二章 話し相手
こんにちは、暁那です!
二章、お楽しみください。
次の日。
まだ日が昇り始めて間もないが、俺は弓矢を持って外へ出る。
まさか、あんなにすんなり家に泊めてくれるとは思ってなかった。
エルフについてどこの国で聞いても
『気高く、他者を信用しない』
とか、
『他の種族の者が来たら、容赦なく殺してしまう』
なんていう話ししかないから。
だけど実際のところ、これを言っていたほどんどが、一度もエルフに会ったことのない連中だった。
完全にエルフに対する偏見だ。
聞きながら、酷い奴らだ。と思っていた。
けど、思い返せば俺もそいつらと一緒だったかもしれない。
心のどこかで、エルフは無慈悲な生き物と決めつけていた。だから、アリスが言った一言にかなりの衝撃を受けたんだと思う。
「・・・人のこと言えないな、俺も。」
自然とため息がでた。それから、今まで考えていたことを振り払う為に頭を振ってもう一度前を見た時、目の前に小さな白い生き物が現れる。
白うさぎだ。
「・・・昨日の借り、返させてもらおうかな。」
そう小さくつぶやいて、俺は弓に矢をつがえる。
さすがのうさぎも俺の匂いに気が付いたのか、頭をもたげ周囲を確認し始める。そうして目と目があった瞬間。
俺の手から矢が離れた。
矢はあやまたず狙い通りの、うさぎの首筋に命中する。
この後もしばらく狩りをして丸々肥えた山鳥を一羽捕った。
それから血抜きをして、しっかり食べられようにしてから帰路につく。
部屋にまだアリスの姿はない。
「寝てるのかな…?」
つぶやいて俺は荷物を置くと、さっそく台所に立った。
朝食の準備だ。
うさぎの肉はシチューに。山鳥はぶつ切りにしてから串に刺して焼き鳥にすることにした。
定番な料理だけど、やっぱりこれが一番うまいし。
もう一息で完成ってところになって、扉が開いて誰かが入ってきた。
「おはよ、アリス。」
「・・・さっきから起きてたけどね。」
どこかつまんなそうにそう言って、アリスは椅子に座る。もちろんその手には魔導書を持って。
そんなアリスの前に、俺はできた料理を出してやった。
「はい。できたよ。」
一瞬怪訝そうな顔をするが昨日の流れもあり、何の抵抗もなくアリスはその料理を口にする。
そして、また目を丸くした。
「・・・おいしい。」
それからはもう、箸が止まらないようで一心不乱に料理を食べだす。
それを見ながら俺も食べ始める。
「あ、そう思えば。アリスは食べちゃダメな食べ物ってある?」
「僕はそういうの気にしてないから。」
その一言に思わず俺は首をかしげてしまった。
もっと一族のルールに厳しいもんだと思っていた。
もしかしたら、こんな幼い子がこんなとこで暮らしている理由になにか関係があるのかもしれない。
そこまで憶測を飛ばしたけど、結局それを聞く気は起らなかった。
「そっか。なら俺は、心置きなく料理を作れるね。」
そう言って笑うことにとどめてしまう。
それからしばらく、こんなふうに料理を作ってたわいのない会話をする日が続いた。