気持ちだけでいつもと違う
私は今まで本当に人を好きになったことがなかったんだろう。
睦と出会って私は気付いた。この人が私にとっての運命の人だってことを。
できることならずっと一緒にいたい、昨日だけじゃなく今日だけじゃなく
仕事の日だって一緒にいたい、それくらい愛おしい。
「ねえ、睦」
ベッドの中、彼が私のことを見る
「これって夢じゃないよね」
「そうだね」
「今日は帰っちゃうの?」
「うん、一応実家暮らしだからさ」
「そっか」
「嫌だ?」
「嫌だ・・・けど仕方ないもんね」
季節は夏の暑いさなかだっていうのに、私の中では春真っ盛りだ。睦が帰ってから家の中を片付け、シャワーを浴びる。丁寧に体を洗う。私の動作のすべてに彼がうつっているような気がした。
月曜日。また一週間が始まった。でも私にはそれさえ清々しかった。目に見えるものがすべてバラ色に見える。たった一人の人、睦と出会っただけでこんなにも世界が変わるなんて知らなかった。
「あ、大野さん」出勤してきた米山さんが私を呼び止めた。
「土曜日はお疲れさました。また飲み会やりましょうね」
いつもは局だとか言って私のことなんて挨拶もしないような人なのになぜ突然話しかけてきたのかわからない。きっと私が睦と一緒にいたのを知っているのだろう。
「そうですね」私はこんなにも自分が余裕でいられるのが不思議なくらいの微笑みで返事をした。
余裕。だって私は睦と結ばれているから。二人の絆は誰にも切れやしないんだ。
「土曜日はお疲れさまでした」
私の隣の席には主任が座っている。飲み会を企画してくれた一人だ。
「大野さんもお疲れさま。ちゃんと家まで帰れた?」
「はい」
主任は知らないのか。睦が私のことを追いかけてきたことを。
席についてあたりを見回す。営業の人たちが事務所に入ったり出たりしている。
睦がいないかな、と探したけれど今日は会えなかった。




