第八十話 開幕
すべての流れが決まり、ついに試合が開幕した。
最初に行われたのは――学生部門の対抗戦。
前回優勝したガルドは大魔法使い昇進すでに卒業していることもあり、今回の優勝はほぼ予想通りの結果となった。
優勝者――メイヴレーナ融合魔法学院所属、人魚族のプリンセス、3級の3核魔法使いリュミエール。
観客の歓声の中、トロフィーを手にした彼女は、表情を崩さぬまま観覧席を見上げた。
そこには、満足げに笑うガルドの姿。
リュミエールはふっと小さくため息をつく。
(……やっぱり、あなたがいないと、つまらないわね、大魔法使いか、私も頑張らないと…..)
かつての好敵手がいない勝利――それはどこか物足りなさを残すものだった。
そして、主催校であるオレリス魔法学院の校長オグドンが壇上に立ち、優勝者リュミエールに自らの手でトロフィーを授与する。
「おめでとう、リュミエール殿。見事な戦いだった」
リュミエールは丁寧に一礼し、礼儀正しくトロフィーを受け取った。
観客席からは再び大きな拍手が巻き起こる。
だが、彼女の心は静かだった。
(ガルド、あなたがいない試合に、どんな意味があるの……?)
その思いを胸に、リュミエールはトロフィーを胸に抱いたまま、静かに壇上を降りた――。
そして、いよいよ観客たちが最も期待していた――教師部門の試合が始まった。
四大魔法学院、それぞれが誇る最強の教師三名を選出。
公平性を保つため、四人の大魔導士校長たちは試合中に一切の感知を封じ、自らの力で気配を探ることを禁じた。
試合形式はまず「明らかに最強」と目される一名を各校がバンされ(出場禁止)し、残った八名で二組に分かれての第一組と第二組でポイント制対決。
各組四人で戦い、順位に応じてポイントが与えられる――
一位:5点
二位:4点
三位:2点
四位:1点
オレリス魔法学院では予想通り、毎回必ずバンされるシフ教頭が今回も除外された。
控室では、出場予定の陸虚がリブィ先生に向かって話しかける。
「僕のほうは――絶対に一位を取ってみせます。リブィ先生のほうは、二位さえ取ってくれれば、仮に相手校も一位と二位を取ったとしても並びのポイントで同率優勝、勝負は互角になります。……いけますか?」
リブィ先生はにやりと笑った。
「おうとも。こっちは心配いらんよ。ワシは第一組で毎回下位だけど、シフが第一組に出番の時、ワシは第二組で二位じゃ!任せとけ!」
「……大丈夫ですか…」
出場名簿を眺めながら、アモロンが鼻を鳴らした。
「ふん……あの若い大魔法使いの先生に、ずいぶん自信があるようだな? いきなり第一組に入れるとは……雷系魔法か。まあ、他の連中なら怯むかもしれんが、うちの教師には通じんぞ?」
隣でオグドンは、相変わらず柔和な笑みを浮かべながら言葉を返した。
「さあ、どうでしょう? 戦ってみなければ、勝敗はわかりませんよ。」
「……ふん。」
アモロンは腕を組みながらそっぽを向いたが、その口元はわずかに引き締まっていた。




