親バカ日記一日目
「ぱーぱ、たかいたかぁいしてっ」
「もちろんだ愛娘ぇぇぇっ!」
「魔王サマ、領土の視察の時刻っす...ダメだ聞いてねぇ」
今日も魔王城に魔王(親バカ)の声が響き渡る
側近の言葉に耳を貸さず、幼い少女を全力で高い高いしてる姿は、百歩譲って子供好きのお兄さん(笑)、現実的にみればダメ親父である
側近のガーゴイル曰く、それでも王の位につけているのは本人のなんだかんだ積み重ねてきた功績らしいのだが...
「愛娘よ、楽しいかっ、楽しいのかっ」
「きゃっきゃっ」
「...あたらしいバイトでも呼び込むかな、いっそのこと」
明らかに疑いたくなる主の姿を見て溜め息を深く
ガーゴイルの気苦労は耐えないのである
こんなのがその昔、天界すらも引っ掻き回した問題児の一柱
『呑天夜叉』なのか、と
魔王とは、この世界における必要悪である
ある魔王は、子供の精神的な成長のための試練として
ある魔王は、文明の進歩の過程として
ある魔王は、悪を裁く悪として
それぞれの悪道を定め、野に、山に、谷に、森に、海に、世界のあらゆる所に潜む
この親バカも、その一柱
過去、上層世界である天界に他の魔王を連れ込んで殴り込みに行った伝説すら持つ、最強最悪の魔王
世界を、星のすべてを己の保持する夜闇へと沈めることすら可能な夜叉
『呑天夜叉』
未だ人族の間では母親の説教の代名詞兼子供の恐怖の象徴にすらなる巨悪
の、ハズ
一つ確実なのは.....
「ぱーぱ、もっと遊んでーっ」
「もちろんだ愛娘ぇえっ!」
「仕事しろ駄王ぅぅぅぅっ!!」
ガーゴイルの気力は本日も、削岩機でえぐられる勢いで削られることだ
呑天夜叉、そう呼ばれるにも理由があります
まずは、下らぬも平和な彼らを見守ってください