつだ」
教室の隅を指差す直也に釣られるように庚輔はそこへ視線を向ける。
そこには確かに直也の言うとおり眠そうな表情をしながら……というより明らかに半分寝ている少し長めの髪をした少年の姿があった。
彼の様子からおそらく話のほとんどを聞いておらず、班分けしていることにすら気づいていないのであろう。
確か……と庚輔は彼のことを思い出そうとする。
だが、彼の脳裏に浮かんだのは『根暗』や『オタク』と周囲から呼ばれていることしか思い浮かんでこなかった。
庚輔自身見た目や雰囲気を理由に周囲から『ヤンキー』などと呼ばれているためそのことで差別意識を持つことはないのだが、それは悪印象というのがないというだけで好意的な印象があるわけではない。
つまり何かしらの印象を持つほど特に興味すら持っていなかった存在ということである。
当然ながら庚輔の脳裏にそんな少年を信用していいのかという疑問が沸いてくる。
いくら直也の言葉を信用すると言ってもそれだけでその相手を信じれるほど庚輔も楽観的ではない。
「本当にあいつなのか? いくらお前の言葉でもすぐ信用というわけにはいかないのだが……」
「まあそうだろうな。だがその心配は全然大丈夫だ」
庚輔の不信感を持った言葉に直也は肩をすくめる。
その表情から彼の言うことはもっともだと言いたげだ。
実際に少年のことを信用するための材料は何一つないのだから仕方のないことである。
しかし次に直也から発せられた言葉で庚輔は手のひらを返すこととなる。
「あいつ、あの二人と幼馴染らしいんだと。しかもかなり長い付き合いで二人共かなり信頼しているらしい」
「ああ……なるほどな。確かにそれなら大丈夫か」
とてもわかりやすく信用に値する理由に寧ろ手のひらを返すどころか庚輔は気が抜けてしまった。
なんでこんなことに警戒心を抱いてしまったのだろうと思うくらいには理由が簡単すぎた。
寧ろこの情報を聞いて彼を誘わないという選択肢は庚輔の中からは消え失せていた。
由美と桃華が所属している班と行動をある程度共にするというのなら彼がいたほうがかなり好都合でもある。
確かに彼女等は庚輔達の班と行動を共にすることは了承しているが、それは友人である愛成や円が信頼している庚輔がいるからであって、決して庚輔のことを信用しているからではない。
つまり「まぁ、友達がこの子と一緒に行動したいって言ってるから別にいいよ」と言われているようなものだ。
当然彼を班に入れても庚輔ことを信用してくれるわけではないのだが、少なくともいくつかある壁の一つくらいは取り除くことができるであろう。
「なんでその情報を最初に言ってくれなかったんだよ……」
そんな打算を考えつつも、肩を落としてボヤきながら庚輔は即少年へ班への勧誘しに行くために足を向けた。




