知らないほうがよかった話
睦と会えなくなって二ヶ月になろうとしていた。もう睦といっぱい愛したあの感触も忘れかけてきている。完全に忘れてしまうまでに会えるだろうか。
ただ、常に年下でいたいから仕事にも渋谷で買った制服みたいなブラウスに膝上15センチのチェックのスカート、紺のハイソックスで来ている。いつ睦と会ってもいいようにメイクも髪も常にぬかりはない。
一人の休日は渋谷をふらつくようになった。欲しい服があったら買うし、いろいろ見ているだけでも楽しくなる。まさか私がこんなにおしゃれに興味があるなんて思わなかった。睦と出会ったから私は変われたんだ。
街を歩いていて声をかけられることも増えた。ナンパも初めてされた。高校生?って聞かれたのが嬉しかった。そんなことをして一人の休みが過ぎていく。
楽しいのかな。寂しい。できることなら睦に会いたい。それだけで私はこの先ずっと希望を持って生きていけるのに。
「大野さんにちょっと相談があるんだけど」
主任が私のところへ来た。
「北海道に行ってみたくない?」
「え?」
「いや、こっちから北海道支店に一人くれって言われててさ。でも遠いから誰かいい人いないかと思ってね」
もちろん大野さんでもいいんだけど、いろいろ大変みたいだし。と主任は付け加えた。
「それは私に行ってほしいってことですか?」
「いやいや、むしろ大野さんが行きたいって言っても俺が止めるよ。」
「はぁ・・・」
「大野さんが抜けたらここが大変なことになるからね」
「そうですか」
いっそのこと北海道に行ってやろうか。睦からは相変わらず連絡がない。私は従順に待っているだけ。
それなら私も連絡しないで北海道に行ってしまいたい・・・
そんなことを考えながら休憩室のドアを開けようとした時だった。
米山さんたちが話している声が聞こえた。
「えっ!?それどこ情報?」
「営業の松谷さんって知ってる?栗原さんと仲いいらしくて聞いたんだって。もう半同棲状態らしいよ」
もしかして私のことがばれた・・・?だから最近ずっと睦は避けているのだろうか。
「昨日も行ったみたい。家に」
「すごい!まさかこんな近場で彼女なんて」
昨日・・・?私のところには来ていない。いったい誰のこと・・・?
「新井さんって全然目立たないタイプなのに意外とやることやってんだね」
新井さん・・・。
なんで私と一緒の班の人と半同棲してるの?
なんで私じゃないの・・・?
ずっと待っていたのに。




