第二十四話:班決め
新社会人となって書く時間が減った……
「授業でも昨日もやったけど、改めて自己紹介っす。うちは住吉由美っす。由美って呼んでくださいっす。円っちと愛成っちとはよく話しとるって感じかな? とまぁよろしくっす!」
一時間目を使ってのオリエンテーションの班決めが始まり、昨日のうちに話しを通していた追加メンバーである二人が合流した第二班では由美による三度目になる自己紹介が行われていた。
その行動に四人は苦笑しながらも自己紹介をしている。
なんだかんだ言いながら岬達もノリはいいのだ。
そして自然と最後となったもう一人の追加メンバーの番となった。
「ん、富雄桃華。桃華でいい」
眠そうな表情をしながらもしっかりと自己紹介をする桃華。
どこか既視感のある雰囲気で、少し茶色っけの入った長い黒髪を揺らしながら丁寧にお辞儀することから単に表情の変化が少ないだけだと伺える。
対して由美は茶色い髪を短めのポニーテールに結って円と同じように表情の変化が激しく、愛成のように人懐っこい少女である。
そして岬は自然と由美と桃華を見比べる。
(確かに大きい方と小さい方だね~……)
(でしょ?)
(いや、間違ってないけど……なんというか……この世の不条理を感じていたたまれないよ)
イリスの言葉通り由美と桃華を表現するなら大きい方と小さいほうだ。
だが、その姿は菖蒲の言うとおりまるでこの世の不条理を持って行っているかのようであった。
由美はその元気っ子からスポーツができるらしく、バレーボールをやっており、高校でもバレーボールをやると意気込んでいる。
そしてその素質があるのか、身長は180センチとかなりの高身長であり、この五人の中では頭一つ飛び抜けて最長を誇っている。
さらに胸もそれなりにあり、メンバーの中では二番目に大きいくらいだが、高身長の分いい感じの大きさであり美乳といっても過言ではない。
対して桃華は身長149センチ。
ここまでくれば胸も絶壁ということがわかるだろう。
当然ながらよく小学生と間違われることが多く、自分の体格がコンプレックスとなっているようである。
大人しそうな見た目も相まって非常に保護欲をそそられるが、本人は子供扱いされることを嫌がっている。
本人曰く、「せめて150センチは欲しい」、「膝の上に乗せて頭におっぱい乗せるという由美の抱き枕扱いから早く逃れたい」とのこと。
これだけ差がある二人が近くにいるというのはそれだけで不条理といってもいいだろう。
実際二人が並んで歩いていると、姉妹を通り越して親子と勘違いされることもしばしばあるらしい。
そのことには愛成ですらどう言う反応をすればいいかわからなくなっていた。
ちなみに桃華と背格好と雰囲気が似ている現在高校三年である若菜は、身長が150センチであるため、こちらはこちらでそれなりに闇が深いのである。
もっとも、昨日までは岬も「この二人を並べるのは忍びないな」と思っていた。
(本当に不条理なのは、この二人が幼馴染ということなのよね……)
内心でつぶやきながらがっくりと岬は肩を落とす。
岬も昨日円に聞かされて知ったのだが、由美と桃華は家が隣同士の幼馴染らしい。
小さい頃から何かと一緒におり、性格の違いから運動系と文化系に分かれているものの、常に一緒にいるような間柄である。
そんな二人の小学四年生の頃、急に由美の身長が伸び出した。
一気に150センチ後半まで伸びた由美に桃華は自分が遅いだけだと思っていたのだが、由美の成長は止まることなく、ぐんぐん伸び、スタイルも女性らしくなっていった。
逆に桃華の成長は小学六年生の段階で止まってしまい、スタイルはロリ体型。
今ではおおよそ30センチの差がついてしまい、似てないにも関わらず姉妹のように扱われるハメになっていた。
彼女達の同級生の中では「桃華の成長を由美が吸収した」などとまことしやかに囁かれているとかいないとか。
ちなみに由美の成長は未だに止まる様子を見せていないというのが桃華にとって一番の不条理であろう。
「とりあえず由美、頭から胸どけて。というか縮めて」
「二つ目は無理っす! 一つ目は……桃華っちが可愛いからパスっす」
「…………」
まるでお気に入りのぬいぐるみを抱きしめるように桃華を抱きしめる由美。
そんな由美に対して桃華がジト目で睨みつけるが、由美はどこ吹く風でさらにしっかりと桃華を抱きしめてしまう。
桃華も抜け出そうと抵抗はするのだが、そこは体育会系と文学系、びくともまではいかないが由美の拘束を抜け出せるほどのパワーは桃華にはなかった。
「ふはは~! さすがに体育会系のうちが力で文化系の桃華っちに負けるわけには行かないっす!」
「むっ……」
全力のドヤ顔を披露する由美の言葉にカチンと来たらしい桃華はかなり冷めた目となり、抵抗する動きを止める。
そして突然抵抗が弱まったことに由美がキョトンとしている間に、力を溜めるように握り拳を作ると。
「ふんっ!」
「げふっ!」
桃華なりの全力を込めた肘鉄を由美の脇腹に叩き込んだ。
力はそれこそ一般平均よりも低いが、由美の反応から桃華の一撃は相当いいところに入ったことが伺える。
そんな光景に岬も思わず呻くような表情をする。
(うわぁ~……いたそ~)
(綺麗にツボに入れたね……あの子)
女の子が上げていいような類ではないうめき声を上げて由美が蹲るのを岬の中で眺めていたイリスと菖蒲は由美の一撃をそのように評する。
確かにあれは痛い。
桃華の一撃が見事なまでにツボに入ったのだから当然だろう。
隙を突いたのもあるが、桃華の身長的にちょうどいいところにツボがあるのだ。
痛くないはずがない。
以前護身術を習うために軽くとはいえ食らったことのある岬は苦笑を浮かべながら由美に手を貸す。
「大丈夫ですか?」
「うぅ~……相変わらず綺麗に入れるっすね……」
「相変わらずって……言われてみれば何度か同じような光景見たことが……」
「そりゃ桃華っち可愛いんっすもん!」
「えぇ~……」
桃華にとってはあまりにもあんまりな言い草に岬も少し呆れ気味にため息をつく。
これが彼女なりのスキンシップなのだろうが、当の本人である桃華にとってはたまったものじゃないだろう。
なにせコンプレックスである身長などの面でいじられているわけなのだから。
怒るのは当然のことだ。
「好きでちっさいわけじゃない」
「いや~……うち、なんでか栄養がしっかりと綺麗に身体の育成に行くみたいで~」
「イラッ……」
「そんでもって桃華っちと成績は同じくらいなんすから、別に脳に行ってない訳じゃないっすね」
「絶対にその胸捥ぐ」
どこまでも陽気というか楽観的な雰囲気で自然と煽りに等しい言葉を並べる由美と、ジト目のまま表情を変えずに異様な雰囲気を醸し出しながら手をワキワキさせて由美に迫る桃華。
どう考えてもこれからキャットファイトになり得る状況である。
そんな二人のやり取りに周りには迷惑かけないようにねと声をかけた岬は肩を落として一線引いて見ていた円と愛成の場所まで戻ってきた。
別に仲が悪くてそうなっているわけでも、本当に険悪な喧嘩になっているわけでもない。
ただじゃれあっているだけの状況に、まだ知り合って間もない岬はそこまで付き合いきれなかった。
「ねぇ、あの二人っていつもああなのかしら?」
「そうみたいよ? わたし達も知ったのは先週くらいからなんだけど、見ての通り由美が煽って桃華がそれに乗るって感じでいつもやってるかな」
「でも大体桃華ちゃんの追求を由美ちゃんが飄々とした態度でなあなあにする感じかな~?」
ある意味で茶番とも言えるやり取りを流しつつてきぱきと班のメンバーを書きながら返答する愛成に、岬は「確かにそうかも」と苦笑を浮かべる。
由美の第一印象と彼女等二人の付き合いの長さを考えたら、誰でも納得できる話だ。
なお岬が苦笑した理由に愛成がちゃっかり書類仕事をやっていたことも含まれている。
そんなこんなで一段落付いた――由美と桃華の茶番は続いている――岬はやれやれと肩をすくめて、ひとまず目先の事をというように今回のオリエンテーションのしおりへと視線を落とすのだった。
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