やれることをやるだけ
休憩室の中の話題が変わっても私はしばらくドアの前で立ち尽くしていた。
心の整理がつかない。
最近連絡が途絶えたのも会えなくなったのもそのせいだったんだ。
新井さんと会ってたんだ。
私にしてくれていたこと、あの笑顔もきっと新井さんに見せてるんだ。
そう考えると空しくなった。
何も疑うことなくずっと待ってた私がばかみたい。
休憩室に入ると、米山さんたちがまだ話をしていたけれど私がよほど憔悴しきっていたんだろう
「大野さんなんか顔色良くないですけど、どうしたんですか?」
米山さんが心配そうに聞いてきた。
いえ、何もと言うのが精一杯だった。すぐに声がつまって涙があふれてきた。
驚いたのは米山さんたちだ。
でも私だってこんなところで泣くつもりなんてなかった。
「彼と・・・最近会えなくて」
私はなぜか話し始めていた。
「連絡もなくて・・・私どうしたらいいのかわからなくて・・・」
米山さんたちは困っていた。冷静に考えたらどうみても私はおかしい。
急に髪を染めて高校生みたいな服で仕事に来だしたかと思えば、突然泣き出して彼と会えないなんて話している。
それまでも職場の女子とはそんなに話もしなかったけど、睦と出会って私が変わってからは明らかに誰も私と話そうとしなかった。でも別に構わなかった。私には睦がいる。それだけでよかった。
「そうだったんですか・・・。でも別れようって言われたわけじゃないんですよね。そしたら一人の時間を楽しむってのもいいんじゃないかって思いますよ。ね?」
米山さんが周りに同意を求めていた。
一人の時間なんて楽しみすぎてもうお腹いっぱいなのにこれ以上どうすればいいんだって思ったけれど言わなかった。それよりも私にはやることがある。
休憩後、職場に戻ると主任の席へ向かった。
「あの、さっきの話なんですけど」
「さっきの話?」
「北海道に行くって」
「あぁ、いや大野さんはそんな考えなくていいんだよ。ただの雑談だからさ」
「私は行かないです」
「あ、そうだよね。うん、それがいいよ」
「そのかわりってわけじゃないんですけど、新井さんなんかどうかなと思うんですけど」
「新井さん?なんで?」
「うちから誰か一人ってしたら仕事の量とか考えて新井さんがいいかと思ったんで。ただそれだけです」
数日後、新井さんが来月から北海道に行くことになったことを主任から聞いた。




