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周りのために

これは一人の男子高校生の大学受験の物語。

自転車を漕いで田んぼの真ん中に通る舗装の悪い道を走る。4月中旬というのにもう暑い。信号待ちで学ランを脱ごうとしたけど案外速く信号が変わってしまった。


一章:分岐点

「快音!何点だったんだい君は。」

肩を組みながら暑苦しく聞いてきたのはお調子者の森井。

「え?89点。90行かなかったから微妙かな。」

「は?煽りかよ。」

僕が驚いた表情をすると森井は笑いながらつづけた。

「冗談やって。ほんとお前は優等生だな。」

愛想笑いをすると彼はまた他のとこに点数を聞きに行っていた。僕は自分のiPadに表示された点数を見直す。僕が高2になった今年からテストは生徒一人一人が所有しているデジタル端末で返却されるようになった。今回返ってきたのは化学基礎の総復習テスト。春休み明け初日にあった実力テストの一つだ。(橘快音 89点 学年平均64.3点 学年順位7位/312位中)上に6人か、、、。あいつは100点で1位なんだろうな。


授業がおわり、新しいクラスメイトと軽く会話して教室を出る。新しいクラスは悪くない感じだ。でもたぶんサッカー部の方が居心地はいいんだろうな。部室は僕にとって第二の家だった。


部室に着くとみんなそれぞれ準備をしていた。僕らのサッカー部は受験を意識するせいか、3年生は去年の新人戦で引退した。これはサッカー部の伝統であり、この伝統のおかげかサッカー部の進学実績は学校の中でも群を抜いていた。


今日は顧問が新入部員へ説明会をしているらしいから2年だけで自由に練習しろとのことだった。ソックスを履きながら瀬戸祐樹とうっちーこと内野拓馬に化学の点数を聞く。

「まじミスった。70点だった。」

珍しく高得点でなかった瀬戸はなぜかお茶らけている。

「うっちーは?」

「おれは96。初1位っす。」

まじか。うっちーに負けてるのか。

「快音は?」

「え?89。」

「いいやん、いいやん、まあ実テだから。」

瀬戸は吹っ切れたように言った。瀬戸の機嫌がいいのは最近は彼女とうまくいっているからかもしれない。瀬戸とうっちーとはサッカー部に入ってすぐ仲良くなった。勉強も同じくらいのレベルだったからライバルっていう感じがあった。僕と瀬戸は理系でううちーは文系。1年のころから全員違うクラスだけど部活がない日は3人で図書館に行って勉強していた。


日が落ちかけてボールを回収していたところに顧問の鈴木和馬が戻ってきた。

「一旦集合!」

野太い声で号令がかかる。片づけを中断して部員が小走りで集まってくる。

「えー、まずは練習お疲れ様。まあ、時間が来たんでこれで今日は終わってもらって、、。あと、明日から1年も参加するからよろしく」

最後に思いだしたように言う。

「あ、それと今週は部室チェック、サッカー部担当だから誰かやってくれるかな?よろしく。」

そういうと顧問は校舎に戻っていった。僕らの顧問はあまり厳しくはない。学生時代サッカー部だったことで顧問をやっているらしい。

周りでだれが当番をやるか、ざわついている。どうやら押し付けあってるようだ。

「いいよ、僕がやってくから。」

だいたいみんなが嫌がることは僕が引き受けるのがいつもの流れだった。僕が答えるとみんな喜びながら荷物をまとめ始める。

「いいの?任せちゃって。おれも残ろうか?」

「いいよ。瀬戸は塾あるだろ。」

「悪いね、いつも。ありがとう。」

瀬戸は今月から進学塾に通い始めていて、部活がある日は急がなければならなかった。こういうとき瀬戸だけはお礼を言ってくれる。勉強も人間性も容姿もあいつにはかなわない。だけどサッカーだけは同じ右ウイングでポジションがかぶっていたが僕がスタメンだった。


すべての部活が終わるのを待ち、野球部の面々が駐輪場に行くのが見えてからボールをもって部室に向かう。チェック表を見ながら歩いていると(サッカー部、陸上部)と書かれていた。今週は陸上部とのチェックらしい。部室棟に着くと陸上部のジャージを着た女子と制服を着た女子が奥の方でしゃべっている。

「あ、陸上部のチェック担当すか?」

「うん、サッカー部だよね?私っちでこっち確認するから、あと半分よろしくお願いします。」

「ういっす。」

あれ、あんな子いったけ、、、。1年?いやにしては手慣れすぎてる、、、。チェックが終わり、2人りがいた方に戻る。

「あれ?やっぱり快音くんだよね?」

暗くてよくわからなかったけどよく見たら制服を着た方は去年同じクラスだった木本倫だった。

「あ。お知り合い?」

ジャージ姿の方がきいてくる。

「うん。去年同じクラスだった。」

「へー。そうなんだ。」

興味深く聞いてきた割には返事はそっけなかった。

「これサインお願い。」

チェック表を渡す。

「たちばなかいとくん?じゃ、今週はよろしくね。」

「よろしく。、、、名前は?」

「私?安藤桜。」

あんどうさくら?やっぱり知らない。高校入学して1年経つのにまだ見たこともないような人いるんだ。まぁ8クラスあるからそんなもんか。

「これ職員室に出しに行かなきゃなんだよ~。」

「えー。運動部大変なんだね。」

二人が話している。

「僕、出しとくんで。」

「え?いいの?」

ジャージの方が聞いてくる。

「快音くん、優しいねぇ。」

木本さんが言う。

「じゃあ、お願いしていい?明日は私行くから。」

チェック表を僕に渡すと二人は駐輪場に消えていった。


職員室で顧問にチェック表を渡すと、いきなり改まって話し始めた。

「やっぱり、橘だったか。いつもこういう立ち回りだな。」

「まぁ、遅くまで自主練できるんであんまり気にしてないすよ。」

「そうか、、、。視野の広い考え方だな。サッカーのプレーと同様。」

「いえ、、。では失礼します。」

「なあ、部長とかは興味ない?」

僕らサッカー部は3年生が引退してから未だに部長が決まっていなかった。

「自分がすか、、。」

「そろそろ決めないとまずいしな。おれは橘がいいかな。適任だと思う。」

「考えときます。」

顧問まで僕に頼るんか、、。まぁ。悪い気はいないか。


すっかり日が暮れ、駐輪場には自転車は数台しか残っていなかった。スマホにはお母さんからのメッセージが来ていた。「今日は遅くなるの?もし余裕あったら牛乳買ってきて。」


翌日部活が終わり、部室に行くと、陸上部のあの子が制服姿で英単語長を見ながら座っていた。きれいにまとまったボブの髪が風になびいている。

「お疲れ様。今日は部活休みだったんすか。」

「あ、お疲れー。休みの部活にも当番やらせるこの制度やめてほしいよね。」

「そうだね。てか今日は木本さん一緒じゃないんだ。」

「そう。なんで?」

「いや、仲良さそうだったから。」

「あーね。中学から一緒だから。」

部室をチェックした後、チェック表を持って校舎に行こうとする。

「私いくよ!」

「いいよ、気にしないで。」

「悪いから、ついてく。」

なんだそれ。帰ればいいのに、、、。まぁいっか。


職員室から二人で駐輪場に歩いて行った。

「南丘中出身なんでしょ?」

「え、そうだけど。なんで知ってるの?」

「倫ちゃんから聞いたよ。」

「あ、なるほどね。」

この人何?僕に気があるんかな。なわけないか。てかなんか話さないと、、、。

「えーっと。陸上部なんでしょ。足速いのうらやましいな。」

自分でも何を言っているのかわからないくらいの早口だった。

「私マネージャーだよ?」

食い気味に突っ込まれる。

「あ、ごめん。」

「ほんとにサッカー部?なんか全然チャラくないね。」

なんか、脈無しみたいな言葉だな。え?脈無し?何言ってるんだ自分。帰りの方向を聞いたらまさかの同じ方向だったので嘘をついて別の方向で帰った。普段から女の子と話し慣れていないわけではないが、気を使ってしまうので、こうするしかなかった。


このとき、この子が僕の受験人生を狂わすとは思ってもみなかった。


二章:広がる視野

「まだ勉強するの?」

お母さんが眠そうに聞いてきた。

「うん。これだけ解き切りたくて。」

「そう。明日試合あるなら無理しないでね。」

この夜の一人になったリビングで勉強するのが一番集中できたし心地よかった。最近習い始めた三角関数の応用問題の答えを見る。ノートに力強く赤丸を付ける。頭を使う問題に正解できた時は最高に楽しい。中学の頃高校受験のアドバイスを求めたところ数学の先生に「勉強は楽しんだもん勝ち」と言われた。それを聞いてから楽しんで勉強するように意識している。一区切りついて自分の部屋に向かう。家ではリビング以外では勉強しないと決めていた。そっちのほうがけじめがついてリラックスもしやすくなる。


部屋に入り電気をつけると背番号7のサッカー日本代表のユニフォームが目に入ってくる。ちょっと古いけど久保建英がオリンピックで着ていたモデルだ。同じ左利き、同じポジション。ずっと憧れてきた選手だ。明日はインハイの予選。荷物をまとめる。ユニフォーム、ソックス、すね当て、、。ある程度支度が終わりベッドに転がる。


「うっちー、ナイスゴール!」

「いや、快音のパスのおかげよ。」

インターハイ3年がいないチームは僕らの高校だけだが、なんとか1回戦を突破した。試合後みんなそれぞれプレーを語り合ってる。やっぱりサッカーが好きなのはみんな同じ。新しく入ってきた1年生もいいやつが多かった。挨拶をして帰ろうとすると顧問に声をかけられた。

「広い視野を生かしたいいパスだった。ナイスゲーム、キャプテン。」

「ありがとうございます。」

「おい!明日はさすがにオフっすよね?部長!」

2年のみんなが僕の周りに群れる。

「はいはい。ゆっくり休んでください。」

そう答えると歓声が沸く。部長、、最初は不安だったけど何とかなりそうだ。


週明けの放課後、担任の青森美智子先生がいる教室に入る。40代くらいで僕の高校では珍しく厳しいといわれる女性の先生だ。だけど生物と化学を選択している僕にとって物理担当の青森先生は担任だけどあまり縁がない。今週はテスト後に毎回先生と生徒が学業について話し合う進路サポート週間だ。先週すべて返却された1学期中間テストの結果を眼鏡越しに鋭い目つきで見ている。

「数学9割、理科はどちらも8割、悪くないんじゃないですか。」

淡々とした口調だが冷静に分析してくれている感じがして信頼できた。

「そうですね。文系教科が課題ですかね。」

「ええ。よく分析できていますね。ところで志望校は?」

「九州大学です。」

「今のあなたの実力がキープできれば十分狙えるところですね。まぁ、あなたは分析もしっかりできてるようなのであまり言うことはありません。ただ、広い視野を持って計画を立てるのは大事になってきますからね。あなたのような志望校の場合。」


少し日が長くなっただろうか。小走りでサッカー部の練習に戻る。途中で生徒会がなにやら飾りつけのようなものを校舎に張っている。そういえば来週から文化祭の準備が始まるんだった。


3章:Who is she?

「あと二回しかなんだよ、文化祭!」

「ねえねえ、模擬店早くならんどこー!」

女子たちが興奮気味に小走りで消えてゆく。

「快音!うっちーもうポテト買いに行ったって!」

瀬戸があきれた表情で駆け寄ってくる。

「え?ここ集合って言ってなかった?」

「いいから、行くよ!」

「まじか。」


模擬店のごみを片手に話始める。

「そろそろ、僕行かないと。」

「4組のお化け屋敷のシフトか、、。あとで見に行くね。」

「快音、シフト?またやらされてるん?」

うっちーが怪訝そうに問う。

「いいの、いいの。案外あれおもろいし。」


「ねえねえ、もう入っていい?」

ふわふわとした声が聞こえて顔を上げる。安藤桜だ。となりには木本さんもいた。

「あ、うん。」

出口にいる森井がグッドサインをしたので中に通す。お客さんが来るたびに業務的に振っていた手がなぜか、今回はすっかりやり忘れた。


日が暮れ、靴箱でJリーグのネット記事にくぎ付けになっていた。

「かいとくん!」

「え?」

「お疲れ様、文化祭、楽しかったね。」

心地よいふわふわした声に顔が熱くなるのを感じる。

「なんで私たちのときだけ手振ってくなかったの?」

「いや、忘れてたわ。」

乾いた口からは、変に冷たい言葉しか出てこなかった。

「かいとくんに手振ってほしかったな。」

「また、機会があったら手、振ってあげるよ。」

なぜか今度はかっこつけた言葉が出てくる。出てくる言葉の情緒が三次関数のグラフを描いている。

「ホント?楽しみにしてるね?」

きれいな黒い瞳に視線が移る。

「じゃあ、またね。」

「まって、一緒に帰らない?、、一人なら。」

時が止まっていた。ように感じた。いやなにか別の世界に飛ばされたような、なんかそんな感覚。

「え?道違うんじゃなかったっけ?」

「いや、この前は用事があって、、」

「じゃあ、同じ方向ってこと?」

「そう。」

「そうだったんだ。じゃあ一緒に帰ろう。」

「帰ろう。」、その言葉が頭の中で心地よく響く。くせがあるというか中毒性のある声だった。

それは僕が初めてほかの人を何かに誘った瞬間だった。


少し大きめな交差点んでブレーキをかけた。

「じゃあ、ここでお別れかな?」

「そうだね、じゃあまたいつか」

「いつか、って。また誘ってよ!」

小柄な体で自転車を頑張って漕いでる感じで子犬を見ているかのような気分だった。


4章:変わる曲調

「快音、隠したかったとしても無駄よ~。」

うっちーの甘ったるい声がする。

「何が?」

本当になにも思い浮かばなくて少しぞっとした。後ろから瀬戸もにやつきなが続く。

「彼女、できたでしょ。見ちゃったよ。」

「見たって何を?」

「一緒に帰ってるでしょ。最近俺ら先帰らして自主練した後イチャついとるやん。」

女の子の話になると一風変わった瀬戸を見ることができて面白いが、今回はそうも言ってられなかった。

確かに部活終わりは一緒に帰るのが日課になっていた。だけど彼らの発言は正答ではない。

「彼女じゃない。まだ、、、。」

「うわ、まだ、なんか言っちゃってー。ついに寡黙な快音にも春が来ちゃったねー。」

「いや、、」

何も言い返せなかった。

「ようこそ、こっちの世界へ。」

瀬戸の一言でなんか張りつめていたのが気が楽になった。

「おいおい、俺だけおいてきぼいり?」

なんてうっちーが言っているが、あまり気にしていないのはバレバレだった。

「いいから。帰りますよ。」

瀬戸とうっちーはそれ以上深堀してこなかった。気を使ってくれたのだろう。


片付けながら、制汗剤で体をふく。夏はどれだけ汗を拭いても止まらない。まだこの鼻に刺さるような香りは慣れない。でもタオルでふくだけではだめなことぐらいわかっていた。この時間に来る通知にもまだ慣れていない。


「そうそう、家族旅行と部活の合宿で忙しいんだよね。」

自転車をこいでいると髪が後ろになびいて安藤さんの輪郭がはっきり見える。

「じゃあ、次会えるのは八月末だね。」

そう答えると安藤さんは目を細めて遠くを見る。


家に帰って夕ご飯を食べ終えたあとお母さんが片付けてくれたテーブルで勉強を始める。台所ではお父さんが食器を拭いている。兄弟がいないから家では何にも気を遣わずに勉強できる。

「勉強しかしてないけどまたテストでもあるんか。」

「まあね、今週末模試だから。」

「そうか、忙しくて大変だな。」

「いや、お父さんに比べたら、大したことないよ。」

今日こそ帰りは早かったけど公務員のお父さんは朝早くて夜も遅い。だから、働いてすらもいない僕はほんとに大したことはしていない。

「でも、最近はサッカーも見てないじゃないか。」

確かにその通りだ。勉強が忙しいってのもある。でもそれよりも優先したいことができてしまった。

「まぁ、忙しいからね。」

結局そんな言葉が出てしまう。親は大切にしろと祖母に教わってから、それは意識していた。でも時々忘れてしまう。特に最近はそうだ。最近またしっかりやり始めた古文のワークブックを閉じる。

「おやすみなさい。模試終わったら一緒にサッカー見ようね。」

お父さんが笑ってくれたので言いづらかったけどいってよかったと思った。

自分の部屋に入る。ちょうど22時を回ったところだ。ドアがしっかりしまっているのを確認する。ベッドであおむけになる。テンポの良いラッパの音が途切れて、ふわふわした声が聞こえてくる。

「ごめん、ちょっと遅れた。」

「気にしないで、勉強してたんでしょ。」


5章:光に影はつきもの

夏休みは対して遊んでいたわけではないけどもう半分を過ぎていた。そんな感覚は全くなかった。昔テレビで大人は子供より毎日がルーティン化しているから時間が過ぎるのが早く感じると聞いたことがあった。確かにここんとこは部活と勉強の繰り返しだ。休憩がてら自分の部屋でクローゼットの扉を開ける。目には痛いほど色とりどりなユニフォームが並んでいた。私服という私服がなく思わず笑えてしまった。

親に言えば2パターンくらいは、買ってもらえるだろう。でもそんな急に言ったら色々問いただしてくるに違いない。ただ、制汗剤と違って自分で買ってきたら確実にばれる。時計を見るといつの間にか15分が経過していた。今日は両親がともに仕事でいつも以上にリビングはしんとしている。目をやった英語長文は一定の間隔で意味の分からない単語が出てくる。この時間に英語をやるのが悪いのだろうか。瞼が重く読んでいる英文の内容は頭の中で僕の作り話に書き換えられていく。ちょっと前まで勉強中に意識が飛ぶことなんてなかったのに。きっと読む英語のレベルが高すぎたのだろう。たぶん、そうに違いない、、。


「相手のキャプテンうまくね?」

「元ジュニアユースとかのレベルだよな。」

練習試合が終わり相手チームの会話が聞こえてくる。インハイでの結果の影響か珍しく私立高との練習試合をさせてもらえた。結果はボロボロだったけど僕自身は苦手なドリブルがうまくいった感じがしていた。印象的だったのは試合開始早々右サイドで相手をドリブルで置き去りにした。高校サッカーオタクの後輩によると僕が抜いた相手は中学時代、県選抜のメンバーだったらしい。弱小公立校でしかサッカーをしたことがない僕にとって今日はいつもと違う楽しさがあった。最近はプレーの調子が怖いくらい良かった。なぜか急に「サッカー選手が20~25歳という比較的若い年齢で結婚するのはメンタル的な安定が得られるから」というネット記事を思い出した。シューズケースを持ち瀬戸とうっちーを探す。

「帰ろう、勉強しないとさすがに」

振り向くとうっちーがだるそうな表情をしている。早めに交代を食らったせいか少し顔が引きつってる。

「瀬戸は?」

「あいつ、とっくに帰ったらしいよ。1年が言ってた。」

「塾あったのかな。」

「さぁ。もしかしたらデートじゃね。」

うらやましそうに言っているがたぶんそれは違う。確かに僕がキャプテンになったことで試合にはフルで出ることが多くなった。必然的に同じポジションの瀬戸は出番が減ってしまう。もしかしたら瀬戸は部活に不満を感じているのかもしれない。いつか言っていた気がする。

「無駄な時間ほど勉強をしていたい。」

部長になってからみんなが楽しくサッカーができるよう心掛けてきた。困っている一年がいれば積極的に声をかけにいったし、みんなが試合に出れるよう他高に自らの口で練習試合の交渉をしたことだってあった。最近つくづく思う自分だけで解決しすぎなのではないかと。だからここんとこあまり周りのことは考えないようにしている。でも瀬戸に関しては無視することができなかった。頭の中で「退部」という最悪な二文字が浮かんできた。

「快音、いいから帰るぞ。それとも君もデートかい。」


6章:最高潮

「お待たせ~。待った?」

「いや全然。」

「そのシャツ似合ってるね。」

「ありがとう。サッカークラブのやつなんだけど。ライフスタイルモデルみたいな。」

「へー。ほんとにサッカー大好きだね。」

「うん、好き。」

もちろんサッカーが好きという意味だ。だけどそう答えた瞬間、安藤さんの顔が少し赤くなったのが分かった。会うのは久しぶりだけどほぼ毎晩電話をしていたから会話にぎこちなさはなかった。

今日は港の近くにある水族館に行こうと誘われていた。最近リニューアルしたらしく、お互い行くのは初めてだった。


電車から降りると塩のにおいがした。今まで感じたことがない、心地よい感覚だった。駅から結構距離があったはずなのに目の前に青い建物が見えてきた。安藤さんの話はどれだけ聞いていても飽きない。やっぱり声がいいからだろうか。ふわふわしているけど耳に残る、そんな感覚。

水族館に入ると大きな水槽が目に入ってくる。小学生のときに一回来たことはあったけどこんなに大きな水槽はなかった。市が絡んでたらしいから相当おおきなリニューアルだったのかもしれない。

「ねえねえ、あれおいしそうだよ。」

「何言ってんの、水族館で言うことじゃないよ。」

安藤さんの黒い瞳ははイワシの大群を追っている。魚料理が好きらしい。先週電話で話していた。

水族館も終盤になったところだった。

「かわいいね。」

「え?」

いつもよりワントーン上の安藤さんの声が聞こえた。驚いた表情をしていたが、僕の指さした方向に顔を向けると

「あ、クマノミね。」

残念そうな声が聞こえた。僕の中にあった霧が完全に晴れた。日に日に薄くなっていたものの、この瞬間完全に消え去った。


ちょっと早かったけど暗くなる前に海辺に行きたかったから安藤さんの要望通り海鮮丼を食べに行った。有名なお店だったからすごくおいしかった、、、はず。あまり味はわからなかった。魚好きの安藤さんが「こんなの初めて。」と言っていたのだからきっと格別においしかったのだろう。今日にいたるまで安藤さんのことはいろいろ聞いていた。魚が好きということ、木本さんとはすごく仲がいいけど実はそれ以外はあまり友達がいないということ、マネージャーというものに興味があったから適当に陸上部にしただけで今考えればサッカーでもよかったということ、そして木本さん以外に話せる相手ができて高校生活が一気に楽しくなったということ。頭の中でこれまでの会話を再生させる。僕の心はもう固まっていた。


夏とはいえ、夕方の砂浜はそこまで熱くなかった。波の音、夕日、くっつきそうなそうなくらいに近くにいるきれいにまとまったボブヘアの女の子。すべてが最高だった。

「楽しかったね。」

「うん。ほんとに全部私の行きたいところでごめんね。」

「気にしないで。」

誘いもプランも全部、安藤さんが考えてくれたものだった。だからこそこの言葉くらいは僕が言いたかった。

「安藤さん?」

「ん?」

「僕と付き合ってほしい。」

一瞬下を向いたから怖くなってしまった。でもやっぱりそんな感情は必要なかった。

「もちろん。これからよろしくね。」

風になびいた髪と黒い瞳が愛おしくてたまらなかった。


帰り、駅までの道のりの中で僕の手には安藤さんの手が握られていた。今まで感じたことのない満足感と言葉では言い表せない幸せがあった。ただ同時に掴んではいけない何かをつかんでしまったように感じた。ほんのかすかに。


7章:Isoiate

「ほんとに大丈夫?珍しいよ、夏に熱出すなんて。」

「まぁ、やっと良くなってきたけど。」

心配そうな声だがそのふわふわさには何か薬のような感じもあった。

ベッドのわきに置いてあるデジタル時計は9月4日を示していた。本来なら授業が終わり、瀬戸やうっちーをパスをしている時間だ。

「勉強やりすぎたんじゃないの?一日8時間とか。」

「10時間やってたよ。」

思わず咳が出そうになる。さくらとのデートの帰りスマホには模試の結果が届いていた。珍しく国語の偏差値が65を超えていた。判定に関してはB判定。申し分のない結果だった。翌日から勉強のモチベは高く休み明けの実テで学年1位を取る気だった。けど、結果はテストさえ受けられなかった。テストを欠席したのは初めてだった。

「きっと気が付いてはないだけで体が無理してるんだよ。」

熱が出たのには正直、思い当たる節はあった。あの日以降夜の電話は日に日に時間がくなっていった。さくら曰く、陸上部は夏休み最後の5日間はオフだったらしく昼間に好きなだけ寝れると言っていた。だけど、僕は違った。部活は夕方にあるとは言えど、その分朝勉強したかったから眠い目を毎朝こすっていた。夏休み最後の部活が終わった後、脳みそが強く縛られているような感覚があった。「部活があるから電話は今度にしよう。」その一言さえ言えばきっとあっちも「いいよ。」言ってくれただろう。でも誘われた後毎回出てきたのは「うん、好きなタイミングでかけて。」だった。さくらが喜んでくれれば自分の体なんてどうでもよかった。そんなものはさくらじゃなくて僕が自分で解決すればいいことだ。


「珍しいな。橘が休むなんて。」

「夏バテだったかもしれません。」

いつもは僕が基本的に練習メニューを考えていた。だけど僕がいない間は顧問が仕切ってくださったらしい。もともと「自分は昭和の人間だから。」と半ば投げやりに僕に練習を任せてた。まだ復帰していない僕は顧問の隣で仲間たちの練習を見つめる。ゲーム主体の僕とは違って、基礎的な練習が多い気がする。

サッカーは試合が一番と言っていた瀬戸に目を向ける。うっちーから飛んできたロングパスを受けるがうまくトラップできていなかった。返しのパスも雑でうっちーが走らされている。

「瀬戸!パスする相手の方向見ろよ。」

野太い声が頭を通り過ぎる。言うなよ、そんなこと。瀬戸だってそれくらい理解しているはず。瀬戸は手を挙げて応答していたが僕は気が付いていた。ボールをけるたびに時計を確認しているのを。


「橘だけ話があるから残れ。」

瀬戸に声をかけようとしたがかけられなかった。ほんのかすかに避けられているように感じた。顧問のところに行くその数歩、何人かににらまれた気がした。

「橘、お前、そろそろ復帰できるよな。」

瀬戸にかけた言葉とは裏腹に顧問の声はトーンが高い。周りの状況と顧問のギャップについていけなかった。

「はい、明日には。」

「ならよかった。」

周りの視線がなくなっていた。取り残されたような感覚。

「橘、市選抜の候補になったから。9月はそっちに集中しろ。」

市選抜。主に公立校から選ばれるサッカー強化合宿だ。選考を含めた練習を半月行い、選ばれたメンバーは県の強豪私立や運が良ければJユースと試合ができる。サッカーが好きな僕にとって夢のような舞台だった。

「じゃあ部活は?」

「お前は選抜優先だ。練習はおれが見るから安心しろ。」

今思えば副部長に頼めばよかった。でも選抜という言葉に隠れてしまった。

校舎付近のベンチで選抜についてのプリントに目を通す。基本的に練習は火、水、木曜。週末のどちらかにも入るらしい。スマホで次の模試の日程を確認する。選抜メンバー選考会の翌日だった。

「なんだこれ。」


8章

「選抜?すごーい。」

最初に伝えたのは親でもなく電話越しのさくらだった。

「なかなか、会えなくなるね。」

「確かに。」

「そんなに忙しいなら、わたしかいとくんの専属マネージャーになりたい。」

選抜の練習は長いし帰りが遅くなってしまう。スピード感も速いしコーチも厳しい。でも帰ったらこの声が聴ける。疲れが抜けた気になっていた。模試が終わったあと次の週末は二人とも暇だった。一緒に勉強したいというからどちらかの家に行くことになった。

「いや、まだはやいか。」

「なんて言った?」

「何でもない。」

少し大人な考えをしているのは、ばれたくなかった。少ししたら気持ちよさそうな吐息が聞こえてきた。電話はつなげといたままにしといてほしいらしい。時計は午前1時を過ぎていた。最近は勉強が計画的に進んでおらず、たまっている。


部活には全然いけてなかった。選抜チームのコーチが練習日以外も練習場を開放してくれていたからそっちで練習してしまうことが多かった。なんせ芝のグラウンドでサッカーができるから。でも今日はコーチがいないため久しぶりに部活に参加する。

「うっちー、瀬戸は?」

「あいつ?わかんね。今日も休むんじゃね?」

「え?休んでたの?」

「あー。最近はな。」

サッカースパイクのまま音を立てて駐輪場に駆け出す。周りは何も見えていなかった。


「瀬戸!何で帰るんだよ。」

瀬戸はもう自転車を引いていた。

「え?快音やん。久しぶり。」

「いや、部活は?」

無意識に口調が強くなる。

「お前のせいだよ。」

「え?」

瀬戸から「お前」なんて表現を聞いたのは初めてだ。

「お前がいいプレーをするから顧問が調子乗って練習厳しくなってんだろ。」

槍のようなことばが続けて刺さる。

「どうせ、選抜からお前が帰ってきたら俺は紅白戦も出れないんだ。」

「戻ってきたら、メニューは僕が組む。」

「わかってねーな。どうせ部長のお前は紅白戦自分をAチームにするんだろ。当たり前のように俺をBチームにするんだろ。」

「でも、瀬戸Bの方が楽しいとか言ってたよな。」

「黙れよ。お前にはわからないくらいのものを俺は背負ってるんだよ。」

これに関しては何も言い返せなかった。

「のんきにサッカーやってられる時期じゃねえんだよ。」

完全に負けた。

「もう、やめるのか。」

その言葉は予想外だったらしい。すこし瀬戸の声が落ち着く。

「いや、、。悪い言い過ぎたわ。お前はお前で頑張ってくれ。」

そう言うと消えていった。最後の言葉のおかげで冷静になれた。瀬戸はやっぱり瀬戸だった。


人間関係は絶対にうまくいくとは限らない。価値観はずれるものだ。ただ、そういうことが同時ところで起こると急に物事がうまく運ばなくなる。


部活終わりスマホには一件の通知が来ていた。さくらからだ。暗くなった心に光が差したかのように思えた。


その日の帰りは一人だった。


9章:快い音はどこへ

「はぁはぁ。」

死に物狂いで走る。あと少し、もう少し。あの建物を登れば、、、。振り返ると信じられないほどの大きさの波が逃げ遅れた子犬、車、街路樹すべてを飲み込んでいる。もう走れない。突然足がもつれる。地面にひびが入った。

「誰か助けて。」

声にならない叫びが胸の中でループする。突然視界が闇に覆われた。体中に苦痛が走る。息ができない。「まだ死ねない、、、。」


どんどん下に沈んでいくのが分かった。遠くに声が聞こえる。救助隊?いや、聞き覚えのある声だ。

「なんであんな下手な奴が選抜候補なんだよ。」

「最近成績が良くないです。はっきり言います。このままだと落ちます。」

「橘。サッカー部の命運はお前にかかってるんだ。」

やめて。やめてくれ。体中の苦痛が増す。

「快音、いつまでサッカーやるんだ。もうやめろよ。」

瀬戸?助けて。違う、僕は。サッカーがしたい。ただそれだけ。

「前言ったろ?もうそんな時期じゃないって。」

さわやかさの中に情熱を感じる友の声が遠のいていく。待って。助けて。

「かいとくん?大丈夫?ほら。」

ふわふわな声ときれいな掌が目の前に現れる。

「さくら?助けて。」

「大丈夫ここにるよ。」

藁にもすがる思いで手をつかむ。

「だめだ!その手をにぎっちゃだめ!」

だれだ?手を握った瞬間、右ひざに衝撃が走る。まるでひざ下を引き裂かれたような痛みが走る。

「やめろよ。」

「なんだ、バカなんだな意外と。」

「おれに相談してなんのつもり?」

「わたし、もう無理なの。」

「え?この時期にE判定?終わってるな。」

「お前はおれの息子じゃない。」


息ができない。膝が、、、。

「お前、何のために生きてんの?」

「もういっそ、こんな人生辞めちゃおうかな。」


「はぁ、はぁ、はぁ。」

ここは?ゆっくりと片目をあける。暗闇のなかに見覚えのあるフローリングが広がる。自分の部屋だ。起き上がると体の節々が痛む。特に右膝が痛い。電気をつけると、どす黒い青に染まっていた。ベッドから落ちて膝をぶつけたのだろう。姿鏡に映った人は知らない人だった。自分に限りなく似た自分じゃない誰か。

肌にへばりついたTシャツを脱ぐ。一番近くにあったタオルを手に取る。一式着替えたところでベッドで天井を見つめた。電気は消せなかった。時計を見ると午前2時を過ぎていた。それをみたら案外瞼が重くなってきた。なぜかある記憶が思い浮かぶ


家族連れやカップルでショッピングモールはにぎわっていた。その中に

左手にはおばあちゃんの右手が右手にはおじいちゃんの左手が握られていた。小学校入学と同時にサッカー少年団に入団することになった男の子は目を輝かせながら、サッカーボールの並んだ棚を見上げている。

「僕、あれがいい!」

指をさしたのはきれいな真っ白なボールだった。

「これがいいんじゃないか。」

おじいちゃんが手に取ったのは蛍光色の強い派手な黄色のボールだった。

「え?こっちのほうがいいかな?」

男の子は自信なさげにおじいちゃんに尋ねる。

「自分が好きなものを選べばいいのよ。」

おばあちゃんがやさしい声で語りかけてくれる。ふわふわとした声だけど包み込んでくれるような。暖かい声だった。

「うーん。」

男の子は小難しそうな顔をしているが、どこかそんな状況を楽しんで知るような感じだ。

何分立ったのだろう。やっと男のが一つのボールを抱えて二人のもとに駆け寄ってきた。

「僕、これにする!」

興奮気味な声に、おばあちゃんとおじいちゃんがに振り向く。

「それにするのね?」

「うん!」

「じゃ、買いに行こうか。」

男の子はまるで自分の子どもかのようにボールを優しく抱えていた。白地に黄色のラインが入ったボールだった。

帰りの車でボールを抱えた男の子におばあちゃんが語りかける。

「あなたのお父さんをみているようだわ。お父さんもサッカーが好きでね。試合をよく見に行ったよ。」

「パパ?上手だった?」

「いつも、ドリブルで突っ込む子だったわね。周りがいつも困ってたよ。」

「パパそうだったんだ。僕はみんな笑ってくれるようなのをしたい!」

「じゃあ、約束してくれる?」

「うん!約束する!みーんな僕が笑顔にする!」


10章:凶器となるもの

「かいと!朝だよ!」

「え?」

「電気付けっぱなしで寝て~。何してんのよ。」

お母さんの珍しい甲高い声はキンキンと鼓膜に刺さった。

「ごめん、急ぐよ。」


お昼前なのにまだ倦怠感が抜けない。

「では単語テストからやりますか。」

まじか。てっきり忘れてた。後ろの森井に尋ねる。

「先生言ってたっけ?」

「うん、あれもしかしてノー勉?あの優等生な橘快音くんがー?」

「静かにしなさい。」

先生のそのひとこで森井は引っ込んだ。目の前に来た単語に目を向ける。やっぱりだ。全然わからない。

初めてだ。半分も空白でテストを回収されたのは。


右ひざが痛む。昨日のやつは割とひどかったのかもしれない。古典の授業は大半が首を折っている。授業ノートに書かれた日付が目に入る。明日か。選抜の最終選考。先生が板書を再開したので前を向く。黒板の隣の予定表には赤い字で模試の告知がされていた。明後日だ。頭が締め付けられるような気がした。

古典の先生がいつものように諭すように静かに言った。

「つまり、兼好法師さんはこの中では「ずっと一緒にいることが愛ではない。」と言っていますね。いやー、素晴らしい。」

先生、僕ぐらいしか起きてないっすよ。てか「ずっと一緒にいることが愛ではない。」?そんなことあるだろうか。


帰りのホームルームを終え、目的の場所へ急ぐ。階段を下りると3年生の会話が耳に入ってくる。

「ね、もう半年もないんだよ。やばい。」

「去年の今頃からやっとけばねー。」

僕は入学当初からやってる。絶対こんな姿にはならない。そう思いながら、階段を駆け下りる。


駐輪場に着くとさくらの姿が見えた。

「お待たせ。」

「かいとくん、ごめん。」

震えたようなでもなにか鋭い声が耳を刺す。

「ごめんってなに?」

「無理なの。わたし、限界!」

一昨日電話で話した声はなかった。槍のようだった。

「無理って何が?」

「かいとくん、いつも私任せじゃん!かいとくん気遣ってくれてるのかもしれないけど、デートプランも、きいても行きたいところ行けばって。」

「いや、それは。」

「かいとくんがすっごく優しい人は知ってる。そこに惚れたんだもん。でも」

「さくら、、、。」

「かいとくんに意思はないの?」

さくらは泣いてるのかと思ったが違った。僕をにらんでいた。

「電話もデートも誘ってくれないし。私、毎日不安だったの!ほんとにわたしのこと好きなのかなって。」

「もちろん好き、、。」

周りの視線が気になり声がかすれる。

「もう、遅いよ。」

1年生だろうか。陽気な声が聞こえてくる。

「わたし、かいとくんのことが好き。でも付いて行っていい人じゃないって思ったの。ごめんね。急にこんなこと言って。私最低だよね。」

「最低なんかじゃない。」

「、、、。」

「僕と話しているのつらいよね。もう行くよ。」

「そういうところ!自分はどうなの?私じゃなくてかいとくん自身は?」

「僕は、、ずっと一緒にいたい、、、。」

「そんなの愛じゃないよ!ごめん、私もわからないの、行くね。さよなら。」

冷たい風が顔を刺す。


「ピロン!」

誰だ?

(ごめん、やっぱり部活やめるわ。)


この日、僕は初めの彼女と親友を同時に失った。

遠くで雷がうなりをあげていた。

快音くんは何もかも自分で解決しようとし、ついに物語の最後ではいっぱいいっぱいになってしまいました。ここから彼は周りの本格的に受験にシフトする周りの雰囲気についていけるのでしょうか。そして本当の彼は何がしたいんでしょうか。続編はそんな彼が何もかも失い、自分さえも分からなくなってしまった中で今までとは違った歩みを始めることになります。

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