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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第五章 呪われた地と学院試合
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第八十五話 小花(シォウファ)

――静寂。


陸虚は、腕の中で丸くなった三毛猫をじっと見つめていた。


次の瞬間――


「ぷっ……くく……あははははははっ!!」


突如、腹を抱えて大笑いし始めた。


「……なるほど……なるほど! 猫かよッ! ははははっ!!」


その様子を見たカミロは青ざめた。


「やばい……壊れたぞ……完全に壊れた……」


そして隣のアモロンを睨みながら言った。


「お前のせいだ、アモロン! 順番通りに素材を投入してたらちゃんと完成してたのに、お前が『遠古霊液(えんこうれいえき)を加えよう』とか余計なことを言うからっ!」


アモロンも負けじと反論した。


「ちょっと待て! 理論上はあの液体で霊性が増すはずだったんだ!……誰が猫になるなんて予想できるかよ!」


「だから言ったんだよな!? “あれはまだ安定してない”って!」


「文句はあとにしてくれ! 素材はもうないんだぞ! 次に揃えるのにどれだけかかると思ってる!」


「ほらみろ! あーもう、ほんとに最悪だ……」


ふたりが取っ組み合い寸前で言い合っている中、メリーがピシャリと声を上げた。


「……いい加減にしなさい、あなたたち二人とも!」


ピタリと口を閉じるカミロとアモロン。


「見なさいよ、主人のオグドンは微動だにせず落ち着いているじゃない。あの人を少しは見習いなさいな」


そう言いながら、メリーはゆっくりとオグドンの肩に手を置いた。


「オグドン? 大丈夫よ、まだ何も――」


彼女の手が触れた瞬間。


「……っ!? え? えええええええっ!? 目が、白目っ!? 嘘でしょ!? オグドン!?」


メリーの悲鳴が響いた。


「オグドンが……気絶してる!? いつからよ!?」


「ちょ、ちょっと待って……っ! 治癒魔法を……!」


メリーは急いで手を構え、水属性の癒しの魔力を流し込み始めた。


「オグドン、しっかりしてっ! アンタが倒れたら、ホントにこの場が崩壊するからぁぁぁ!!」


一方、陸虚は――猫を抱いたまま、まだ笑いを堪えきれず肩を震わせていた。


さんざん笑い転げたあと、陸虚はようやく涙を拭いながら立ち上がった。


「……アモロン校長。さっき“天才”って言いましたけど、あれ――訂正させてください」


アモロンは苦笑いしながら、うつむいた。


「いや、もうそれ以上はいいよ……あれは失敗だ。何でも言ってくれ、補償は惜しまない」


だが、陸虚は真顔で続けた。


「違うんですよ。アモロン校長、僕は本気で言ってます。あなたは……“天才中の天才”です!」


「……は?」


「本来なら法宝の中に宿るはずの器霊を、外形そのものと融合させて、自由に動ける形に進化させた――

これって、どれだけの奇跡か分かってます!? しかも見た目は猫! こんなの前代未聞ですよ!」


アモロン:「……お、お世辞にしか聞こえん……」


「いやいや、マジで褒めてますって!」


陸虚は腕の中の三毛猫に微笑みかけた。


「さぁ、お前にも名前が必要だな。うーん……よし、今日からお前は“小花(シォウファ)”だ!」


「にゃあっ!」


三毛猫――小花は、うれしそうに尻尾を立てて返事をした。


「気に入ったみたいだな。じゃあ、小花――みんなに見せてやれよ。お前の……“本当の姿”を」


言うなり、小花はふわりと宙に浮かび、口を大きく開けて“フーッ”と一息吐き出した。


すると、そこから放たれたのは――まるで天地を創造するような、濃密な造化の気。


空間が一瞬ゆがみ、光が歪み、そして――


「……っ!? あ、あれが……!」


小花の身体がぐにゃりと溶けるように変形し、次の瞬間――


その場に現れたのは、七色に輝く巨大な法宝。


全体から霧のような神気が立ち上り、あたりの魔力が吸い寄せられるように震える。


小花が七彩の神鼎へと変化したその瞬間、空間が震えた。

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