二章 三話
暁那です!
微妙に間が空いてしまいました・・・すみません。
俺は部屋に入って後ろ手で扉を閉めた。そして、空いていた椅子に座る。
ふと、さっきの男…秋桐さんの事が頭をよぎった。
「…やっぱり初対面じゃないような気がする。」
けど、どこであったかは思い出せない。ただその異質すぎる職については聞き覚えがある様な気がした。
「聖職者でありながら格闘家、か。」
一人つぶやき、それを振り払うように首を振る。
「……もう、止めた。」
そう吐いてから、俺は使い古したノートを開く。
ノートには見慣れた字がたくさん並んでいる。所々絵も加えながら描かれた俺の料理本は、もうこいつで5冊目だ。
そのノートのぼろぼろさ加減が、旅の長さを物語っている。
と、不意にノックが響いた。
「?はい!」
ノートを置いて扉を見ると同時に、その向こうから声がする。
「私だけど、入ってもいいかな?」
「大丈夫です。」
答えると秋桐さんが入ってきた。
「いや~。さっきは不意に来てごめん。」
向かいにあった椅子に腰かけるなり、秋桐さんは頭を下げる。
「それに、アリスの面倒を見てくれてありがとう。」
「あ、いえ。気にしないでください。俺はなにもやってないですから。」
むしろ女の子の家に居候させてもらってる立場だし…。
「……きっと、そんなことないよ。」
そう言って秋桐さんが笑った。
その言葉を最後に俺と秋桐さんは口を閉じてしまう。
しばらく妙な沈黙が流れた。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
その空気に耐えられなくなった俺が声を上げる。
「私が答えられることなら。」
「あなたと俺、どこかであったことありませんか?」
秋桐さんは宙をにらんだ。
「……さぁ。残念だけど、私はしらないな。」
「そうですか…。」
やっぱり、気のせいみたいだった。
「それじゃ、私も君に一つ聞いてもいいかな?」
秋桐さんがそう言って、俺の目を見る。
「はい。別に…。」
「…君は……人間族なのかい?」
一瞬の沈黙。
「…なんでそんなこと聞くんですか?」
「ただ、興味があるだけさ。まぁ理由をつけるとしたら、職業上いろんな種族と会うけど、弥涛くんのような雰囲気を持った子は初めてなんだ。だから、かな。」
思わず天井を仰ぐ俺。
「……そうでしょうね。」
そうつぶやいて、俺は秋桐さんを見た。
「…俺は龍人族です。」
秋桐さんの目が大きく見開かれる。
「……まさか、龍人の子だったとは・・・。」
そのまま言葉を失う秋桐さん。
「ヤトーっ!秋桐~!ちょっと来て~!!」
不意に響いた声で俺たちは顔を見合わせると、部屋から出る。