一章 二話
暁那です!!
今回はもう一人の主人公のシナリオとなります。
お楽しみください!!
俺の名前は、弥涛。
『一流の料理人になる』という自分の夢のために各地を旅してる。
で、今俺がいるのは「エルフの国」の森。まだまだ出入口だけど。
「エルフたちは王が指定した動物だけを食べるらしいから、指定されていない動物はきっとうまいはず!」
みたいなノリでやって来た。
「いや~。さすが大国と呼ばれるだけあって、デカいねぇ。」
思わず吐く俺。
入り口のわりには、門すら見えない。
「てかここ、本当にエルフの国なのか?」
気にはなるが、とりあえず足を進めてみる。
森に入ると、神聖な空気が全身を包む。
そこに立つ木々も、今まで見てきたものとは違うような気がした。
「エルフの魔力か…。すごいもんだ……。」
呆れ半分、感心半分な気持ちでつぶやく。
ここまでの空気を漂わせる森なんて、初めてだった。
と、目の前を小さな影が横切る。
なんだなんだと影を目で追うと、それはどうやら肥えた白うさぎのようだ。
「ぬおっ!!めっちゃ美味そうじゃん!!」
言うなり俺は矢をつがえてその背を追う。
なかなかすばしっこいヤツで、気を抜いたら逃げられてしまいそうだった。
ましてや俺にとってあまり慣れていない森の中を駆け巡ってくるのだから、そんなこと当たり前なのかもしれない。
そんなことを考えながら、うさぎが飛び込んだ小さな藪を俺は跳んで避け、もう一度矢をつがえようとした瞬間。
――――ヒトがいた…。
思わず追っていたうさぎから視線を外し、そちらを見る。
すると、小さな女の子と目があった。
白金色の長い髪を一つにまとめたその姿は、ぱっと見まだ十二、三といったところか…。
確かに綺麗な髪の色だがそれよりも俺を惹きつけたのは、その澄んだ紫色の瞳。それはどこかの国で見た、紫色の水晶にとてもよく似ていた……。
そんな少女は少し驚いたように眼を開く。だがそれも一呼吸する間に消え、今度はあからさまに警戒しているような鋭い眼に変わった。
慌てて弓矢を片付ける俺。
「あ、ごめん。べ、別に君を襲うつもりなんてなかったんだ…。」
それでも、あまりその眼が変わることはない。
「…。俺の名前は弥涛。君は…?」
「―――アリス。」
しばらく間をおいて、そう答えが返ってきた。
せっかく話せるに会えたんだし、ここは宿の場所を聞くべきか…。そう考えた俺は、早速聞いていく。
「今泊まれる場所を探してるんだけど、どこかにいいところがないかな?」
「……僕の家でいいのなら、泊まっててもいいよ。」
ぶっきらぼうに発せられた意外すぎる言葉の後の沈黙。
それは、俺が今の発言を理解するのにかかった時間なのかもしれない。
「ほ、本気で言ってる…?」
つぶやくとアリスはこっくりとうなずいて見せた。
「けど、襲う気ならそれなりの覚悟はしてね。」
さらりと吐いたはずの言葉なのに、殺気らしきものが伝わってくるのはなぜだろうか?
まぁ、どうにせよ泊まる場所は確保できた。
「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな。」
これが、彼女と俺の出会いだった。