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退屈な毎日

うちの会社の会長の息子がこの営業所にいるらしい。

というか、ついこの間配属されたらしい。私はそういう情報に疎いから全然知らなかった。


米山さんたちは、噂好きだしいつもぎゃあぎゃあうるさいから

「ていうかこれで息子と付き合ったら超玉の輿じゃない!?ちょっと、誰か近づいてよ!」

なんて言って騒いでいたけど私は別に大して興味も何もない。

だって、息子は営業で私たちは事務。そりゃあ営業の人たちの仕事のサポートをするのが私たちの仕事とは言っても個人的に近づく機会なんてなきに等しいんだ。

現に私はもうかれこれ7年この営業所に勤めているけど営業の人と個人的に飲み会みたいなことをしたことなんて一度たりともないからね。


大津運送といったら、一応業界2位のまぁ大きい運送会社だ。

私が大津運送に入社したのは、大学を卒業して新卒として入った7年前のことだった。

この会社にはたくさんの営業所があってその中の一つ、丸の内営業所に私は配属された。


丸の内営業所は全国で100以上あるうちの営業所の中でも最も規模が大きい営業所で

営業と事務を合わせるとたぶん500人以上はいるんじゃなかろうか。

ちょっとした中小企業一つ分よりも大きい営業所なのだ。


だから、息子が丸の内に配属されるのは当然といったら当然なのかもしれない。

ここは人が多いだけじゃなく、仕事も一番忙しいと言われているから。


息子の名前は栗原睦というらしい。

息子がここに来てからその話題で持ちきりになっている。

米山さんたちの話は聞きたくなくても聞こえてくるけれど、名前も彼女たちが話しているのを聞いて知った。


栗原さん、か。そういえばこの前電話で話をしたなぁ。

私の仕事は営業からの依頼を受けて書類を作ったり、そのほか営業の人たちが営業を円滑に進めるための諸々の雑用ってところだ。

だから営業の人たちの名前はだいたい知っているし、事務所に戻ってきた時は少し話をしたりもする。

栗原さんというのは前に一度何か書類を作ってほしいと言われて作ったんだった。

でも、別にそれ以外の大した話もしていないし、全く印象に残らない人だった。


「大野さんは栗原さんとお話したことあります?」

普段は全然私のことなどいないものとしてところ構わず話をしている米山さんが珍しく私に話を振ってきた。


前に一度電話で話したことがある、と言うと彼女たちは浮き立った。

「えー?どんな感じだったんですか?かっこいいですか?」

「はぁ・・・ちょっと話しただけだから全然覚えてないですけど。

それにかっこいいかどうかはわからないです」


私がそっけない返事をすると、少しばつの悪そうに米山さんは、そうなんですかぁ、と独り言のように呟いてまた他の人たちと話を始めた。


私が入社した時にいた女の先輩たちはみんな辞めてしまったから今では私が一番上になってしまった。

米山さんは私の2年後に入ってきた後輩で、入社直後こそ仕事を教えたり身の回りの世話みたいなことをしていたけれどだからと言って特別親しいわけではない。

私はどうやら局らしい。この春に入社してきた金子さんというギャル系店員みたいな後輩に先輩風を吹かせて米山さんがそういうことを話していたのを聞いた。

大野さんは丸の内のお局さんだからね、誰も逆らえないんだ、と言っていた。

そうなのか。私はそんなつもりは毛頭ないんだけどな。


そんな定説があるからか、仕事以外で私に話しかけてくる人はほとんどいない。

なぜか私に人事の相談をしてくる係長とよくわからない雑談をふっかけてくる主任くらいだ。

でも私も別にそれで構わない。私は米山さんたちのように服に給料のすべてをつぎ込むとかいうこともないし、はっきりいってあのテンションに合わせて話をしていたら疲れる。疲れるのは仕事だけでいい。


仕事は5時に終わる。残業はほとんどない。

もちろん残業をしたら残業代はつくけれど、先月の給与明細を見たら残業時間が一ヶ月で15分だった。

それでも1,500円の残業代がついているのだからなんだか申し訳なくなってくる。


仕事が終わって自宅のある北千住まで電車で25分。

マルイの地下で買い物をしてぶらぶらと家に帰って6時半。

夕食を作ってテレビを見ながら一人で食べて12時には寝る。

そんな生活をもう7年もしている。

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