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空を飛んだ日

作者: 高橋りゅう
掲載日:2014/01/09

「空はきっと飛べる」



 僕にはひとつの夢がある。


 それは、空を飛ぶことのなかったじいちゃんの形見を空に飛ばすことだ。


 そんな僕の言葉に、大人たちは「馬鹿なことを」と笑った。


 そんな僕の言葉に、子供たちは「いつまでもガキだ」と笑った。


 だけど、どんなに笑われても僕はあきらめずに空を見上げていた。

 



 僕は学校が終わると、図書館に行ってどうやったら飛べるかを調べたり独自に研究した。

学校の先生に相談しても笑って相手にしてくれなかったからだ。

そんな僕を大人も子供も「いつか飽きるだろう」と笑っていた。

でも僕は調べるうちにいろんな可能性に至り、胸をおどらせる毎日だった。



 ある日、とても風が強い日だった。

僕は学校で、今までの研究を書き記したノートを思わず強く抱きしめた。


 今日ならいける!!


 学校が終わった途端に駆けだした。

いつも図書館に向かっていた足を家に向ける。

家に着くと母さんが庭にいて、風が強いことに愚痴を言いながら洗濯物を取り入れている。

そんな母さんに「ただいま」と走りながら声をかけ、返事も待たずに家に飛び込む。

そして僕の部屋に大事に置いていたじいちゃんの形見を手に取って見つめた。


 じいちゃんが生きているときに飛ぶことのできなかった君を、今日、僕が飛ばせてあげるからね。


 そう心の中で語りかけると、僕は2階のベランダに出た。



 風はまるで誘うようにびゅうびゅうと吹いている。

今まで研究していた僕にとって、絶好の飛行日和に思えた。

僕は期待に痛いほど高鳴る鼓動を必死におさえながら、ゆっくりとベランダの柵に近づく。


 毎日見上げていた空が近く、そして慣れ親しんだ地面が遠い。


 ベランダの柵のギリギリのところに立つと、一度深呼吸をして柵から身を乗り出す。

庭にいた母さんがそんな僕に気が付き、小さな悲鳴を上げるのがわかった。

だけど僕の身体を止めることはもう誰にもできない。


 僕は、風にまかせるように、その手をゆっくりと離した。











 飛んだ!


 飛んだよ、じいちゃん!!



 じいちゃんの形見は風に乗り、見る間に高く高く飛んだ。

それはまるで空に吸い込まれるかのように見事なものだった。

庭で目を見開いて声もなく驚いている母さんを見下ろし、僕ははしゃいで叫んだ。


「母さん、見てよ! とうとう飛んだよ!!」


「コラァ!! じいちゃんのふんどしを飛ばすなって、あれほど言ったでしょうがぁ!!」



 ベランダに立つ僕と庭にいる母さんが見守る中、じいちゃんが愛用していたふんどしは、お隣さんちの屋根の上にあるアンテナに引っかかって空中散歩を終えた。





うちのじいちゃんはふんどしとブリーフの兼用でした。

ふんどしは生地が薄くて軽く、しっかりと洗濯バサミで止めておかないとすぐに飛ばされて探すのが大変でした。

小学生のときに手ぬぐいと間違えたこともありました。


空に上がる凧を見て、じいちゃんのふんどしを思い出したお話でした。

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― 新着の感想 ―
[一言]  はじめまして、上村夏樹と申します。  ちょっといい話だと思ったので油断していました。感動系なら、じいちゃんとの思い出とか、もっと研究している様子をみんなに馬鹿にされるシーンとか、そういう…
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