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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第五章 呪われた地と学院試合
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第八十三話 集める理由

試合終了後、重たい空気の中でメリーが静かに口を開いた。


「……オレリス、まさか奥義魔導士を三人も揃えてくるなんて思わなかったわ。その中の一人は……すでに“法則”の領域に触れかけている。時間の問題ね。いずれ私たちと肩を並べる“魔導師”になるでしょう」


その言葉に、アモロンは苦々しい顔で黙り込んだ。


唇をぎゅっと結び、肩をピクリと震わせている。


どう見ても、完全に拗ねている。


「なぁ、アモロン……」


カミロが笑いながら手を上げた。


「俺たちも別に、あんたをハメたかったわけじゃないんだよ。でも、ああでもしないと、あんた“機械の心臓”なんて絶対出さなかっただろ?今回のことは……その、必要な犠牲というか……うん、実は理由があるんだ」


アモロンが睨み返す。


「理由?」


カミロは大きく頷いた。


「俺とオグドンは今、あの方を救うために、伝説の鼎を作るんだ。」


アモロンは目を細めたまま黙っていたが、しばらくしてため息をつき、ぼそっと呟いた。


「……伝説の鼎?…….」


カミロは鼎の図面を渡した


「……なんだこれは?」


アモロンが眉をひそめながら手に取った図面を、一瞥した瞬間――


その目の奥がギラリと光り、まるで吸い込まれるようにページをめくっていく。


周囲の空気が変わった。


そして数分後、アモロンは図面から顔を上げ、震える声で呟いた。


「……誰が、これを設計したんだ? ……こんなの、ありえない……!」


「すごいだろう?」


とカミロがにやにやしながら言った。


「まさか、ここまで食いつくとは。オグドン、もうバラしちゃっていいか?」


「うむ。実はな……この図面、うちの先生、陸虚の設計図なんだ」


「……あの雷の若造か?」


アモロンは目を丸くした。


「まさか、こんな才能まで……」


「で、どうだ。いけそうか?」


とオグドンが問うと、


アモロンは図面を胸に抱きしめながら、真剣な顔で答えた。


「――いける。これは……確かに伝説の鼎だ。だが……材料が一つ、足りない。“海の涙”が必要だな」


その言葉に、オグドンとカミロが同時にくるりと首を回し、無言でじっと見つめたのは――


そう、隣の席に優雅に座っていたメリーだった。


メリーは、ゆっくりと立ち上がりながらにっこりと微笑んだ。


「……あらあら、やっぱりこうなると思ってたわ。“海の涙”なら、私のところにしかないものね? ……まったく、話がうまくできすぎてるわね」


メリーは微笑を浮かべながら、足を組み直して言った。


「“海の涙”なら、私のところにあるわよ? でも――」


その唇の端が、意味深に上がる。


「……あなたたち、何を持って“交換”してくれるのかしら?」


オグドンは少し考え込んだ後、ふっと目を見開いて言った。


「……もしあのかなえが完成すれば、陸先生が“若さと美貌を保つ霊薬”を錬成できるようになる。どうだい、メリー?」


「……っ!」


メリーの眉がぴくりと動く。心が大きく揺れたのは明らかだった。


「その薬……本当に効くの?」


「保証する。」


メリーはしばし無言になったが、やがてふっと笑みを深めて言った。


「じゃあ……“二枚”。いただけるかしら?」


「もちろん」


オグドンが頷いた瞬間、隣でじっと黙っていたアモロンが口を開きかけて――


だが、すぐに口を閉じた。何も言えなかった。


自分が負けた立場で、さらに“霊薬”をねだる資格など……無い。


そんなアモロンを横目で見つつ、オグドンは急に立ち上がり、三人に深く頭を下げた。


「……お願いだ。この鼎の錬成には、三人の力が必要なんだ。これは、私にとって何よりも大切なことなんだ――この鼎がなければ……私は、ティリオンを救えない」


静まり返った空気の中、メリーが口を開いた。


「……言ってくれるじゃない。まったく……あなたって人は」


カミロも、口元に笑みを浮かべながら言った。


「言うなよ、そんな湿っぽいこと。……何年の付き合いだと思ってる」


アモロンもようやく顔を上げ、小さくため息をついた。


「……わかった。やるよ。だが、その薬……俺の分も、後で頼むぞ、もちろん金を払うから」

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