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人外領主の自由なLife  作者: 紙片
第1章 勇者と勇者
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第2話 都市

 都市ディファレアには様々な種族が住んでいる。通常、互いに相容れない種族同士が仲良く暮らし時には結ばれる事もある。その為、他種族同士では生まれにくい〈ハーフ〉と呼ばれる新たな種族が数多く存在する。中には、単一種族この世に1人しか存在しない種族が誕生する事もある。これは都市ディファレアに限った事であり、人亜領域にある国々の大半そしてディファレアを要する魔国でさえも災厄を招くとされる〈ハーフ〉は忌み嫌われている。勿論、強い力を持つ〈ハーフ〉は各国家喉から手が出るほど欲しい存在で、その力を支配する研究も行われていた。

 

 領主であるシキも単一種族に列せられている。その強力無比な特性、能力は各国家から恐れられだからこそ都市ディファレアは魔国に属しながらも、独立都市としての地位を得る事が出来ていた。

 本国からも疎まれ加えて、人族至上主義を掲げ亜人排斥に力を入れている聖王国からの暗殺者や騎士と常に争ってきた都市ディファレアには精鋭な兵士や騎士が数多く存在していた。マカルボネア・ネネもこの都市においてトップクラスの実力を持つ自由騎士団長の役職に就いていた。


 「あらぁ、領主様じゃないの。遅いわよ、待てなくてもういく所だったんたから!」

 身丈はゆうに3メートルは超える巨体にガッチリとした筋肉、おおよそ防具と呼べるものはなく最低限急所を守る物しか身に着けていない。体中にある傷跡がその荒々しさを物語っていた。彼が身につけている武器も通常の騎士が装備している物ではなく、体と同じ長さの巨大な棍の形をした丸太の様なものだった。中央の握る部分は大きな手の形で固められており、見た目は2つの巨大な金砕棒を握り手の部分で付けた見るものを威圧する形となっていた。


 「あ、ああ。悪かったな、団長。」

 俗に言うビキニアーマーと呼ばれる衣装に身を包んだネネ。長年の付き合いのあるシキでさえもその破壊力に後ずさる。


 「あら私の事は、ネ・ネでいいわよう。」

 シキも決して身長が低いわけではないが、ネネには敵わずその巨体を見上げる様にして会話をしていた。

  

 「あ!兄貴ー!おはよう御座いまーす!」

 シキの影からネネの姿を確認したミルが挨拶をすると、


 「お・ね・え・さ・ま……って呼べと言っただろが。」

 地獄の鬼も逃げ出す地声を響かせるネネ。周りの騎士達は慣れていないのか萎縮していた。

 腰を抜かす騎士を横目にミルは、


 「ごめんなさい。お姉さま。」

 臆する事もなく話しかけていた。このやりとり事態も何時もの事でミル達にとっては挨拶の様なものでああった。ミルとネネはお互いに似たもの同士兄弟姉妹といった非常に仲のいい関係を築いていた。ただし、他の人から見ると巨大な怪物がメイド服を着た美少女を脅している光景として見えていた。

 

 「いい加減にしてくれ2人とも。今はそれどころじゃないだろうが。」

 呆れ顔のシキ、頻繁に繰り返される光景に辟易とした様子であった。


 「もう。しょうがないわねえ。シキちゃんの頼みならいつでもOKよ。」

 語尾にハートマークが付いてきそうな口調で語り掛けるネネ。しかし、普段は男好きなマッチョだがいざという時には非常に頼りになる騎士である為市民から後輩騎士にまで様々な人物に慕われていた。


 「お前もだ、ミル。こんな時くらい真面目にやってくれ。」

 「はーい、領主様。」

 よく見るやりとりなだけに周りの市民達からは暖かい眼差しを受けていた。


 「しかし、最近多いわねえ。あちらさんもこんなに頻繁に攻めてきたら資金も底を尽きそうなんだけどねえ。」

 「何かがあるって事だろ。それに今回来ているのは恐らく本物の勇者だろう。今までみたいに名ばかりの……ではなくてな。」

 「う~ん。確かに本物が相手なら私の可愛い騎士ちゃん達じゃ役不足ね。」

 「それにいい加減うんざりなんだよ。何時も何時も、睡眠時間削りやがって。今度は徹底的に潰す。」

 シキにとっては死活問題である睡眠時間、それを邪魔する事は彼の怒りを非常に買っていた。


 「確かにシキちゃんにとっては死活問題ね。でも半分以上やつあたりじゃない。シキちゃんはちょっと寝すぎよ。」

 ネネからの突っ込みに口を噤むシキ。シキにとって能力の都合上人より多めの睡眠時間は必要不可欠ではあるが生来の怠け癖もありその時間はかなり過剰であった。

 

 「よっ!ねぼすけ領主様。あいつら早くなんとかしてくれよ。正門に陣取っているせいで商人連中が通れなくて困ってんだ。」

 商人の1人が声を掛ける。勇者率いる聖王国騎士団が人亜領域側正門前に数千規模の陣を敷いている為、ディファレアと取引に来ていた商隊が通せんぼをくらっていた。人類至上主義で悪名高い聖王国騎士団その近くで亜人や魔人と取引を行おうものなら悪即斬として切られてもおかしくはない。そんな危険を冒すものはなく皆、余力を残しつつも聖王国騎士団へと取引相手の変更を余儀なくされていた。


 「分かってるって。今何とかするから待っててくれよ。」

 古くからこの都市に住んでいる者は何時も通りの生活を営んでいるが、最近来たばかりの比較的寿命の短い種族は不安を隠せないでいた。度重なる襲撃を受けていた為、逃げ出そうとする住人も多々見受けられたが、前方には聖王国騎士団の軍勢に後方には環境の厳しい魔国逃げる場所など無かった。また、長年住んでいる住人達から引き止められた事もあり何とか落ち着いている状況であった。

 

 「昔から住んでいる連中にとっては日常茶飯事だが、新しくきた奴等からすれば命の瀬戸際だからな。」

 「ああ、だがそれも今日で終わりだ。」

 そこに普段のやる気の無い表情は無く、気迫漲る領主としての顔があった。

 正門裏には既に自由騎士団と領主近衛隊の両隊が数を揃えていた。正門含め幾つかの門は大型種も通れるようにと非常に大きな造りをしており、それに通ずる道や広場もかなりの面積を取っていた為数百程度の軍勢ならば余裕で収容する事が出来きる様になっている。

 それぞれ騎士団は灰色の甲冑に大盾を装備し、近衛隊は装甲付きの衣装に身を包んだ執事とメイドと混沌とした顔ぶれが揃っていた。

 しかし、そんな両隊ではあるが唯一共通するものがある。それは都市ディファレアそして領主シキを表す棺に鳩が組み合わさってある紋章であった。敵には災厄を味方には幸福を運ぶ象徴としてディファレアに属する者全てに与えられていた。

 その両集団を前にシキは、


 「あー、諸君。私はこの都市が好きだ。自由と責任を重んじ、美味しい食べ物がある。美女も揃っているし気持ちのいい気候に気のいい住人達、私はこの都市の全てが愛おしい。だが今、幸せの全てが詰まってるこの都市に攻め入ろうとしている憎き愚か者共がいる。奴等は傲慢な正義を振りかざしては破壊の限りを尽くす知性無き獣共だ!そんな奴等に奪われていいのか!?自分の幸せを、愛する人を……否、断じて否である!此度の戦はこれまでの小競り合いなどではなく、本格的なものとなるだろう。だが諸君ここで我等が戦わねば、守らねば後ろに控えている者達が蹂躙され欲望の限りを尽される運命を辿る事になる。進軍せよ!奴等に我等が強さを覚悟を思い知らせてやるのだ!」


 「おおおおおおーーーー!!」

 シキの演説により興奮した雄たけびを上げる騎士団、そして静に闘志を漲らせる近衛隊既に戦いへと赴く準備は万全を喫していた。

 

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