昔々あるところに_005
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
モグさんはとても貧乏でしたので、
いつも『お金が欲しい、お金が欲しい』と言っていました。
あるとき、牛丼屋に置いてあったチラシの広告を見ました。
その小さなコラムには
<話題沸騰!貸した金が倍々になって返ってくる。
十日でお金が倍々、(株)マジックインタレスト、お電話は○○○−○○○……>
と書いてありました。
モグさんはその広告を見たとたん、居ても立っても居られなくなり、電話を掛けてみました。
「もしもし。広告で見たんですが、十日でお金が倍々というのは本当ですか?」
「本当です。我が社は特別な投資会社でして、お金を効率よく回転させております。出資者の方々には先着順に利益を還元する方法をとっており、良心的だととても皆様に喜ばれております」
モグさんはすぐに(株)マジックインタレスト・新宿支店に飛んでいきました。
それはモグさんの自宅からほど近い、商店街の片隅にある、崩れかけたビルの一室でした。
トントン
ドアをノックして入りました。中には、顔に傷跡のある、ひげを生やした強面の男が一人座っていました
「では、ボクのお金もお願いします」
モグさんはそう言ってなけなしの全財産10万円を差し出しました。
「よろしい。預かりました。この書類にサインを」そう言って男は入会案内書をテーブルの上に広げました。もぐさんは
「これで十日後には10万円が40万円になって帰ってくるのですね」
「そうです。あなたは運がいい。もうすぐ会員数が定員に達するので、
新規会員募集をやめる瀬戸際だったんですよ」
「そうか、ボクは運がいいんだ……」モグさんは喜んで書類にサインしました。
そして十日後
(株)マジックインタレスト・新宿支店に行くと
ドアの上に白い貼り紙がしてありました
【(株)マジックインタレスト・新宿支店は、経営悪化のため営業を停止することとなりました。
関係者のかたがたに多大の迷惑をおかけしたことをお詫びいたします】
と書いてありました。
モグさんは一瞬、何がおきたのかわかりませんでした。
そしてその紙の端っこにマジックでちいさく
「バイバイ」と書いてあるのを見ました。
あああああああああああああああああああああああああああああああ