表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第六章 氷原
99/143

第九十七話 危機

「やばい!」


突然の叫びに、隣のヴァルゼリナがびくりと肩を跳ねさせた。


「な、なんじゃ、いきなり大声を出して……」


だが、陸虚はヴァルゼリナの言葉を無視して、グレイシアの方へと向き直る。


「グレイシアさん! 急いでアイスさんが自らを封印している部屋へ案内してください! 急がないと、大変なことになります!」


その切迫した声に、グレイシアの表情が一気に引き締まった。


「……わかりました。こちらです!」


彼女はすぐに方向を変え、氷の宮の奥へと駆け出した。


陸虚もすぐさま後を追い、ヴァルゼリナも「仕方ないのう」と言いながら、つられるようにその後に続くのだった。


封印の扉の前――。


どれだけ呼びかけても、中からの応答はなかった。


「……どうなっているのですか、一体……!」


グレイシアは焦燥の色を隠せず、扉に手を当てて震える声を漏らした。


陸虚は険しい表情で扉を見つめながら、重い口を開いた。


「……アイス様、もしかすると“天外の邪魔”――いや、ここの言葉で言うなら“邪神”に取り憑かれているのかもしれません」


「――っ!」


グレイシアはその言葉を聞いた瞬間、ガクリと膝から崩れ落ちた。


「うそ……そんな……!」


「前代の魔法使いギルド会長……皆で命を賭してようやく打ち倒した、あの“存在”の……」


その場の空気が、一気に凍りつくような重苦しさに包まれた。


陸虚は深く息を吸い込み、皆に向き直って言った。


「……まだ、間に合います」


「え?」


グレイシアが顔を上げると、陸虚は真剣な眼差しで続けた。


「アイス様は、混乱しているとはいえ、まだ理性の一線を保っている。そうでなければ、自らを封印するなんてことはできません」


「……!」


「でも、今のままではいずれ“やつ”に完全に乗っ取られてしまう……。時間はあまりありません。僕たちで封印を破って、中に入る必要があります。アイス様の“本心”を呼び覚ますために!」


その言葉に、グレイシアの目に再び光が戻った。


「行くぞ――ッ!!」


陸虚が雷霆の如く叫ぶと、彼の周囲に金色の雷光が渦巻き始めた。空気が震え、大気が悲鳴を上げる中――


「純陽雷龍、放てぇぇっ!!」


天を貫くような雷の咆哮と共に、雷龍が轟音を上げて封印へと突っ込んでいく!


「あなた……お願い、目を覚まして!」


グレイシアも涙を浮かべながら、全力の〈氷龍のブレス〉を解き放った。続いてヴァルゼリナも、息を吸い込み、唸るように叫ぶ。


「妾の炎、受けてみるがよい!」


紅蓮の火柱が轟き、氷と雷と炎――三つの力が一点に収束する!


だが――


「……っ!」


爆音の後、封印の氷壁は――微動だにしなかった。


二名6級と一名5級奥義魔導士の攻撃した、封印は全然破れなっかた


「……そんな、嘘……でしょ……?」


グレイシアの瞳から希望の光が消えた。


「どうして……開かないの……アイス……!」


彼女は両腕を振り上げ、絶望の叫びと共に封印の氷を引っかき、叩き、必死に爪を突き立てた。


「お願い……お願い……戻ってきてよ、あなたぁぁっ!!」


封印の前に響くのは、凍てつく沈黙と――一人の妻の、届かぬ祈りだけだった。


(……やはり、7級の封印か。僕たちの力じゃ、破れない……)


陸虚は歯を食いしばりながら封印を睨みつける。


陰陽(いんよう)混沌斬(こんとんぜん)〉なら、確かに突破できる。でも完全開放すると必要な霊力は――到底、持たない。


(……どうする? どうすれば……!)


そのとき、彼の視線が自然と二体の巨竜――グレイシアとヴァルゼリナに向いた。


次の瞬間、陸虚は決意と共に声を張り上げた。


「お二人とも――僕に向かってブレスを放ってください!」


「はぁ!?」


ヴァルゼリナが目を見開き、思わず叫んだ。


「そ、それは……正気か、そなた!? まだ6級にも満たぬ身で、竜のブレスを受けるなど、命を捨てにいくようなものじゃぞ!」


「分かってる。でも、今はもう手段を選んでる暇はないんだ!」


陸虚の目に、一切の迷いはなかった。


一瞬の沈黙の後、グレイシアとヴァルゼリナは静かに見つめ合い、重く頷いた。


「……もしもの時は、妾が骨を拾ってやる」


「私も……できる限り、力を抑えるわ」


陸虚は深く息を吸い、地に膝をつき、両腕を広げた。


「――来いッ!!」


そして、炎と氷の竜が、同時にその咆哮を解き放った――!!


陸虚の全身を、凍てつく冷気と灼熱の炎が同時に飲み込んだ。


それはまさに、生と死の狭間――氷と火、陰と陽、相反する力が彼の体内でせめぎ合う。


(……ぐっ、やっぱり……まだ、足りないか……!)


体が、焼けるような痛みと凍りつくような苦痛に引き裂かれていく。


呼吸が、意識が、ぼやけていく――。


陸虚の瞳から、焦点が失われはじめたその時。


「――にゃん!」


小さな鳴き声と共に、柔らかな毛並みが彼の足元に触れた。


小花が、立っていた。いや――すでに大鼎の姿へと変化し、彼の背後に佇んでいた。


「小花……!」


小さな小花、ただ静かに霊力の流れを受け止め、整え、陸虚の体へと送り込んでいく。


――ゴウンッ……!


天地が震えるような音が、大鼎から響き渡る。


混乱していた陰陽の力が、秩序を取り戻し始める。


陸虚の瞳に再び光が戻り、かすかに笑った。


「……ありがとう、小花。今度こそ――行くぞ!」


彼は天へと両手を掲げ、全身の霊力を刃と化す。


陰と陽、炎と氷、混沌と秩序――すべてが、ただ一つの意志へと昇華される。


「――陰陽・混沌斬!!」


ドォオォォォン!!!


解き放たれた光は、世界そのものを震わせた。


封印の氷壁に向けて、漆黒と純白が交差する一撃が奔る――!


――ズンッ!


世界の“法”すらも一瞬揺らぎ、


七級の結界に、ついに――亀裂が入った!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ